22、救出作戦
家に入って落ち着くと、俺はタクトに聞いた。
「あいつは雷が得意なのか?」
「いや。派手だからじゃないかな?」
「ホントに何なのかしら、あの中二病が炸裂した奴は! 世のためにも、あいつは倒さなきゃ」
ちゅうにびょう? 何の病気だ?
「女の子たちを開放しよう」
『オー』
タクトの言葉にジミーとコリンも拳を突き上げた。俺はマリアのことを言った。
「マリアがいるなら賞金首かもしれないな。あいつに始末させれば簡単だ」
「でもおかしいな。ゴーザはあんな雷を出せるほど優秀じゃなかったはず。俺もあいつも特待生になれなかったから、辞めたんだ。お金がない奴はみんなそうなんだ」
「増幅器を使っているんじゃないか? 建物の魔法石もそうだし、他にもいろいろな魔法石やアイテムを持っていそうだ」
そこへ家のドアが開いてマリアが現れた。突然で驚いた。ノックぐらいしてもいいと思うが、慌てていたので誰も鍵をかけていなかった……。
「あなたたちに聞きたいことがあって来たの。あのピンク頭は誰なの」
「私を身代わりにして逃げたやつよ!」
「単体で行動している。ただのコソ泥だ」
「え、そうなんだ! ひどい子なんだね」
コズエと俺が答えると、タクトがビックリしていた。マリアは静かに答えた。
「そうなの。分かったわ」
俺は気になることを聞いた。
「あいつは、賞金首なのか?」
「違うけど。単体の冒険者と組んで、アイテムを横取りするために始末してるんじゃないかって、容疑がかかってる。
先に言っておくけど私はあいつが持っている、増幅器が目当てなの」
つまり、横取りするなってことだ。
「なるほど。でもそんなアイテムを狙う冒険者なら、あんな奴に簡単にやられたりしないだろ?」
「どんな手練れでも、油断はするものよ」
マリアは行ってしまう。クレードが口を開く。
「女の子たちは、納得してついてきたようだな。あの屋敷に住めれば満足するだろうが、あんな奴と居ても幸せにはなれないだろ」
もっともな意見だ。
「お年寄りたちがどうなってるのか心配だ。様子を見て、追い出す作戦を立てないとな。今日はここに泊まろう」
「分かった」
クレードは村の倉庫を見に行ったが、そこにも食料はなかった。実はもう一つ、森の中に隠し倉庫があった。そこは大丈夫だったので喜んでいた。盗賊被害があるので、大体みんな倉庫を二つ用意しているのだ。
その日の夜。マリアは自分からゴーザを誘った。
(近寄れないなら、招かれればいいのよ。私がお気に入りみたいだからちょうど良かった)
建物の中も白くてきれいだ。廊下には赤いじゅうたんが敷いてある。ゴーザは魔法石で、ここにあった家を豪華な屋敷に作り変えた。女の子たちは一人ずつ、部屋が与えられている。
マリアはゴーザの部屋に向かった。ノックをして返事があったので部屋に入った。
「やあ来たね。フレイア」
「!」(私の本当の名前を知っている!?)
フレイアは魔法で、すぐに拘束された。両手に鉄の手枷をはめられて、鎖を引っ張られると、力なく床に倒されてしまった。
「お前が暗殺者なのは知っている」
フレイアは驚嘆した。
「なぜ? 会ったことはないはずよ」
「俺は美しい女の子が好きなんだ! お前のうわさは知っていた。テンバー団に白髪で赤い目の美少女がいるってね。そんな子は二人といない。情報を集めていくうちに、
『あいつはやめておけ、テンバー団の暗殺者だ』
と教えてくれた奴がいたんだよ。お前が自分から近づいてきた時は驚いたよ。でも、自分のことを話せば受け入れてやってもいいと思ったが、お前は偽名を使った。俺は裏切り者が嫌いだ!」
(始めからバレていたなんて! とんだ失態ね……)
フレイアはシュナたちに言った、自分の言葉を思い出した。
(この拘束具のせいかしら、力が入らないわ)
「エリサ」
ゴーザがそう呼ぶと、ソファの後ろからエリサが顔を出した。
「こいつを牢に入れておけ」
「すぐに始末しないんですか?」
「明日、みんなの前でショーを見せる」
「分かりました。立ちなよ」
エリサはフレイアを立たせると、部屋を出た。地下にある牢にフレイアを入れる。
「あんた、邪魔だったからちょうど良かったわ。同じ髪型だし。ナンバーワンは私よ!」
エリサがいなくなってから、フレイアは小さく笑った。
「フッ」(そんなこと、どうでもいいわ)
翌朝、偵察に行ったジミーが戻って来た。
「大変だ! 昨日来た女の子が捕まった! 処刑される」
「なんだって!?」
見に行くと、屋敷の庭で大釜に火がつけられていた。その後ろには太い木が立てられ、釜より上方にフレイアが縛り付けられていた。左側に女の子たちが、右側にはゴーザとエリサがいる。俺は録音石のスイッチを入れた。ゴーザが話し出した。
「今日はフレイアを釜茹での刑にする。美少女を茹でたらどうなるかな。火あぶりでも良かったが、黒焦げになったら食べられないからな。
茹で上がったら、老人たちの食料にする」
うっ その場にいた全員が引いた。俺たちは垣根の陰で見ている。タクトが言った。
「マリアちゃんじゃなかったのか?」
「そういうことか。なんでか知らないが、フレイアは初めから正体がバレていたんだ」
「やることがひどすぎる! あの陰キャ」
昨日、コズエがアピスのことを口にしたのは忘れておこう……。
「どうするの?」
「助けるさ。用はあいつを狙わなければいいんだ」
「釜を割ったらみんなが火傷するから、コズエ、魔法玉で凍らせよう。攻撃じゃなかったら防御は効かないはず」
「OK」
「侵入は、僕が一緒に行ってシールドを張る」
タクトが言うと、クレードが指示を出す。
「コズエはここで後方支援を頼む。俺とシュナであの子を助ける。ジミーとコリンは屋敷の裏の左右に行って、時間差で音を出してくれ。その後は、すぐに屋敷から離れろ」
「了解!」
「楽しそう」
「遊びじゃないぞ」
タクトが爆発音が出る魔法玉を作って、ジミーとコリンに渡した。それぞれが配置につくと、クレードがゴーサインを出した。コズエが釜に氷玉を打ち込むと、あっという間にお湯が氷結した。
「やった」
「なんだ!?」
ゴーザが驚いた。クレードが合図を出す。
「行くぞ」
俺たちが正面の通路から入った。特に防御はされていないようだ。
「お前らか」
ドカン!! ボカン!!
屋敷のほうから破壊音が聞こえた。ジミーたちが上手くやったようだな。
「きゃあああ!」
女の子たちが音に驚いて叫ぶ。
「なんだ! くそっ」
ゴーザは仕方なく屋敷のほうに走って行った。大事なものがあるんだろう。俺たちはフレイアの縄を切って木から降ろした。クレードがフレイアを担いでその場を逃げた。ジミーたちも戻ってきていた。




