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35 『テセンテ村の少女ミモザ その1』

月1回ペースだけは死守しつつ、出来るだけ更新はしておきたいので。

書き上がったので更新させてもらいます!

 北端最果てのスノータウンより、比較的栄えた村テセンテ。

 村の広さもさることながら、人口もスノータウンの倍以上はあった。

 テセンテには、村人以外にも旅人や行商人が出入りしている。

 確かにニコラが言った通り、この村はスノータウンより圧倒的に賑わっていた。


 村の雰囲気はスノータウンと大差ない。建物の造りがそれを証明していた。

 スノータウンの隣町というだけあって、ここもまた冬が長い土地である。

 雪が降り積もっても、その重みに耐えられるように出来た石造りの壁と、屋根に積もった雪が地面に落ちやすくするように三角形で出来ている。

 村中が雪で覆われた時には、どこにどんな家があるのかわかるよう、壁に塗られた色は原色のペンキで色とりどりに塗られている。

 スノータウンではそこまでカラフルな印象はなかったが、観光客や他所から来た人間の興味を引く為だろうか。

 その甲斐あって付いた村の別名が『ビビッドタウン』だと、ニコラが教えてくれた。

 鮮明で強烈な色合いをした村、その勢いの有り様を別名で例えたという。


「確かに、スノータウンに比べたら……別の意味でも賑わっていますね」


 人々の往来すら倍以上……。

 しかしビビッドカラーな建物と雰囲気に圧倒されたルーシーは、人の多さよりむしろそのカラフルな派手さと、それに負けず劣らない村人の活気そのものにスポットを当てて感想を述べた。


「面食らったかい? まぁスノータウンとはまた一味違った村ではあるが、魔女に対する気質は変わらないから安心するといいさ。さて、旅に出てまだ半日といったところだ。特に買いたいものもない。……初めて来た村でルーシー、お前は何かしたいことがあるかい?」

「えっ? したいこと、ですか?」


 突然問われ、ルーシーは慌てて考える。

 他人との交流に積極的になれるわけがないルーシーは、この村で一体何がしたいか。何が出来るのかを必死で探すが、そんなすぐに思いつくはずもなく。


「……ひとまず、ぐるりと村の中を一周してみたい……です」

「それじゃあまずは宿に行って、部屋の手配とロバを預けようかね」


 ルーシーの言葉に、ニコラが即座に計画を立てる。

 先ほど言ったように出発してから、まだ半日しか経っていない。

 それなのに、もうこの村で一泊するのだろうか。旅慣れしていないルーシーは疑問に思う。

 そして例の如くニコラがルーシーの表情を察して、説明不足だった部分を補足した。


「荷車を引かせたロバ付きで、村の中を散歩する気かい?」

「あ、確かに……」

「それにテセンテを出たらしばらく、徒歩で次の町に辿り着くまで約二日はかかっちまう。このまま出発してもいいが、そうすればすぐに野宿になるよ。ペースが落ちれば野宿二回で済むところが、三回になりかねない。それにこの辺りは行商人や旅人を狙った盗賊、狼なんかが出るからね。野宿の回数は出来るだけ少なくしたいんだが、ルーシー。お前はどうしたい?」


 知らなかった。気付かなかった。

 テセンテから次の町までどれほどの距離があるのか。

 そうだ、自分達は長い旅をしていたんだ。

 以前の魔女の夜会のように、空飛ぶホウキでひとっ飛びして、すぐ帰るような用事じゃなかった。


(先のことを考えて行動しないといけない。私はただ、お師様について行くだけだから考えもしなかった。この村で過ごした後にも、まだまだ旅は続くのよね……)


 右手を軽く握り拳にしながら口元に当てて、思考を巡らせるルーシー。

 自分の浅慮さに多少の苛立ちを覚えながらも、ニコラに教えてもらったことなどを頭の中で繰り返し記憶する。

 そうしている間、ルーシーはほんの数秒だけ周囲のことが見えなくなる。


「氷結の魔女様! お久しぶりです!」


 そんな声が聞こえて、ルーシーは飛び上がるほど驚いた。

 ここはスノータウンとは隣村であり、親交もある。

 知らないわけがないのに、ここでニコラの二つ名が呼ばれる可能性をどこかで排除していた。

 見ると全身黒一色の衣服に身を包み、頭にはツバの長いとんがり帽子をかぶっている。

 淡いピンク色の髪は帽子から細い三つ編みとなってひょっこりと出ていた。

 一見すると魔女かと思われるような少女が、輝くような笑顔でニコラに駆け寄って来る。

 背格好や見た目から、恐らく遠来の魔女システィーナと変わらない年齢だろうと察した。

 

「あぁ、ミモザか。そういや久しいね」


 面倒そうな表情、口調で返事をするニコラ。

 これはスノータウンにいた時からそうだったが、それよりも……いつにも増して気だるそうな雰囲気に感じられるのは気のせいだろうかとルーシーは不思議に思った。


「私ね、今ね、薬草学にハマってて! 今では薬草を煎じてお薬を作れる位になったのよ! すごいでしょ!」

「ミモザ、お前まさかそれを自分以外の連中に与えていないだろうね?」

「? どうして? ちゃんとした完成品だよ? ちゃんと効果抜群だって、みんな喜んでるもん」


 まっすぐな瞳で、何も悪いことなんてしていないという笑顔のままで。

 ミモザと呼ばれた少女は、首を傾げて聞き返した。

 それを見たニコラは頭を抱えるようにして、大きく……深くため息をつく。


「ルーシー、悪いが懸念していたことが起きたようだ。ちょっと寄り道するけど、いいかい」

「え? 別にそれは構いませんが」

「ええええ? もしかしてウチに来てくれるんですか!? 伝説の魔女と呼ばれた氷結の魔女様が、私のウチに来てくれるなんて奇跡だわ!」


 伝説の魔女、という言葉にルーシーは軽い衝撃を覚えた。

 確かにニコラは魔女としてはかなり高位だと思われる。それは以前参加した魔女の夜会で、目の当たりにしたことだから。

 他の魔女に引けを取らない実力、その強さをルーシーは見てきた。

 しかしこのミモザの態度から、ルーシーは少しばかりの違和感を覚える。

 やけにニコラのことを尊敬している、と。

 確かにスノータウンでもニコラは人気者だった。しかしそれとはまた違う、信仰に近いものをルーシーはミモザの態度から感じ取っていた。

 嬉しそうにニコラの手を引っ張ろうとするミモザに、両手を上げて拒絶する。


「落ち着きな。私達には私達のすることがある。それが終わったら、お前の家に行ってやるから。それまで大人しく帰って待ってな」

「はぁい! わかりました! お待ちしていますね、氷結の魔女様!」


 両手を自分の両頬に当てて、可愛らしさをアピールするミモザの仕草にルーシーは少しばかり寒気がした。

 スノータウンにミモザのようなタイプの女の子がいなかったせいか、どこかしら自分とは圧倒的に真逆のタイプの人間だと強く肌で感じる。

 自分に自信があり、自分が可愛いという自覚がなければ、まずこんな仕草は出来ないだろうと思ってしまう。

 それとも自分の師であるニコラを取られそうに感じて、その嫉妬や焦りからそんな風に思ってしまうのだろうかとルーシーは反省した。


 それでもニコラの態度は相変わらずで、見知らぬ土地にルーシーを一人置いていくわけにいかないと、一緒に宿まで歩いて行く。


「出入りの多い村だからね。この時間でもまだ空きがあればいいんだが……」


 独り言のように、ニコラはぼそりと呟いた。

この作品はweb小説向けではないのかもしれないですが、もう少しテンポよく書かないといけないなと毎回反省しております。


それからハイファンタジー(剣と魔法でバチバチ展開)要素が私の解釈と少し違う気がしたので、ジャンルを再び文芸に戻しました。


内容が変わるわけじゃありません。

今後もよろしくお願いします。

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