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ある日の缶コーヒー

作者: ぶぶ

彼は苦笑いをしながら言った。

「もういいんです」

私は涙を堪えながら首を横に振る。

「そんな事言わないで」

日差しが降り注ぐ心地の良い朝、私はうっすらと目を開ける。

「あ〜、起きたくない…休みたい…」

誰もが一度は思ったことがあるのではないだろうか。しかし、そうもいかないのが社会人だ。重い体を起こし、いつもの様に支度をして会社に向かう。

「おはようございまーす…あれ?」

社内の雰囲気がいつもと違う、そう感じた私は同僚に

「なんか空気重くない?」そう尋ねた。

「あんた聞いてないの?あの子がまた昨夜やらかしたのよ」

呆れた顔で同僚が言う。

同僚の言う"あの子”とは3つ後輩のいつもオドオドしている男の子。

「あ〜、なるほど…」私はすぐに納得した、それほど問題を起こす常連さんなのだ。

しかし先輩なのでフォローも忘れない。すかさず渦中の彼の元へ行き「大丈夫だよ、誰にでもミスはあるから!あまり気負わないでね!」

そう言うと彼は「…はい……」と小さな声で頷いた。

「今日も一日終わった〜!」

彼のフォローで遅くまで残業していた私は仕事が終わるといつの間にか社内に一人になっていた。

帰る前に一服しようと缶コーヒーを買って屋上に向かうと、そこには今にも飛び降りそうな彼がいた。

「え?! ちょっと!何してるの?!」そう言いながら彼の元へ走った。

「来ないでください。僕はもう死んだ方がいいんです」私の姿に驚きながらも彼は俯きながら言った。

「ちょっと待って、何でそうなった?」

「僕は典型的なダメな人間なんです」

「そんな事ないよ!毎日朝早くに来て頑張ってるじゃん!」

「会社にも先輩にもいつも迷惑かけて…家族にも見放されて…もう生きてる価値なんてないんです」

「迷惑なんてみんな、周りにかけながら生きてるんだよ?それに迷惑と思うかはその人によって違うの。私は君のこと迷惑って思った事なんて一度もないよ!生きる価値だってある!」

「ハハ…先輩はやっぱり優しいですね……でも、もういいんです、これでやっと解放される」

「やめて、そんな事言わないで」

私の言葉は届かなかったのだろうか。

彼を救えなかった私こそダメな人間ではないのだろうか。

自問自答しながら会社と家の行き来のみで過ごす日々。

「もう疲れたなぁ…」

私はあの日以来、足を踏み入れていなかった屋上へ缶コーヒーを買い向かう。

カシュッ、ゴクゴク

「あ〜、ハハ…これで私も解放されるかな」

カランッ…


下野さんと巽さんのラジオを聴き、10年前くらいに知人に手相を見てもらった時に、文章を書く仕事をしなさい。と言われたのを思い出し初めて書いてみました。小説は今までまったくと言っていいほど読まない人生でしたが、書いてみると楽しく30分程で書き終えました(笑)これから勉強も兼ねて色々な小説を読んでいきたいと思います。下野さん、巽さん、スタッフの皆さん小説に触れる機会を下さりありがとうございました。

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