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夏のホラー2024『学校に住み着く霊の噂』

作者: 黒豆100%パン

「ねえ知ってる?あの噂」




夏の暑い日、学校の教室内で、長い黒髪の少女、久遠朱音(くおんあかね)は友人の瑞希にそう言われて橋本瑞稀の方を見る。

瑞稀はクラスメートの親友だ。この手のオカルト話がとにかく好きで、色々とそのような噂話を集めているんだとか。



「この学校に住み着く霊の事」



「ああ聞いたことある、この学校にいる成仏できない霊がこの学校を彷徨ってるっていう」



「へえー、そうなんだ」



それはこの学校に伝わる有名な噂で、数年前に命を絶った1人の少女の霊が自分がもうこの世にいないと気付かずに今も彷徨っていているのだと言う。その少女はずっとひとりぼっちで事あるたびに会話している輪の中に入ったり、イタズラをしたりして気を引こうとするらしい。



「なんの話してるの???」*



そこに入ってきたのはメガネの短髪の少女。彼女は同じクラスの美玲という少女で、彼女は朱音達の話に興味津々だ。



「霊の話、それ本当なの!?」



「しかも近くにその霊がいると、周りの温度が下がるって聞いたよー」



「何それ怖ーい!でも本当にそんな人いるの?」*



「そんなの所詮噂みたいなものだし、そんなのいるわけないと思うけど」



「だよねえー」*



そう言って美玲がほっと胸を撫で下ろす。



「そういえばこの教室涼しくなったわね。エアコンが直ったのかしら?」



「ならさ、その噂の霊とやらを、見つけに行こうよ!」



「えぇ...やめようよー!」*



「絶対にやめた方がいいと思う。なんか危なそうだし」



美玲の後に朱音も否定する。だが瑞稀はやる気満々と言う感じでおそらく朱音が行かなくても勝手に行くだろう。


「...もうわかったよ。瑞稀が行くなら私も行く」



「え?行くの!?」*



「瑞稀だけじゃ心配だし」



「さっすが朱音わかってるぅー!」




「じゃあ私も行くよぉ」*


美玲が弱々しくそういうと、瑞稀は「じゃあ夜にまたここに集合ね!」とウキウキ気分で言うのだった。




夜になり外は真っ暗になった学校はより一層不気味さを増している。朱音は門の前で瑞稀を待った。その装いは制服とは打って変わって黒いTシャツに薄手の半袖パーカーと言うラフな格好だ。



「お待たせ!」



「瑞稀遅い!」



「ごめんごめん!」



「私もいるんだけど...」*



そう言いながら美玲も後ろからひょっこりと現れる。



「よし朱音もいるし安心!じゃあ行こうか」



2人は夜の学校へと進入して行った。風が囁き校庭の木が不気味に揺れている。下駄箱を通り、廊下をウロウロとする。薄暗い廊下を懐中電灯1つで進むためさらに不気味さは増して行く。

すると、その時だった。突然バリーン!!と何かが割れる音がする。2人は驚きその音がした教室に向かうと、ロッカーの上に置いてあったと思われる花瓶が割れている。




「ポルターガイストって奴だよこれ!」



「ポ、ポルターガイストって...?そんなわけないと思うけど」*



「きっと倒れやすい位置に置いてあって割れたんだよ」



「絶対ここに何かいるんだ!!」



「そんなあ...もう戻ろうよ」*



さらに向こうから何やら「ウォォォォォォ..」と言うような変な唸り声も聞こえてくる。


「本格的に霊の登場かな?」


「ちょっと怖いこと言わないでよ...」*



「さあ行くよー!」



瑞稀は興味津々で進むのを朱音は後を追う。その声の主をしばらく探していると向こうで何か光が見えた。



「何!?」



「まずい、隠れよう!」


咄嗟に近くの教室に飛び込み、息を潜める。向こうからカツ...カツ...と歩いてくる音が聞こえてくる。



「なに..?」



「しっ...!声出さないで!」



「こ、怖い早く帰りたい...!もう帰ろうよ 

!」*



美玲もその声と連動するかのようにどんどんと足音は近くなって行く。そしてしばらく息を潜めているとその足音は小さくなって行った。



「ふう...」



「行った?」



「うん」


その言葉に一同は安堵する。何か知っている朱音は説明をし始める。



「あれは霊じゃなくて宿直の人だよ。夜になると懐中電灯を手に不審者がいないか警戒してるんだ」



「今なら不審者は私たちね...」*



「動きが完全に不審者っぽいよね」



「まあ確かに」



「宿直の人に警戒しながら行こう」



「うん」



朱音と瑞稀は先に進む。だがいくら探しても霊的なものはいなかった。朱音達は校舎の裏まで探索を進める。



「そう言えばこの辺まで来ることなかったよね」



「確かに...もしかしたら何かあるかも!」



「ねえ、あれ何!?」


朱音が指差した先には何かがある。それは花束だった。そこには新聞の切り抜きも置いてある。それはこの学校で少女が命を絶ったと言うものだ。



「えーっと...井上..美玲?」



「ここにこんなものがあったのね...」



「ねえ、もうこんな事やめない?」



「うん、そうだね」



2人は何かを察して去って行く。その様子を見ながら後ろで美玲は「やっぱり...」と呟いた。


「私はもう...この世には居なかったのね。だから2人とも私に話かけてもくれないし私に反応すら示さなかった...でも...楽しかった」



そう言って美玲の霊は成仏していった。











「ねえ朱音何それ」


次の日、登校してきた朱音が花束を持っているのを見た瑞稀は不思議そうに言った。



「ああ、これお供えしようと思って」



「私も行く」



「うん。一緒に行こう」



カバンを置いて朱音達は校舎の裏側に向かった。






霊であった美玲は最初から話題の中に入っておらず、朱音達にも見えていなかった。なので一見3人で話しているように見えるが美玲のセリフ(*がついているもの)を飛ばしても問題がない


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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、ずっと米印が気にはなっていましたが、幽霊もしくは幽霊が取りついているという意味ではなく、そもそも台詞自体が存在しない、幽霊である、という意味だったのですね! [一言] 文章を使っ…
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