23、突然の訪問
借りている家に入った。フレイアの手枷をタクトが解錠してから、ベッドに寝かせる。
「ありがとう」
力なくフレイアは言った。コズエが面倒を見る。
「大丈夫よ。どこか悪いところはある?」
「力が入らないの。エネルギーが吸い取られる拘束具を使われたみたい」
「そうだったの」
俺が聞いた。
「何があったか話せる?」
「ええ、大丈夫」
フレイアはベッドから体を起こして、昨日あったことを話した。
「やっぱりあいつは、フレイアのことを知っていたんだな」
「ええ。私の情報を調べている、変態だとは思わなかった」
「うわ……。それにしてもエリサは、どうしようもないわね!」
フレイアはコズエを不思議そうに見た。
「あなたは、エリサにひどい目に遭ったのに、あまり悪く思っていないのね」
「え? ……そうね。結果的にシュナに会えたし、エリサ自身は人に危害を加えたりしていないからかな。悪いことをしているけど、あまりたいしたことをしていないような?」
「コズエは異世界人なんだ。俺たちとは違う考え方をするときがある」
「あなた異世界人だったのね」
「うん」
フレイアは自分の手を見ていた。そして、自分のことを話し始めた。
「私はフレイア。17歳で、テンバー団の一員よ」
テンバー団!? そうだったのか。
「同じ年だわ」
「そうなの?」
コズエの言葉にフレイアが素の顔になる。俺がテンバー団について話す。
「テンバー団は聞いたことがある。マーレイに拠点がある商会だ。リーダーのクライムは若くて天才肌だって話だ」
通称スネイク。狙った獲物は逃さないからだ。
「そうよ。私はそこに所属しているの。5歳の時にこの見た目のせいで、両親に村から離れた修道院に預けられたの」
「!」(そんな……)
コズエは驚いた。フレイアは話を続けた。
「両親は大事にしてくれたの、でも村人たちは違った。気味悪がって。母は村人たちがそのうち私に危害を加えるんじゃないかと思って、修道院に連れて行った。両親とはそれ以来会っていない。
修道院では、白いものは神の使いだと言われて大事にされたの。だからそれで良かった。私も小さな修道服を着て、頭に布を付けて過ごした。
それから8歳になった時に、クライムが私の噂を聞きつけてやってきたの。変わったものが好きだから」
『この子を引き取らせてほしい。ここにいても、そのうち人買いに誘拐されてしまうだろう』
それを聞いて修道女たちは迷った。
『この子を大事に育てる。それを神に誓おう』
「クライムがそう言ったので、修道女たちは私に決めさせることにした。嘘を言っているようには見えなかったし、私は人買いに連れて行かれるよりはこの人のほうがいいと思って、うなずいた。引き取ってから、クライムは私に自分の身を守れるように、護身術や武器の使い方を教えてくれた。クライムは約束を守ってくれた。
しばらくは商団の護衛をしていたけど、身軽に動けるから冒険者になって、アイテムを探すようになったの。そのついでに賞金稼ぎをしているのよ。
ゴーザは私が暗殺者だと他の人から聞いたけど、私はただの賞金稼ぎよ」
フレイアは道理を通している。ユナさんを手に掛けなかった。コズエがそっと言った。
「話してくれてありがとう」
フレイアの顔が緩んだ。フレイアも誰かに話を聞いてもらいたかったんだな。コズエは同じ年だし。一人で行動するところが俺に似ているなと思った。他にも似ている人がいて良かった……。
俺は預かっていた、ミンたちの魔法袋三枚をフレイアに渡した。
「あなたたちは、本当に約束を守るのね」
「当然さ」
「誰でもできることじゃないわ」(魔法袋は高価だもの)
フレイアはたちと言ってくれた。
「回復魔法をかけるよ」
タクトはそう言うと、フレイアに魔法をかけた。
「ありがとう。体力が戻ったわ」
「えへへ」
タクトはお礼を言われて照れた。コズエはそれを見てフッと笑う。
「私も自分の魔法袋を取り返したいから、あなたたちに協力するわ」
「助かる!」
クレードが言ったその時、ドアを叩く音がした。みんなが警戒する。クレードがドアを開けると、青い髪の女の子が立っていた。
「君は屋敷にいた子だね。どうしたんだ?」
「はい。ゴーザ様に、倒れたおじいさんを柵の外に捨ててこいと言われたんです。でもそんなことができなくて、あなたたちを捜すことにしたんです。家にいるおばあさんに聞いたら、ここにいると言われて来ました。あと、聞きたいことがあるんです」
「なんだって!?」
クレードが慌てて後ろを見ると、荷台に乗せられた村長のお父さんが横たわっていた。もう一人荷車を押していた、茶色の髪の女の子がいる。
「ブレアさん!」
声をかけたが、返事はなかった。
「息はある」
「お年寄りはほとんど、食べ物をもらえなかったんです……」
クレードがブレアさんを中に運び入れて、もう一つのベッドに寝かせた。タクトが回復魔法をかけると、ブレアさんが目を覚ました。クレードが台所で、缶詰のスープを温める。
「ああ、クレード来てくれたんだね。うちの息子は村を捨てたが、お前は本当にいい奴だ」
(え!?)
ブレアさんは涙を流した。コズエが小さな声で俺に聞いてきた。
「仲間って村長さんのことだったの?」
「村長は助かった中の一人だ。でも、危険だから村を移ろうと、意見が対立したんだ。仕方ないことかも……」
「そっか……」
「食べていなくて、倒れてしまったようだ」
「これを食べて。ゆっくりよく噛んでください」
クレードはスープを食べさせた。
「ありがとう。久しぶりに食べた。とてもおいしいよ」
その後、クレードは女の子たちから話を聞いた。
「連れてきてくれてありがとう。聞きたいことって何だい?」
「兵站に通報するって言ってましたよね。私たちもお尋ね者になるんですか?」
「そうだ。このことが終わったら、通報する」
「そんなの困ります」
「どうしよう」
女の子二人は涙ぐんだ。
「君たちは何であんな奴について来たんだ?」
「ゴーザ様が急に声をかけてきて、君たちに見合った楽な暮らしをさせてくれるって言ったんです。家にいてもいい暮らしはできませんし」
「私もたいして稼ぎもよくなかったんで、家族から文句を言われて、家に居づらかったんです……」
「私は、様子を見て最後に合流したわ」
フレイアが言った。
(二人ともシュナと同じぐらいかな。家族に言われるとつらいよね……)
コズエが気の毒そうに二人を見ていた。みんな問題を抱えているようだな。青い髪の子がラナ、茶色の髪の子がミシュカと名乗った。
「フレイアを殺そうとした場面は録音石に記録した。俺たちにも攻撃してきたから、殺人未遂であいつは逮捕される。他にも余罪があるから、いい奴じゃないぞ」
「そんな! 怖い」
「そうですよね……。お年寄りにもひどいことをしていたし」
女の子たちは震えた。クレードが質問した。
「食料はどうしていたんだ?」
「この村の物をかき集めてました。それがなくなれば、行商の人を呼ぶって言ってました」
「ここは、アイサムの街からも近くて治安もいい。村人が消えた村に目星をつけて来たんだな」
「迷惑な奴だ!」
俺の言葉を聞いて、クレードが憤慨した。
「このままだと村の大事な食料が全部食い尽くされてしまう。お年寄りたちの体が心配だ。君たちが協力してくれれば、君たちは何もしなかったのを証言する。どうだい?」
「分かりました」
「はい」
ラナとミシュカも了承してくれた。
「でも、あの屋敷の中は監視されています」
「そうか。なら、他の子たちには言わなくていい。君たちはお年寄りたちの状態をチェックして、作戦が決行されたら、みんなで協力してお年寄りたちを外に避難させてほしい。それじゃあ、戻って。ゴーザには、言われた通りにしたと言うんだ」
「分かりました」
二人は荷車を押して屋敷に帰った。クレードが言った。
「作戦は明日決行する」
「俺とコズエでゴーザを仕留める」
「お!」
「何か作戦があるのか?」
コズエもやる気になってる。クレードの問いに、俺はニヤリとする。
「そうだ。簡単な方法さ。俺たち二人が正面からまた会いに行く。その隙にタクトとフレイアで屋敷を作った魔法石を探してくれ。そのスイッチを切れば、逃げ場がなくなる」
「分かった!」
「いいわ。場所の目星は付いてる」
タクトとフレイアが了承する。
「クレードとジミーとコリンは、女の子たちとお年寄りを救出してくれ」
「了解した。お前の作戦に任せた」
『了解』
ジミーとコリンも手を額に当てた。




