11、新しい武器
俺はコズエの武器のことを、早速タクトに聞いてみた。
「タクトにお願いがあるんだ」
「何でも言って」
タクトは親指を立てて、ウィンクした。
「コズエの持っているラケットを、武器にしてもらえないかな。魔力があるみたいだけど、今のままだと強度が弱いから。石や玉を打てるようにしてほしい」
「見せて」
「うん」
コズエはカバンからラケットを取り出して、タクトに渡した。
「変わった形だね。本当だ、魔力がある。すごいね。さすが異世界の武器だ」
「いや、それ武器じゃない」(叩いてもあんまり痛くないし)「向こうの世界は魔法がないから、こっちに来た時の影響だと思う」
「そうなんだ。シュナは魔力が分かるの?」
「うん、少しキラキラして見える」
「え? すごい。普通見えないよ! 俺は分かるだけ」
「俺、海に落ちてからそういうのが少し見えるんだ……」
生死を彷徨ったからだろうか? 二人とも少し気まずそうだった。
「そうか……。魔鉱石はある?」
「いや持ってない」
「じゃあ、今はこれが傷がつかないように、強度を増す魔法をかけるよ」
「助かる!」(石なんか打ったら、ボロボロになっちゃうもんね)
タクトが両手をかざすと、エメラルドグリーンの魔法陣が出て、ラケットが光った。光が消えると、ラケットがつるんとして見える。
「強化魔法と保護魔法をかけたよ。これで、スピードが出るし、固い物も打てるよ。物理攻撃なら防御もできるし、魔鉱石があれば、属性防御を付与できるよ」
「本当に!? すごい。お礼はどうしたらいいの?」
「そうだな。今度デートしてよ。お金はないけど」
タクトはウィンクした。
「おい。俺がお金を払うから。そういうのはやめろ」
コズエはもう聞いていない。ラケットに夢中だった。素振りをしている。空気を切る音がすごい。それから、左右に拾うような動きを見せた。コズエの守備範囲の広さに驚いた。本当に運動神経がいいんだな。
「なんか言った?」
「トホホ」
コズエの方が一枚上手だ。さすがコズエ。タクトが肩を落とす。俺はフンッと鼻息で笑った。
ラケットをしまうと、また歩き始めた。
「当たると発動する、魔法属性の玉を作るといいかもしれない。簡単にできるし、触ると何の玉か魔法が教えてくれる」
「それいいね!」
二人は夢中で話していた。
「タクトは何歳なの? 私は17歳だよ」
「俺は16歳」
(一つ下か。また弟が増えたな)
「俺は15歳だ」
「えっ? もっと年下かと思った」
ガ~ン。ショックを受けた俺を、コズエが見ていた。
(シュナがダメージを受けている)
「しっかりした子だな~と思ってたよ。捜してた時、みんながシュナのことを知ってた」
「どうやって、シュナを捜したの?」
「始めは普通の店の人に聞いたんだ。そうしたら、冒険者のことは装備屋か旅人に聞くといいって言われたんだ。それで、装備屋で聞いたら、シュナはフリオン団の一員だって知って、あとキャラバンの人から、シュナがバリントに行くって聞いたんだ」
「ああ~。なるほど! それでこちらに向かってたのね」
「うん」
「俺は取引をする人には信用されるために、ちゃんと名前を言うようにしているんだ。それにこうやって、他の人にも居場所が伝わるだろ」
「なるほど」
「そうなんだね」
二人はうなずいた。これは、おじさんがやっていたことだけど。
宿場町に到達したが、昼食だけ済ませるとすぐに出発した。タイミングが合わないので今日も野宿することになる。街道脇の森に入って準備をすると、タクトは楽しそうだった。
「あいつらは、俺が一人立ちできないように、何も教えてくれなかったんだ。シュナといると勉強になるよ」
「火起こしもしてみるか?」
「うん!」
「魔法で付けられるよね」
コズエが聞いてきた。タクトが指で顔をかきながら説明する。
「モンスターは魔力を吸収するから、魔法を使うと引き寄せてしまうんだ。一人だから使わないようにしてた。でも、なかなか火がつかなくて、結局魔法で付けたこともあった」
「そうなの!?」
「うん。モンスターのレベルが高いと攻撃が効かないから、魔法使いは単体で行動するのに向いてないんだ。だから、なるべく宿屋に泊まってた。アイテムもなかなか取れないから、節約してやり繰りしてたんだ」
「魔法使いって意外と大変なんだね。もっと楽かと思った」(魔鉱石で儲けたりとかできないのね。上手くできてるなあ、この世界)
「そうなんだよ~」
二人の話を聞きながら、すごく賑やかになったなと思った。夕食も終わり、俺を真ん中にして寝ることにした。
「え~、俺もコズエの隣で寝たいよ」
言うと思った……。だから俺を真ん中にしたんだよ。
「そのほうが、コズエを守れるだろ」
「……そうだな」
それも一理あるな。俺たちは一つずつ場所をずれた。
「あんまり引っ付くなよ。お前の寝相が悪くて、コズエが怪我したら大変だろ」
「そっか。俺、自分の寝相が悪いか、分からないな」
タクトは姿勢を真っ直ぐにする。
「シュナ」
コズエが小さい声で呼んだ。
「ん?」
コズエはタクトを指さした。タクトは寝ているようだ。
「よっぽど疲れたんだね。すぐ寝ちゃった」
「そうだな」
「シュナに会えてうれしかったんだよ」
「そうかな? コズエと楽しそうに話してたけど」
「そうだよ。シュナは用心してたでしょ」
「うん」
もしかしたらタクトは、俺に気を使ってコズエと話していたのか。
「シュナは年下だけど、私たちのお兄さんみたいだよね。頼りになる」
「……」
ふと妹のことを思い出した。
「俺、妹がいたんだ」
妹は6歳だった。小さかったネネ。涙が目の横を伝った。
「あっ、ゴメン思い出させて」
「いいんだ。……思い出さなきゃいけないんだ。きっと」
ずっと忘れていたから。俺は指で涙をぬぐった。




