21、美少女たちのハーレム
アイサムの街を出た。歩きながらフロスト村のことを話した。
「フロスト村はクレードの住んでいた村で、3年前フリオン村と同じように村人が人買いに連れ去られたんだ。その時クレードは、仲間と行商に行って留守にしていた。奥さんと赤ちゃんを連れて行かれた」
「そんな!」
「クレードは捜しに行ったがやはり船を使ったようで、足取りが途絶えてしまった。他の仲間はあきらめて他所の街に移ったそうだ。クレードは村のお年寄りたちの面倒を見てから、二人を捜すためにフリオン団に入ったんだ。今も見つかっていない」
「そうなのね……」(赤ちゃんなら、もう3歳ってことね……)
コズエがぽつりといった。つらい話だ。
「当時はすでに、小さい村が狙われている噂が伝わっていたから、人買いが来た時に歩けるお年寄りも、歩けないふりをするのが周知されていた。それでお年寄りは結構残ることができた。今は11人残っている。歩ける人たちがそうでない人の面倒を見たり、畑を耕したり、前の生活を続けている。クレードは冒険者をして村に戻りながら、食料や必要な物を届けたりして生活を助けているんだ。俺もハシブおじさんも、手伝いに行ったことがあるよ」
「えらいね。クレードさん」
「そうだな。クレードも俺たちと同じで村を再建したいんだ」
タクトもしんみりと言った。俺はタクトに聞いてみた。
「ゴーザはどんな奴なんだ?」
「話しかけたことがあるけど、上から目線で、話がかみ合わない奴だったから、あまり関わらないようにしてた。いつも一人でいたよ」
「いるわね、そういう陰キャな奴。横から話せばいいのに。お年寄りに世話をさせるなんて、若いんだから逆でしょ」
いんきゃ? コズエの意見は面白いよな。タクトは話しかけただけえらい。俺なら話しかけない。……なんか俺に似てる気がする。髪の色が黒だし、背格好も似ている。一人で行動してるし……。
フロスト村に着いた。草地の間の道を歩く。奥だけ畑になっているが、手前の草地も実は畑だ。居住区の脇には森、後ろには山がある。木の柵がある入口でクレードたちが待っていた。俺は声をかけた。
「着いたぞ~」
「ああ、来たか。柵には盗賊対策で魔法石の罠が仕掛けてあるんだが、自分たちが入れるように登録してそのまま使っている」
「そうだろうな」
「俺たちも入れるから、中に入って様子を見てこよう。話ができればいいんだが」
「それは無理かも……」
タクトから聞いた話や、やっていることを考えると話が通じる相手ではなさそうだ。
「そうか。とりあえず入ろう」
簡易的な木の門は閉められていて、横には「管轄地 立入禁止 危険」と物騒な看板が立っている。以前も盗賊が来たが、門に触って感電死した。その後も、周囲から入ろうとしたが、どこにも隙はないのであきらめたらしいと、お年寄りから報告があった。畑にも罠が仕掛けてある。
クレードは罠の魔法石に俺たちを登録して、門を開けた。居住区の中に進むと、中心に立派な建物が見えた。二階建てで、白い壁のきれいな屋敷だ。他の家はみんな木の家なので、その家だけが不釣り合いだった。建物の周りには低い木の生け垣があった。
「あんな立派な屋敷は、村になかったぞ。それにあの場所は村長の父親の家があったところだ」
「じゃあ、やっぱり魔法石を使ったんだな」
「他のお年寄りの家に行ってみる」
何件か回ってみるが無人だった。荒らされた痕跡があり、食べ物がなくなっている。端の家にも行ってみた。
「ここは足が不自由な人の家だ」
中に入ると、おばあさんが床で倒れていた。横に杖が置いてある。クレードが驚いて駆け寄った。
「マーサさん!」
「クレードかい……」
意識はあった。
「ほっ。どうしたんだ。何があったんだ」
「二日前に、黒髪の男の子と、ピンク髪の女の子が来て、食料を全部持って行ったんだ……。それから誰も来なくなった。お腹が空いて……。気が付いたら倒れていたみたい」
「そうか、無事で良かった……」
「ひどい! エリサはなんて子なの!」
コズエが憤慨する。クレードは目元をぬぐった。ジミーに水を汲んできてもらい、マーサさんにパンと温めたスープの缶詰を出した。マーサさんは喜んで食べて、元気になった。
タクトがマーサさんに回復魔法をかけると、歩けるようになった。すごいな。
「あら、不思議。膝が軽いわ! ありがとう魔法使いさん」
「良かった! でも、無理しないでくださいね」
「ええ」
クレードは食料を魔法袋から出してマーサさんに渡した。
「しばらくは見つからないように、気を付けて家から出てください」
「分かったわ」
他の体が悪いお年寄りの家に行くと、同じようにみんな食べ物を持って行かれて、床に座っていたり、ベッドで寝込んでいた。残っていたのはこの三人だけで、あとの八人はどうやら屋敷で働かされているようだ。
二人にも食事を取ってもらい、魔法をかけると杖なしでも動けるようになった。
「他の人たちを助けないと」
みんなで屋敷に向かった。庭の通路を通ると、女の子が歩いていた。
「きゃー!」
突然の訪問者に女の子は驚いて、悲鳴を上げた。その子が屋敷の中に入っていき、しばらくすると玄関からゴーザと腕を組んだエリサが出てきた。後ろからは女の子たちが、ぞろぞろと心配そうな顔でついてきた。
「侵入者か」
「あ! シュナとコズエ! あの二人、私のことをいじめたんです。ゴーザ様、お仕置きしてください」
エリサが俺とコズエを指さした。ゴーザにしなを作っている。ちゃんと名前を憶えていたんだな……。
「何よ、自業自得でしょ」
コズエが言い返すと、ゴーザが驚いた。
「お前女なのか? 美しくなければ女じゃないだろ」
「……あいつ、何を言ってるの?」
コズエの目元が影になった。
「これ以上、コズエを刺激しないでくれ……」
「アピスよ……」
コズエがつぶやいた。コズエもこの世界に感化されてきたな……。タクトが残念そうに言った。
「あ~、アピスはダメだよ。魔法使いはモンスターに詳しいんだ。ドロップアイテムとか属性とかを、最初に習うからね」
「踏みつぶされて終わりだな」
俺も言う。タクトが急に叫んだ。
「あ! 君は白リスちゃん」
タクトが女の子の中に、白い髪の女を見つけた。映像には映っていなかったな……。
「なんだ、マリア知り合いか?」
「いいえ、存じません」
「マリアちゃんていうのか」
タクトは全然気にしていない。
「気安く名前を呼ぶな。俺の一番のお気に入りだ」
(そばにいるのに、エリサじゃないんだ)
コズエが素に戻っていた。クレードが話をする。
「お年寄りたちはそこにいるんだろ。開放してくれ」
「奴らは、俺たちの世話をさせるから必要だ」
「なら、お前たちは出て行け。不法占拠で、兵站に通報するぞ!」
女の子たちはざわざわし始めた。兵站に通報されれば、犯罪者になってしまう。
「ここは俺と美少女たちのハーレムだ」
「なんていかがわしい奴なの……」
コズエの顔がまた険しくなる。ゴーザは右手を前に出した。
「言っておくが、俺には物理攻撃も、魔法攻撃も効かない。分かったらさっさと出て行け」
「なんだこいつ、本当に話が通じないな」
クレードがそう言うと、ゴーザは手を上げて、魔法で複数の雷を出してきた。俺たちはその場から慌てて逃げた。周りに落ちたから、牽制したのだろう。
「うわ、いきなり雷を打ってきた! 撤退だ!」
クレードが言うと俺たちはその場から逃げて、マーサさんの家の近くの空き家に逃げ込んだ。




