表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グロット・オー ~スナープ団をぶっ潰せ!~  作者: 雲乃琳雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/15

13、聖女の話

 遺体から離れた森の中で、ユナから話を聞くことにした。タクトがユナを紹介した。


「この人は聖女のユナだ」

『聖女!?』


 俺とコズエは驚いて大声を出した。聖女は旅に出ないものだ。長旅なのにスカートなのは変だと思っていた。


「聖女がいるなんて珍しい。それで納得だ。聖女は悪いことをすると、光魔法が使えなくなるからな。だからユナさんだけ、盗賊に参加しなかったんですね」


 光魔法は神の力とも言われている。とりあえず年上なので、さん付けにした。


「そうよ。ミンは私には手伝わせなかった」

(この地味な人が聖女? 40代ぐらいかな。なんかイメージが違う……。もっとこう清楚な美女のイメージ。

 さっきの白い女の子は、目つきが鋭くて無表情だったけど……)


 コズエは手を口元に当てて、疑っているような微妙な目付きだった。ユナは俺と同じぐらいの身長で、痩せていて少し猫背。白茶の髪に毛先が不ぞろいのおかっぱ。目の下がやつれていた。


「ユナさん、タクトと別れた後のことを、話してくれませんか」

「分かったわ。ちょっと座らせてね」


 ユナは疲れたようで、草の上に腰を下ろした。


「タクトが逃げてから、すぐにミンは、アビィを踏み台にするために引き倒したの。でも足が上がらないから意味がなかった。アビィはそれで死んだ。まだ17歳だった……」

(ひどい!)


 コズエが口元に手を当てた。同い年だから、ショックも大きい……。


「それからすぐに、ゼインのS級パーティが通ったのよ」

「すごい! 偶然?」(ラッキーじゃない?)

「聖女は神の加護があって、幸運を持っていると言われているんだ」


 俺はコズエに説明した。この話で、本当にそうなんだと思ったけど。

 今、S級パーティは二、三パーティしかいない。S級冒険者が一人以上いればそう呼ばれる。S級のゼインは有名で、俺も名前だけは聞いたことがあった。


「そこに、S級魔法使いのシルフォードがいて、魔法で助けてくれたの。あの沼は泥炭じゃなかった。シルフォードが言うには、タールピットだから底が深くて、魔法じゃないと絶対抜け出せないって」

「タールピットって?」

「俺も聞いたことがない」


 コズエとタクトが顔を見合わせる。俺が説明した。


「油が噴き出るところだって、聞いたことがある」

「シュナは物知りだな」


 タクトは素直に感心していた。俺は6年間冒険者をやっているから、そこそこ知識はある。


「その沼はシルフォードが転移魔法で、人が来ない森の中に移動させて、作った看板も送って立てた。でも道にあったのは不自然だから、移動する魔法現象かもしれないって」

「転移魔法すごい! でも、盗みとかもできそうね」

「確かにすごいけど、転移魔法は目の前の物を、知っている場所にしか移動できない、一方通行なんだ」

「それなら安心か」


 タクトの説明にコズエは納得していた。ユナが話を続ける。


「ミンはゼインのパーティに、仲間に裏切られたと言った」

「えっ!?」


 タクトは動揺する。冒険者の間で容疑者になったようだ。


「それなら被害届を出すように言われたけど、自分たちがお尋ね者だから、それはしていない。でもタクトの特徴を伝えて、見つけたら連絡してほしいって言ってたわ」

「そんな……」

「大丈夫だ。さっきの賞金稼ぎが、兵站に情報を送ったはずだ。冒険者協会にも情報がいくから、ミンたちの正体が貼り出されるはずだ」

「良かった~」


 タクトはほっとした。


「ミンはあんたに裏切られてから、人が変わった。一番近い冒険者の店で、新しい仲間を探してから、探索石であんたを捜し始めた」

「俺は元々仲間じゃない!」

「探索石を使っていたのか。それなら、逃げられないな」

「そうよ。私たちもそれで見張られていたから。

 ミンはアイテムを取らなくなったから、手っ取り早く強盗をするようになったの」


 それで賞金首になったんだな。


「今日もそうよ。あんたがこの道を通った情報が入ったの。南に向かったら、こっちに戻ってくるあんたの反応があった。それで、町に戻って強盗してから、北側で待ち伏せたのよ。

 あの女の子が賞金稼ぎなのは分かったから、私が知りたいことも分かった」


 ユナは話を終えると、ため息をついた。


「私は元は神殿にいた聖女だったの。3年前にあいつらに誘拐されたのよ」

『!』


 その言葉に、三人とも驚いた。ユナは自分のことを話し始めた。


「ミンたちが、ちょっとした傷を治しに神殿に来たの。そしたら、仲間が森にいて動けないから来てくれと言われて、そのまま連れて行かれた。神殿が行方不明届けを出しているはずだから、その時からお尋ね者だったはずよ。こんなに、あっけなく終わるのね」

「監視されていたから、ユナたちがどうして仲間になったのか俺は聞いていない」

「仲良くしていると、裏切るんじゃないかって思われるから、よくしてあげられなかった。

 ミンは、若くて大人しそうな女性ばかり、仲間にしていた。そのほうが扱いやすいから。前の魔法使いは、あんたが思っていた通り、逃げ出そうとしてミンに殺されたの。ミンは気に入らないとみんな殺した。盾にもした。だから何人も入れ替わった。ミンとチェンは仲が良くて、チェンはミンに絶対服従だった。誰も逃げられなかった。

 強盗はしなかったけど、盗ってきた物を食べたから、私も同じね」


 タクトは険しい表情をしていた。そうだろうな。話を聞いても、されたことはなくならない。


(私も少しだけ捕まっていたから、ユナさんの気持ち分かる……)


「ユナさんが、解放されたことを知らせないといけないので、録音石で撮らせてください」

「分かったわ」


 俺は録音石を取り出して、ユナだけを撮る。ユナが話し出した。


「私は3年前、コーレルの神殿から、ミンとチェンの冒険者パーティに誘拐された聖女のユナです。この人たちのおかげで、無事に解放されました。私は神殿には戻りません。以上です」


 ユナの言葉に三人とも驚いた。撮り終えると兵站に送信した。コズエがユナに聞いた。


「神殿に戻らないんですか?」

「ええ。私、ずっと搾取される人生だったから、もう普通に暮らしたいの。

 畑仕事をする体力もないから、14歳から神殿に行ってずっと聖女の仕事をしていたけど、神官たちは当たり前な顔をしていた。感謝されることはなかった。力を使いすぎると、とても大変なのに誰もそんなこと気にもしなかった。

 食べたり寝る場所には困らなかったけど、ただ働きで、自由もなかったのよ」

「大変だったんですね……」


 コズエが気の毒そうな顔をすると、ユナがびっくりした。


「あなた優しいのね。誰も他人のことなんか気にしないわよ」

「コズエは異世界人なんだ」

「そうなの!? じゃあ私が解放されたのは、あなたの幸運だったのね」

「え!?」(そうなの?)


 ユナの言葉に、コズエは戸惑っていた。俺はユナに聞いた。


「ユナさんはこれからどうしますか? 行きたい場所があれば送ります」

「え? あなたも親切ね!」

「フリオン団のシュナです」

「フリオン団! 聞いたことあるわよ。すごく慈善的でいいグループだって。本当にそうなのね。ありがとう。住みやすそうな街まで行きたいわ」

「分かりました。先にプラットの町に戻って、食品を返そう」

「うん」

「分かった」


 四人で町に引き返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ