プロローグ
後に『ノヴァリス建国記』と呼ばれる史書は、その最初の頁にこう記している。
聖暦元年。人類会議にて、勇者は剣を置き、宣言した。
「私は魔王と共に、新天地での建国を宣言する。
和睦を受け入れるのであれば、互いに不可侵の条約を結ぶ用意がある。
だが、受け入れられぬのであれば――その時から、私と魔王、すなわち世界の二大最高戦力が、お前たちの敵となると知れ」
それは、勧告であった。
人類側には、勇者と魔王という“二柱の最強”に抗う術などない。
そのことを、誰よりも当事者たちが理解していた。
それでも、ある国の代表が声を荒げる。
「貴様……無事にここから帰れると思っているのか?」
勇者はゆっくりと、どこからともなく美しく、白い”刀”を取り出し
無言のまま、円卓の代表たちを一人ひとり見渡し、
そして、低く、静かに言った。
「――私がその気になれば、二秒でこの場にいる全員を皆殺しにできる」
それきり、彼は刀を収め、背を向けて議場を去っていった。
各国の代表者たちは、その背中を――ただ、黙って見送るしかなかった。
これは、圧倒的な力を持ちながら、あえて平和を選んだ二人による、
新たなる国の誕生と、その記録である。