フライングたぬき
大空を舞う色とりどりのハングライダーを見上げ、呟いた。
「俺も大空を飛んでみたいな」
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最初の異変を見つけたのは、冬が終わり雪が無くなった山道をドライブしている人たちだった。
繁殖時期に入った筈のたぬきの大移動。
アチラコチラの山々や街の中から多数のたぬきが、その地域で1番高い山を目指して移動していた。
何かの天地異変の前触れなのか?
だが移動しているのはたぬきだけ、他の動物たち、きつねもウサギもシカも何ら変わった動きを見せていない。
たぬきも移動しているのはオスだけ。
何が起きているのか? たぬきの生態に詳しい生物学者や動物園の飼育員が首を傾げる中、近くの山々や街の中から集まって来たオスたぬきの一群は高い山の上に集結。
色とりどりのハングライダーが山の斜面を駆け次々と飛び上がるのを見上げていたたぬきの一群が、突然走り出し高い山の崖から身を躍らせた。
高い山の上に集結していたたぬきの一群を見守っていた生物学者や報道関係者などの目の前で、たぬきが次々と崖から飛び降りる。
目を見開き驚愕の表情の生物学者や報道関係者の目に映ったのは、大空を舞う色とりどりのハングライダーに混じって大空を飛ぶ、大小のたぬきの一群の姿。
たぬきたちは自分の股間の袋を両手両足で大きく広げ、大きく広げた袋に風を受け大空を舞っている。
大空を舞っているたぬきたちは幾つかの小さなグループに纏まると、それぞれの住処かある山々や街の方向に向けて飛び去って行った。