17、ファンの訪問
サンドルに、ファンが会いたいので連れてきたと話したら、快く承諾してくれた。外で待たせていたゼインたちを家の中に入れると、シルフォードがサンドルに挨拶をした。
「僕はゼインのパーティのS級魔法使いシルフォードです。あなたに憧れて、髪も長くしたんですよ!」
「そうですか」
サンドルには見えないけどな。
「そこでお願いなんですけど、あなたの魔法の杖を譲ってもらえないでしょうか。大事にします」
(えっ? 何言ってるのこの人)
俺たちは驚いた。こいつ、それが目当てだったのか。とんでもない奴を連れて来てしまった。だがサンドルは落ち着いていた。杖は部屋の隅に立てかけてあった。
「それはできません。こう見えても魔力は使えるので、この杖はまだ必要なんです。でもあなたがエイリアスの花を持ってきて、私の目が治ったら、お礼に差し上げます」
シルフォードはそれを聞いて無表情になった。でもすぐに、にこやかな顔をする。
「分かりました。採ってきますよ。さあみんな、行きましょう」
そう言うと、仲間を連れて出て行った。俺は申し訳なく思った。
「すいません、失礼な人だと思わなくて……」
「本当、失礼な人。S級だから、もっとちゃんとした人なのかと思った」
コズエも憤慨する。サンドルは穏やかに言った。
「大丈夫ですよ。同じような人が、何人も来ていますから」
『え!?』
俺とコズエは驚いた。
「その度に同じことを言っています。まだ誰も持って来ていませんけどね。それに私も、前はあんな感じでした。調子に乗っていたんでしょうね。
S級モンスターのショートドラゴンの毒が残ることを知らなくて、後遺症でこんなことになってしまいました。罰が当たったんです。私が故郷に帰ろうとしたら、妻は付いて来ませんでした。それで離婚しました」
(え~、こんなイケメンでも振られるの!? 大人の女性は厳しいわね……)
コズエが気の毒そうな顔をしていた。タクトは杖のことを聞いてきた。
「この杖は、魔力を増幅するものですよね。S級のアイテムだ」
「そうです。今もこの家を守るのに使っていますよ」
「へ~、そうなんだ」
タクトは目をキラキラさせて杖を見ていた。杖にはピンからキリまであり、増幅アイテムは杖以外にもある。S級モンスターを相手にするよりは、他人からもらったほうが早くて安全だ。タクトに聞いてみた。
「タクトも杖が欲しいの?」
「いやいや、俺には過ぎた物だよ。それに両手が空いているほうが、魔法が使いやすいし」
タクトらしいな。サンドルもその言葉にニコッとした。そこへ、アミンが泣いて帰って来た。コズエが駆け寄る。
「どうしたの!?」
「家から出てきた人が、お父さんを治さないって言ってた」
「どういうこと!?」
アミンが泣きながら話した。
「髪の長い人から、丸いものが落ちたの。それを拾って渡そうと思ったら」
『あいつちゃっかりしてたな。せっかくファンの真似までしたのに、条件を出してくるとは』
『どうするんだ?』
『サンドルを治すもんか。S級魔法使いは俺だけで十分だ』
『お前の他にもいるだろ』
「そう言ってた」
「なんて人達なの!!」
コズエが怒った。シルフォードだけだと思うが……。サンドルがアミンの背中に手を置いて、頭を撫でた。
「アミン。ごめんね、私のせいで」
「うんん」
アミンは首を振った。タクトが不安そうな顔をした。
「魔法使いは、みんなあんなふうになっちゃうのかな」
「そうかも。タクトも調子に乗りそうだから、気を付けたほうがいいぞ」
「そこは、違うよって言ってよ」
「お前はまだ、F級でもないから安心しろ」
「なんか違う~」
タクトがそう言うと、みんなが笑った。
俺たちは明日、また情報収集をし直すことにした。その後、時間があれば村の森に入ってモンスター狩りをすることにした。高原には、ゼインたちの結果を待って登ることにする。
夜にはアミンもすっかり元気になって、俺たちをもてなしてくれた。小さいのにえらいな。コズエが年を聞いたら、アミンはネネと同じ6歳だった。また、ネネを思い出した。
翌日、俺たちは、村にいる冒険者たちに話を聞いて回った。
この冒険者はもう一度入る予定だ。
「エイリアスの花? 白い花なら遠くから見たよ。でもジャイアントベアーがいて近づけなかった。ベアーは近寄らなければ、攻撃しないからな」
「ベアーも攻撃しないんだね」
冒険者の話を聞いてコズエが言った。どうやら縄張りらしいな。これはやっかいだ。俺は聞いてみた。
「じゃあ、どこを探しているんですか?」
「神聖力が高そうなところだよ」
「え? そんなところがあるんですか」
「今のところないね」
冒険者にお礼を言って分かれた。コズエがまた聞いてくる。
「神聖力って何?」
「神の力だよ」
「そんなの分かるの⁉」
「魔力と違うから、魔法使いには分かるんじゃないかな。光魔法は神聖力とも言われている」
コズエはタクトに聞いた。
「タクトも分かるの?」
「んーそうだな。授業でも光魔法に触れることがあったし、こないだユナにしてもらったから、違いは分かると思うよ」
「えっ、すごい!」
「エヘヘ」
タクトは頭に手を置いて照れた。他の冒険者にも聞いてみる。
「エイリアスの花のあたりをみんな掘りたがっているが、掘った奴も何も見つけてないんじゃないかな」
「花はどうなったんですか?」
「さあ?」
コズエの問いに冒険者はそう答えた。
「花がなければまずいな」
「そうだよね。掘り起こされちゃったら、花がなくなるよ」
「エイリアスの花はずっと咲いてるの?」
今が季節? コズエの疑問に俺もあれっと思った。
「そうだな。それをサンドルさんに聞いてみよう」
まだグロット・オーが見つかった話も出てないし、これだけ人がいるってことは、まだ何も見つけてないんだよな。
花を取りに行った人もいない。誰も他人のために早起きしたり、高原で夜を過ごしたりしないよな。
俺たちは花のことを聞くために家に戻った。




