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グロット・オー ~スナープ団をぶっ潰せ!~  作者: 雲乃琳雨


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10/15

10、うれしい再会

 町を抜けると、畑や民家が点在していた。今までと違う風景だった。


「ここからは、砂漠はしばらくないよ」

「そうなんだ」(今までと違って、のどかな感じだな)


 街道には、お店も点在していた。村の人も利用するからだろう。この先に宿場町もあり、宿泊や食事ができるから助かる。今日は宿場町までは行けなかったので、街道沿いの雑木林で野宿した。


 翌日、街道を歩いていると、前から手を振ってくる奴がいた。


「お~い、シュナ!」


 突然、名前を呼ばれた。聞き覚えがないな。黄色ベージュの短く刈り上げた髪に、面長の顔、黄緑がかったグレーの瞳。マントを着てリュックを背負って旅姿だ。誰だ?


「会いたかったー!」


 そいつに突然抱き着かれた。——そうだ、思い出した。


「タクトか!」

「そうだよ。覚えていてくれてうれしいよ!」


 ほぼ忘れそうだった……。明日だったら覚えてないかも。タクトはコズエを見た。


「こちらは、お仲間かい?」

「それに近いけど、異世界人のコズエだ。神殿まで案内している」

「異世界人!? 初めて見た!」

「はじめまして」

「君、女の子なんだね。はじめまして」


 コズエは固まった。タクトは握手で手を出した。俺はそれを遮る。


「コズエ、知らない男とは握手しなくていい」

「そんな、冷たいなぁ。俺は、お前に会いたくて捜してたんだぞ」

「なぜだ?」


 理由がないので、俺はちょっと警戒した。抱き着かれるほど歓迎される覚えもない。


「俺、あの後参加したパーティに騙されたんだ。……散々な目に遭って、やっと逃げ出したんだ。それで、今度組むなら、お前がいいなって思って……。シュナはフリオン団の一員だろ。旅をしながら評判を聞いたんだ。なんであの時、一緒に行かなかったんだろうって後悔した。俺、見る目ないよな……」


 タクトは肩を落とした。


(悪い子じゃなさそうだけど……)

「歩きながら話そう。行く先は、どこでもいいんだろ?」

「ああ! ついて行くよ! どこまでも」

「……」


 三人で歩きながら、タクトの話を聞いた。


「シュナと出会った時は、学校を辞めたばかりで、冒険者になろうと思ったんだ。でも、パーティに入らないと冒険者証がもらえないから、広場で仲間を探していたんだ」


 タクトと出会った場所は、学園都市モーリアの冒険者協会本部前だ。本部前は広場になっていて、仲間探しや、情報交換ができる場になっていた。魔法学校も近くにあり、季節的に学校を辞めた魔法使いがパーティを探していた。


「そこへ、ミンとチェンのカップルのパーティから、声をかけられたんだ」


『あなた、学校を辞めたばかりでしょ? パーティを探しているならうちに入らない? ちょうど魔法使いを探していたのよ』


「他にも二人いて、ミンが言う条件も良かったから、そこに入ったんだ。でもそれは全部嘘で、俺は冒険者証ももらえないまま街を出ることになった」


『俺、まだ冒険者証をもらってないんだけど』

『ゴメン急いでるから、先に街を出るわ。次の町にも冒険者の店があるから、そこでもらってあげる』

『分かった』


「俺は無知だった。街を出たとたん、俺は荷物を没収された。逃げないように重い荷物を持たされて、他の二人に監視された」


『どういうことですか!?』

『いいから黙ってついてくるんだよ。逃げようと思っても無駄だよ。探索石があるから、お前のことは登録した』

『助けてください』


「他の二人を見たけど、目も合わさなかった。その二人は俺がいなくなれば、自分がその役をやらされると思ったからだ。あいつらは初めから、《《何も知らない》》魔法使いを捜していたんだ。それからずっと、タダでこき使われた」

「ひどい!」

「ありがとう、コズエ。異世界人はやっぱり優しいね」

「どうやって逃げたんだ?」

「ああ、それは神の助けか、森を歩いている時に、道に底なし沼があったんだ。枯葉が落ちていて、初めは黒い水たまりだと思った。先を歩いていた、ミンとチェンが最初にはまった」


『なにこれ! 沈んでいくわ! タクト、早く魔法で助けなさいよ!』

『すごい臭いがする。これは泥炭じゃないのか!?』


「俺はチャンスだと思った。荷物を降ろすと、前にいたアビィとユナを突き飛ばして底なし沼に落とした。それから、荷物を持って逃げたんだ」


『タクト! あいつ逃げやがった。覚えてないさいよ!』


「俺は振り返らなかった。そうしないと、もう逃げられないと思った。それから、あいつらの荷物を売って資金を作り、シュナを捜したんだ。

 ——俺、まだ学校の借金を一回も返してないんだ」

「借金!?」


 コズエが驚いた。俺が説明する。


「魔力がある子供は少ないから、国が強制的に魔法学校に入れるんだ。授業料は後払いになる」

(奨学金と同じね)


 タクトが借金の続きを話す。


「俺も13歳になる年に、村に兵士が迎えに来て、魔法学校に連れて行かれたんだ。

 学校にいればいるほど借金がかさむから、大体の子は特待生になれないと3年で辞めるんだ。国が欲しいのは、6年から9年間学んだ魔法使いだけ。

 3年で辞めた奴が一番稼げるのは、冒険者になって野良に出ることなんだ。

 生徒は辞める時に、学校からお金を借りて装備を整えることができるけど、それも借金になる。助かるけどね……」

「そうなんだ」(これが野良の魔法使いってことか)

「俺のこと信用できた?」


 嘘はついてなさそうだな。ただ、タクトが冒険者に向いているかは別の話だ。故郷の村に帰っても、魔法使いの仕事なら授業料は十分返せるはずだ。


「そうだな。でも、団に入れるかは、しばらく様子を見てから決める」

「わ~い、ありがとう!」

「よろしくね」

「うん」


 コズエが挨拶すると、タクトはコズエにまた手を差しだした。コズエも握手した。この二人、やっぱり似てる気がする……。


「コズエ、男の中には、女の子の手でも触りたい奴がいるんだ。気を付けないと」

「えっ!」

「そんなよこしまなこと考えてないよ!」

「なら、手を放せ」

「あ、ごめん」


 タクトはコズエの手をパッと離して、顔を赤くしてつぶやいた。


「俺、ずっと誰にも話せなくて。……やっと、話を聞いてくれる人がいて、うれしかったんだ」


 また旅の仲間が増えた。


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