26、グリート団参上
歩いていると、植物がまばらになって砂漠に入った。両脇が高い岩山になっていく。街道が見えてきた。
「アルムヘイムに行くときの峡谷に似ているね」
「そうだな。だから盗賊もねぐらにしているんだろう。バスタはアイサムの街からも近いし、自警団もあるから発展しているんだ」
「へ~、そうなんだ」
二人とも感心して聞いていた。
「アイサムに兵站があるから盗賊退治はしているけど、大きい街の間だから、残党がまた仲間を集めて来るんだよ。ここにいる奴らがフロスト村にも来ていたんだ」
(困ったものね)「あ、町だわ!」
街道を横切る道を進むと川が流れ、アーチ状の石の橋が架かっていた。対岸には草が生えていてその上にバスタの町がある。
橋を渡って町に入ると賑わいを見せていた。
「お祭りみたい」
「本当だ。どうしたんだろ?」
変だなと思って、道行く人に聞いてみた。
「何かあったんですか?」
「ああ、旅人かい?」
「そうです」
「良かったね。グリート団が、街道の盗賊をやっつけてくれたんだよ! それでみんな大喜びさ」
「へ~」
タクトは感心した。そうか、それは良かった。コズエが嫌な顔をした。
「グリート団はキーラのいる団よね」
「そうだな」
「知ってるの?」
「ああ、その団の情報部員の女に、コズエが金持ちの令息と勘違いされて、誘拐されそうになったんだ」
「ええっ!?」
「本当迷惑な話よ」
「勘違いだって分かって、あっさり手を引いたよ」
「良かったね……」
タクトは胸に手を当ててほっとした。補修工事をしている店があった。破壊箇所があったから盗賊に襲われたのかもしれない。
「カズヤ、角材を持ってきてくれ」
「はい、親方!」
「!」(和名だわ)「ちょっと行ってくる」
コズエが反応して、角材を運ぼうとした、こげ茶色の髪の男性に声をかけた。
「あなたはもしかして、異世界人ですか?」
「そうだけど?」
「やっぱり! 私もそう。森下梢、17歳です」
「え!? 俺は山口和也、26歳だ」
「どうした?」
グレーの髪に四角い口髭のおじさんが店の中から出てきた。
「あ、親方。この子が異世界人だって聞いて」
「なんだと!? そうか。なら、休憩してこい。行っていいぞ」
「ありがとう!」
カズヤの案内で町の広場まで行った。噴水の縁石に四人で腰かけた。
「会えて良かった。あなたに会いに来たの。私はこないだ来たばかりで、話が聞けるかもって」
「そうか! 俺はもうここに3年もいるよ」
「やっぱり……。帰れないの?」
「ん~、俺、元の世界ではちょうど仕事を辞めて、することがなかったんだよね。こっちのほうが性に合ってるのかも」
「そうなんだ……」(いろんな人がいるよね)「自警団にいるって聞いたけど」
「そうなんだ。さっきの親方が復興グループのリーダーで、大工と自警団と便利屋みたいなことをしている。俺もその一員だ」
なるほど。この町が発展したのは、そのグループが主導していたからか。俺も聞いてみた。
「さっき、店を修復していたようだけど」
「そうだよ。また盗賊が来たんだ。食料品店は狙われやすいね。防御の魔法石は高くて装備できないから」
「ここには神殿はないの?」
コズエが聞いた。このぐらいの町なら神殿は必ずあるけど、ここは聞いたことがないな。カズヤが説明した。
「神殿に物資が届くと盗賊が来るから、建て直すのをやめてるんだ。結局、盗賊は来たけどね」
「そっか……。ここって、ゲームの世界に似ているよね。アイテムとかモンスターとか」
「それは思った!」
「ゲーム? すごろくみたいな?」
タクトが聞くとカズヤが答えた。
「そうだよ。アイテムもモンスターも異世界にはいないけどね」
異世界との共通点があるんだな。魔法はないけど、コズエの持っているラケットは、この世界にない技術が使われている。別のことが発達しているんだろう……。
「女子高生が、ここで旅をするのは大変だろ」
「うん、本当大変! でも、シュナとタクトが一緒に旅をしてくれるから良かった」
「俺は初めからこの町に来たんだ。親方が面倒を見てくれて、すごく助かったよ。親方が言うには、異世界人は運がいいって」
「そうみたいだね。でないとやっていけないよ」
「そうだな」
二人で笑い合った。
「シュナたちはフリオン団なんだよ」
「そうなんだ! フリオン団は聞いたことあるよ! いい冒険者集団で有名だ! 会えてうれしいよ」
カズヤが喜んだので、俺たちもうれしかった。
「フリオン団だと?」
声がした。見ると、女連れの20代後半ぐらいの若い男が、前を歩いて立ち止まった。男はオレンジ色のくせのある長い髪で、薄いモスグリーンのヘッドバンドをしている。細い葉っぱ模様のオレンジ色のシャツを着て、開いた胸元から冒険者証が見えていた。その男と腕を組んでいる女は20代半ばぐらい。朱色の派手な髪をしている。二人の左後ろに、淡い紺色の長い髪に、黄色いヘアバンドをした、清楚な20代前半ぐらいの女性がいた。その後方にも、立ち止まってこちらを見ている男たちがいる。すごい派手な集団だな……。
「聞いたことがある。慈善団体らしいな。冒険者は慈善団体じゃないけどな」
(カチンとくるわね。それにしても、チャラいわ)
「この人たちは、盗賊をやっつけてくれたグリート団だよ」
『え!?』
カズヤの紹介に俺たちは驚いた。これが噂のグリート団か……。
「俺はリーダーのイグナシオだ。こいつは恋人のレイナ。こっちにいるのが、聖女のユリスだ。俺たちを知らないとは、本当に冒険者か?」
『聖女!?』
コズエとタクトが反応して、ユリスを見た。イグナシオはフフンと鼻で笑った。聖女は珍しいので、グループにいれば箔が付く。聖女はやはり大人しい女性だな。
こいつがイグナシオか。噂通り、軽そうな男だな。人数はここ以外にもいるだろうから、大所帯だな。
「名前は聞いたことがある。俺はフリオン団のシュナ、こっちが魔法使いのタクト、こっちは客人のコズエだ。
お宅のキーラが、コズエに手荒な真似をして、一つ貸しがある」
「なんだって?」
お返しに、俺は言ってやった。
「それはすまなかったな。今度ちゃんと言っておくよ。じゃあな」
イグナシオは意外と素直に謝って行ってしまった。少し垂れ目で、あれが甘いマスクと言うやつだな。人が寄ってくるのが分かる気がする。
なぜか、ユリスは動かなかった。
「盗賊は十人いました」
「そうなんだ。グリート団は強いんだね!」
タクトがそう言うと、ユリスはお辞儀をしてイグナシオの後を追って行った。それなら、あの団は18人ぐらいはいそうだな。
「なんで男の人は、偉そうにものを言うのかしらね」
「男はそういうものなんだよ」
カズヤは苦笑いして言った。前もシルフォードに言われたからな。元気になったから、また言うだろうか?
「そうなの? 嫌われるのに損ね」
「ホントホント」
タクトもコズエに同意した。タクトは言わないだろうなと思って、俺はフッと笑った。カズヤが立ち上がる。
「さて、戻るか。会えて良かったよ」
「私も! ありがとうカズヤ」
「うん」
みんなで店の前に戻った。リーダーが外に出ていた。
「おう、戻ったか」
「ありがとうございました」
「ありがとうございます。親方」
カズヤとコズエがお礼を言った。
「お前たちはこれからどうするんだ?」
「私たちはこの後、アイサムの神殿に行くんです。私はそこに置いてもらう予定です」
「そうなのか! じゃあ、馬車で送っていくよ」
「え!? いいんですか?」
「ああ、せっかくカズヤが同郷の人間に会えたんだ。もうちょっと一緒にいたらどうだ」
コズエが俺に聞いてくる。
「シュナどうかな」
「いいよ。盗賊もいなくなったから、街道を使おう」
親方は本当にいい人だな。カズヤも返事をする。
「分かりました」
「ここは他の奴に任せるよ」
親方は仲間に荷台から荷物を降ろさせ、馬を取ってこさせた。
「楽だね」
「うん」
タクトとコズエは喜んだ。




