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グロット・オー ~スナープ団をぶっ潰せ!~  作者: 雲乃琳雨


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18/43

18、パーティの撤退

 サンドルの家に戻って話を聞いた。


「エイリアスの花は一年中咲いているんだ」

「えっ! それなら、魔法植物なのかな」


 タクトが顎に手を当てて考え込んだ。


「エイリアスの花自体に魔力があるのかも……」

「魔力があるから、ジャイアントベアーがそばにいるのかな」

「そうだね」

(タクトはさすが、学校で勉強しただけあって魔法のことに詳しいわね)


 俺とタクトが話していると、コズエが称賛のまなざしで見ていた。タクトは気付いていなかった。まあ、調子に乗らないほうがいいからいっか。そこへ、慌ただしくドアを叩く音がした。アミンがドアを開けると、ゼインがシルフォードに肩を貸して駆け込んできた。


「シルフォードがすごい怪我をしたんだ。サンドル見てくれないか!」

『!』


 その場にいたみんなが凍り付いた。シルフォードのマントを取ると、右側の髪が不揃いに切れていて、右腕の肘から下の肉がなく骨が見えていた。あまりのひどさに、コズエは意識が遠のいてよろける。そばにいたタクトが支えた。


「コズエ!」

「……大丈夫」


 コズエはすぐに意識を取り戻した。これよりひどい場面を見ていたけど、生きている人間は初めてだから……。シルフォードは苦悶の表情を浮かべている。


「自分で、痛み止めや止血の魔法をかけたが、そろそろ気力が切れそうだ。ここで一番の魔法使いはあんただ。こいつを助けてやってくれ!」

「分かりました。でも今私は修復魔法が使えません。保存魔法をかけますので、高度な医療魔法ができるところへ行ったほうがいいでしょう」


「修復魔法は手術と同じで、見て使わないといけないんだ。欠損があると専門の人しかできない。再生魔法もあるけどそれは聖女の力で、今それができる人はいないんだ」


 タクトがコズエに説明した。


「アミン、手伝ってください」

「いやよ!」


 みんなはびっくりする。


「この人はお父さんを治さないと言ったわ! だから私も手伝わない」


 アミンは横を向いた。


「アミン、私のせいなんだ。だから手伝っておくれ」


 アミンは仕方なく手伝うことにした。シルフォードの怪我をサンドルに説明する。アミンはこうやってサポートしていたんだな。小さいのにひどい怪我を見ても動じなかった。俺はゼインに聞いてみた。


「どうしてこんなことになってんですか?」

「それが、シルフォードの保護魔法が効かなかったんだ」


 ゼインがその時のことを話してくれた。


 俺たちはエイリアスの花のもとまでやってきた。岩場の上に咲いていて、その下にジャイアントベアーが立っていた。


『シルフォード、保護魔法をかけてくれ』

『分かった』


 シルフォードは確かに保護魔法をかけた。でも、ジャイアントベアーが咆哮を上げると、俺たち全員が金縛りにかかったんだ。ベアーは真っ先に魔力があるシルフォードに向かった。右腕に噛みついて、肉を食べたんだ。金縛りの時間はそんなに長くないから動けるようになって、俺がベアーに体当たりした。


『煙幕だ!』

『了解!』


 咆哮は魔力を消費するから、しばらくは使えない。睨みは煙幕があれば防げるから、俺たちはそれで逃げることができた。


『撤退だ!』


「本当に危なかった。どうしてこんなことになったのか分からない」

「……気が付いたんだが、お守りがないんだ」


 保存魔法と痛み止めをしてもらい、シルフォードがやっと口を開いた。それを聞いてゼインが驚いた。


「何だと!」


 お守りは多分アイテムだな。


「これのこと?」


 アミンが、朱色と白の模様の布をつぎはぎした、丸いものを差し出した。コズエがちょっと反応した。


(和風の小物みたい)

「そうだ! お前が盗ったのか!」


 シルフォードが左手で、アミンからお守りを乱暴に奪った。


「盗ってなんかいない。落ちてたから渡そうとしたのよ!」

(なんて人なの!?)


 コズエがまた怒りをあらわにした。サンドルが手を出してアミンをかばった。


「やめてください。すべて私が悪いんです。グロット・オーの地図を作ったのは私です。グロット・オーがあるかは分からないです」

「嘘っていうことか」


 ゼインが言った。それを聞いてシルフォードが喚いた。


「なんて奴らだ! お前たちのせいで俺がこんな目に遭った。みんなに言ってやる!」

「止めろ! そんな姿を見せるのか!? 担架で運ばれるのを嫌がってただろ」


 ゼインがそれを言うとシルフォードはおとなしくなった。パーティは出て行った。


「こんなんだから、妻は出て行ったんですよね」


 えっ、そっち? だいぶ病んでるのか……?


(イケメンは憂いても絵になるわね)


 コズエは目を線にして、親指と人差し指の間に顎を乗せてサンドルを見ていた。どんな表情?


「みんなに言ってきます。やっと分かりました。みなさんを危険な目に遭わせて、自分勝手なことをしていました」

「お守りって何?」

「保護魔法を強化できるアイテムです」


 コズエの問いにサンドルが説明した。……あいつそんなに強くないのかも。俺が言う。


「それで、S級になれたのかもな」

「え、それってずるじゃないの?」

「アイテムを取ってこればいいから、それもありなんだよ。でもまあ、魔法の練習や勉強はおろそかになるかもね」

「そっか」


 タクトがコズエに説明する。サンドルは歩くときに使う杖を突いて家を出た。俺たちもついて行く。サンドルは広場で村長と話をすると、塀の近くの演説台に上がった。冒険者に向かって話をする。


「冒険者の皆さん。グロット・オーの地図は私が作りました。エイリアスの花を取ってきてほしかったからです。グロット・オーがあるかは分かりません。それが真実です。みなさんを騙して申し訳ありません。お詫びに、支払った料金分の魔法をかけますので、私の家に来てください。地図も回収します」


 ざわざわ


 冒険者たちはざわめいた。入れ替わりで、村長が台に上がる。


「しばらくは人が多いので、人数制限を続けます。料金は取らないです。入りたい人は入ってください。街道で地図を売っている者がいたら、もう売らなくていいと言ってください。話は以上です」


 村長は70代前半ぐらいで、背中は少し曲がっていたが言葉はしっかりしていた。村長も知っていたんだな。


「そうか……」

「どうする?」


 特に文句が上がることもなかった。信じている者もあまりいないからな。冒険者の話はすぐに広まるから、もう地図は売れないだろう。これで、グロット・オーの地図の話は終わったな。

 俺たちは村長に話をして、明日の明け方に高原に上らせてもらうことにした。


 家に帰るとサンドルに村の話を聞いた。村長に地図の話を持ちかけた時、快く承諾してくれたそうだ。


『お前の目が元に戻るなら協力するよ』


 収入になるからと村の人たちも協力してくれたそうだ。地図のことが終わっても元に戻るだけだからと、みんな気にしていなかった。


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