29、グリート団を追え
この分だと森で野宿するはずだ。岩肌の山が終わり、草が生えた森に入った。辺りが暗くなった。馬車はランタンを灯した。
探索石を見ると、街道脇に大きな丸い点が見える。人数が17人と出ている。人数が多いと大きな丸が一つで表示される。そこから離れていく3人の丸がある。街道には3人と書かれていた。3人と3人が合流して6人になり、街道を北上した。何だこれは? 6人はスピードを出して遠ざかると西に向かう街道に入って行き、丸が消えた。なんだか変だな。
「その辺で止めてくれ」
「分かった」
馬車が止まり、右を見ると馬車が通れるほどの脇道があった。
「脇道の先で、停泊しているのがそうだと思う。俺たちで親方を連れて行くから、ダッジとヤンは馬車で待っていてくれ」
「分かった。頼む」
俺が先行して進む。ランタンはタクトに持たせた。人数的にも多分間違いないだろう。苛立ったような大きな声がしてきた。騒がしいな。イグナシオの姿が見えてきた。驚かさないように俺は遠くから声をかけた。
「お~い」
「誰だ!」
「待て、そこを動くな!! その道に魔法地雷が埋まっている!」
「何だって!?」
団員たちとイグナシオが叫んだ。俺たちはぴたりと止まった。コズエが驚いた。
「この世界にも地雷があるのね!」
「そうだ。戦争していた相手国が開発したんだ。やっかいなことに踏まなくても、動線で爆発する。魔法石の魔力を使い切るからかなりの破壊力だ。ここ一帯が吹き飛んで、魔法石も砕け散る」
「!」(なんてやっかいなの!?)
よく観察すると、ユリスがいないぞ? 団がいるところはキャンプ地になっていて結構広い空間だ。どっかのキャラバンが作ったのだろう。荷馬車が五台と馬も八頭入っていた。火が焚かれ、夕食を済ませた後の様だった。奥にはテントが張ってあり、そこからレイナが出てきた。髪は軽く乱れている。イグナシオもシャツの前を留めていなかった。二人は一緒にいたんだろう。
「お前たち、魔法使いがいたよな。地雷を何とかしてくれ」
「その前に、俺たちはユリスに会いに来たんだ。バスタの町の復興グループのリーダー、バルジフさんが盗賊のモンスターの毒でやられたんだ。聖女でないと治せない。ユリスが見当たらないが、どうしてそうなったか説明してくれ」
「ユリスは誘拐された! なぜかユリスが一人で外に出ていたんだ」
「何だって!?」
俺たちはまた驚いた。イグナシオが説明した。
『きゃあ』
キャンプ地のすぐ外で、ユリスは捕まった。声を聞きつけて動こうとしたら、ユリスにナイフを突きつけて、誘拐犯が二人現れた。
『動くな。動くと地雷を投げつける。この女は連れて行く。追いかけなければお前たちは見逃す。どうする?』
もう一人が手に持っている地雷を見せた。隊を失うわけにはいかない。
『分かった。あきらめる』
『いい判断だ』
男は前に出て道に地雷を埋めた。
『おい!』
『ここを超えれば爆破する』
そう言うと、走り去った。
そうか、あの離れていく三人は、誘拐された時のものだったんだ! 一足遅かったか……。タクトが俺に聞く。
「どうする。シュナ」
「ユリスを追いかけよう」
俺は団を振り返って言った。
「そういえば、盗賊はピンピンしてたぞ」
「俺たちは、やっつけたと言ったが、全滅させたとは言ってない。
あの盗賊団がモンスターを持っていたなら、なんで俺たちには使わなかったんだ?」
イグナシオは返事をすると、指を顎に当てて疑問をつぶやいた。
なるほど。やっつけただと、町の人たちは全滅したと思うよな。追い払ったが、正解なんだ……。まったく、こいつらは。盗賊がモンスターを使わなかったのは、お前たちのほうが人数が多いからだ。貴重なアイテムを奪われる可能性があるからな。
「じゃあな」
「おい待て! 俺たちを見捨てるのか!?」
「——冗談だ。タクト解除できるか?」
「もちろんだ。学校で武器の解除は習うからね」
タクトはウィンクする。だからこそ国は、魔法使いを育てているんだ。他国との侵略戦争で10年も戦争をしていたからな。
イグナシオたちはほっとした。ちょっと仕返しだ。まあ俺たちがいなくても、地雷の有効距離を外れて助けを呼ぶか、キャンプ地だから他のキャラバンが来るのを待てばなんとかなるだろう。
タクトは両手をかざして魔法を使う。
「念のため地雷の周りを真空にすると爆発しない。それから、スイッチを切るんだ。よし、解除した!」
『ほっ』
グリート団は安堵した。それから、口々にお礼を言った。
「ありがとう!」
「やっぱりお前たちはすごいよ」
まあ、言われると悪くないな。
マーレイにも聖女がいると聞いているが、ユリスを見捨てることはできない。ユリスは、俺たちに盗賊の人数を教えてくれたし。俺はイグナシオに言った。
「俺たちはユリスを追いかけるから、バルジフさんをマーレイの神殿まで連れて行ってくれ。ユリスを救出できたら俺たちもマーレイに向かう。日程が過ぎたら、出発してくれてかまわない。それで貸しはなしだ」
「……。分かった。ユリスのことも礼を言う。行き先は分かるのか?」
「ああ、ちょうど探索石で見ていたんだ。西に向かった。港に行くはずだ」
「そうか」
俺だけ馬車に戻ってダッジとヤンに計画を説明する。二人は盗賊の件で、グリート団と行動することに難色を示したが、親方のためにしぶしぶ了承した。ヤンがバルジフさんの付き添いで残ることになり、ダッジが俺たちと同行してくれることになった。ヤンと急いでキャンプ地に戻ると、バルジフさんをヤンに任せ、コズエとタクトと馬車に戻った。ダッジが言う。
「今日は、行けるところまで走らせるぞ」
「お願いします!」
馬車は夜の街道を走り出した。




