14、グロット・オーの地図
町に戻ると、保存食の店から商品を返すことにした。商品を取り返したことを話すと、店主は驚いていた。
「そんなことがあるの!?」
「たまたま出くわして」
「ありがとう!!」
店主に感謝された。大体片付けは終わっていて、棚を直す職人も来ていた。職人の手伝いもして、商品を棚に戻した。お礼に缶詰をもらった。
次に生鮮食品店に行く。そこの店主も同じように驚いていた。そこも職人が棚を直していたので、同じように手伝った。町の人も見に来ていて、取り返したという噂は町中に広まった。ここでも、お礼に野菜や果物をもらった。
袋の中には、他の食料もまだ少し入っていた。袋は、入れた日付ごとに分かるようになっている。今日より前の物は、違う町で盗った物だろう。それは神殿に寄付することにした。神殿でも歓迎され、その日は神殿に泊まらせてもらうことにした。神殿は困っている人も泊まることができ、その代わり手伝いをすることになっている。
「また神殿に来たわね……」
ユナはぽつりと言ったが、久しぶりのおいしいごはんとベッドに満足していた。ユナとコズエ、俺とタクトが同室だ。
翌日、神官長が祝福の祈りをしてくれることになった。四人で礼拝堂に入り、祝福の祈りを受けた。
「あ~、清々しいわ」
ユナが言った。
「人にしてもらうと、こんなに気持ちがいいものなのね。今までしてもらったことがないけど、こんな風に効果があるのを見たことがないわ。感謝がないとダメなのね。あいつらはやっぱり感謝が足りないんだわ」
口の悪い聖女だな……。コズエはユナの言い方に笑っていた。ユナは、はっきりものを言う変わった聖女だった。
神官長や神殿の人たちにお礼を言って、神殿を後にした。町行く人々が挨拶してくれる。フリオン団の名声が上がったなと思った。きっとおじさんも喜ぶだろう。でもこれって、一人では無理だったと思う。コズエやタクトがいたからだ。仲間もいいなと思った。
町を出て、また森に差し掛かったころ。
「あなたたち、ちょっと待って!」
ユナが声を上げた。振り返ると、ちょっと距離が開いていた。ユナは息切れしていた。
「あなたたち、歩くのが早いわよ!」
「そうか。俺、前は荷物を持たされていたから気づかなかったけど、あいつらは体力がないから、割とゆっくり歩いてたんだな」
タクトが頭をかいた。チェンも細かったし、他のメンバーは女性だったからな。
「コズエも歩くの早いのね」
ユナがコズエに言った。
「うん、体力には自信があるかな」
「いいわね。聖女なんか、全然体力がないのよ」
「そうなんだ。私が横を歩くわ。そうすれば、分かるもの」
「別に急いでないから、ゆっくり行こう」
「ありがとう」
俺とタクトが前を歩いた。
「やっぱり、次の町で置いていって。私もゆっくりしていきたいから」
「分かった」
俺は了承した。コズエは心配した。
「いいの?」
「いいのよ。そこでしばらく稼いでから、大きい街に移るわ。移動の時は、どっかのパーティやキャラバンに付いて行く。聖女だから重宝されるしね」
「なるほど」
(体力があるのは自分にとって普通だったけど、今は良かったなと思う)
コズエとユナは話をしながら歩いた。
「ユナさん、32歳だったの!? 40代かと思った」
コズエ……。うちの副リーダーのクレードと同じ年だな。
「あ、ごめん。またやっちゃった」
「いいのよ。私、昔から老けてたから、気にしてないわよ」
「ユナさんいい人だね。やっぱり聖女だから?」
「そうね。なんで自分が聖女なのか、分からないけどね。アハハ」
軽いな……。
「……でも私が老けて見えるのは、元気がなかったからかも。あなたたちといて、元気が出てきたわ。こんなに落ち着いた気持ちになれたのは初めてよ。
私が神殿に行った1年後には戦争が始まったし、それまでも国は落ち着いてなかったから」
「そうなんだ」
俺はフリオン団ができた経緯を、タクトとユナに話した。
「そうだったんだね」
「あなたたちはそれで親切なのね。自分も大変な目に遭ったのにすごいわ」
タクトは大袈裟に涙を流し、ユナは感心していた。人身売買組織を潰す活動のことは話さなかった。助けた人たちにも秘密にしてもらっている。
(みんな能力やいいところがあっても、大変な目に遭ってるな。この世界に来ないと分からないことだった。
聖女だから誘拐されたユナさん。魔力があっても騙されたタクト。普通だけど体力はあって、なぜか異世界に来た私。一人だけ生き残ったけど、家族がいないシュナ……)
宿場町に着くと、昼食を取るために食堂に入った。四角いテーブルに向かい合って、二人ずつ座る。食事が運ばれてきてみんなで食べ始めると、ユナが話をした。
「ここは良さそうだから、ここに残るわ。もう会えないかもしれないから、タクトに言っておく」
「うん……」
「私は、あんたが突き飛ばしたことを許す気はないけど、忘れることにした。
あなたたちを見て思ったの。年上の私が、何も知らないタクトを助けなきゃいけなかったって。これからはそうやって生きるわ。ごめんね、タクト」
(仕方がなかったかもしれないし、後で気が付くこともある。……でもこれは、二人の問題だ)
コズエも俺も食べながら黙って聞いた。
「分かった」
タクトはぽつりとそう言うと、すぐに視線をそらしてまた食べ始めた。
俺たちのテーブルに、小柄な男が近づいて来た。
「君たち冒険者だろ。グロット・オーの宝の地図があるんだけど買わないかい?」




