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グロット・オー ~スナープ団をぶっ潰せ!~  作者: 雲乃琳雨


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27/43

27、異世界エンド

 親方の荷馬車に乗って、バスタの町を出た。同行してくれたのは、親方とカズヤ、御者担当のダッジと護衛のヤンだ。ダッジは眉毛まで白い幅広のヘッドバンドをしている。ヤンは側面から後頭部をすっぽり覆う白い帽子をかぶっていた。

 アイサムまでは歩くと1時間ちょっとかかる。馬車なら1時間弱ぐらいだ。


「へえ~、フリオン団だったのか! 盗賊を退治したって有名だよ! あとなんとかの花も。すごいね。

 俺はバルジフ。バスタの町の復興グループのリーダーだよ」

「カズヤから聞きました。バスタの町が賑わっているのもグループのおかげですね」


 俺は感心して言った。


「君は若いのに礼儀正しくて、本当にすごいな! カズヤも見習え」

「はいはい」

「こら、そういうところだぞ」


 親方は、俺の言葉遣いに驚いたようだ。これは処世術だ。ちょっと得意げ。


「コズエは全部の作戦に参加したんですよ」

『え!?』


 グループのみんなが驚いた。カズヤは驚嘆した。


「コズエはすごいな! アルムヘイムより南から来たんだろ。俺なら絶対無理」

「体力だけはあるから。そういえば私、ラケットを向こうの世界から持ってきたんだけど、カズヤは何か持ってきた?」

「いや、俺は身一つで来た」

「そうなんだ。これには魔力があるって言ってた」


 コズエはラケットの袋を指した。


「へ~」(コズエはなんだか規格外かも。俺とは違うのかな……。神様はなんで俺を呼んだんだろ?)


 カズヤはぼんやり考えていた。その時、ヤンが叫んだ!


「矢が飛んでくる! 伏せろ!」


 俺たちが伏せると、矢がカズヤの胸に刺さった。突然のことでみんなが驚く。カズヤの体が光ると、消えていった。


「カズヤー!!」


 コズエが叫んで、涙がこぼれた。



 カズヤが目を覚ますと、そこは六畳一間のボロアパートだった。布団の上で横になっている。


 俺は直前の出来事を思い返した。

 考え事をしていたせいで後れを取った。矢が俺の胸にあたると、体が光に包まれて、俺は死ぬのだろうか? と思った。最後に見たのは、泣いているコズエの姿だった。


「やった! 戻って来た!」


 俺は体を起こすと、思わずガッツポーズをした。コズエには、あんなことを言ってたけど、正直、異世界は限界だった。戻れてほっとした。

 スマホを見ると、転移した時と同じ年だった。俺は多分、ここから1ミリも動いていない。というより、同じ時間に戻って来たんだ。


(腹が減った)


 人は腹が減る。それが活力だ。

 俺はひげを剃って服を着替えると、スマホを持って近くのコンビニに行った。好きな唐揚げを注文して、キャッシュレス決済をする。


(便利すぎる。神!)


 ここは、食べる物も、歯磨きも、トイレも、風呂も、寝るところにも困らない。臭いもない。むしろ俺だけが臭い気がする。これが俺の世界だ。

 ここでも異世界でも冒険者はクレイジーだ。あいつらは、エネルギーが余ってるんだろう。


 俺は近くの公園のベンチに座って、唐揚げを食べた。久しぶりの現代風景を堪能する。平和で、静かで、誰も俺を気にしない。唐揚げが気軽に買える、そうここは天国だ!

 落ち着いた場所で、好きなものを食べて、なぜだか涙が出てきた。


 本当の俺は、精神疾患でニートだった。戻ってきて気が付いたことは——、俺は精神を病んでいないと思っていたけど、手続きをしていて「働かなくても暮らしていけるんだ」って思った時点で、精神が病んでいたということ。こっちの世界では、精神力が十分の一ぐらいで済むということ。なぜ、みんなと同じでないといけないと思い込んでいたんだろう。


『なんで男の人は、偉そうにものを言うのかしらね』


 本当そうだよ。コズエの前では先輩風吹かせて、いい格好をしたかったんだな。

 コズエは、ちょっとの時間しか会ってない俺のために泣いてくれた。情が厚い子だな。今も俺のことを考えて、泣いているかもしれない。俺なんかのことで泣かないでほしい。でも、きれいに忘れられるよりは、泣いてくれるのはうれしい。どっちなんだよと思ってフッと笑った。


 俺が前にしていた仕事は事務の仕事だった。自分は体力がないから、デスクワーク向きだと思っていたけど違った。数字の打ち込み、顧客の対応、誰かのミスの文句を聞いたり、仕事が回って来たり、同じことを繰り返し、時間だけが過ぎていくことにただ疲れてしまった。


 初め異世界に行った時は、どうしていいか分からず途方に暮れていた。町の片隅で小さくなっていたら、親切な人が声をかけてくれた。異世界人だと分かったら、親方のところへ連れて行ってくれた。それで生活は何とかなったけど、復興グループの仕事はハードで、俺はいつもくたくただった。でも、生きるためにやらないといけなかった。


 俺は神様に会わなかったけど、コズエが神様の使者だったのかもしれない。最後に、こっちに帰りたがっていたコズエや、若いけど独り立ちして、一所懸命生きているシュナやタクトに会うことが、俺には必要だったんだ。

 もし、コズエとこの世界で再会できたら、あの時嘘をついていたんだと、笑って言えるようになりたい。きっとコズエはそんなこと、気にしないだろうけど。

 あの場に残った三人と、俺のことをいつも考えてくれた親方、そして仲間のことを考えると、また涙が出た。


 俺は涙を拭いた。そういえば、コンビニにアルバイト募集の貼り紙があった。俺は異世界でいろんな仕事をしてきた。コンビニもいけるかもしれないな。

 俺は家に帰って、履歴書をプリントアウトすると、またコンビニに舞い戻って面接を受けた。俺は面接に受かって、唐揚げを揚げることができた。残念だが、唐揚げは調味したものが店に届くので、レシピを知ることはなかった。


 コンビニは、異世界の小さな店舗に似ている。訪れる客も、異世界と変わらないことに気が付いた。俺はいろんな人が訪れるここが好きになった。客とのトラブルもあるけど、異世界の盗賊よりは全然マシだった。強盗は怖いけど、武器の使い方を習ったから自分の身ぐらいは守れると思う。丸腰で戦うほど馬鹿じゃないけど、店はできるだけ守りたい。


 俺は数字に弱く、経営者には向いていないので、雇われてる方が性に合っていた。単純作業も好きだが、体を動かすのも好きだ。

 その後、長く働いた俺は正社員となり、そして引退したオーナー店長の代わりに店長になった。


 今思うのは、あの世界で出会った人たちに、ありがとうの感謝の気持ちだった。

 俺は確かにあの世界で生きていた。


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