正解なんぞないので最善をだそうね。
「つ、捕まえたら1000万円!?」
「ちょっと難しいかもしれないけどやるしかない!」
「私は5000円だけでいいかな……。」
「いくぞおらぁぁぁぁ!!!!!!」
「……捕まえて校長室という牢にぶち込めば賞金、か。
単純にまとめればそうなるけど、ちょっと難しそう……。」
「そうだな、第一、生徒の数が多いというのに、
相手がたったの8人となると、集団で向かえばすぐ終わりそうだが……」
食堂にいた生徒の大半がロゼを探しに外へ出る中、
俺たちは、まずクエストの詳細を元に考察をしていた。
どう考えても一筋縄ではいかないことは確かなのだが___
「問題は相手がどんな力を発揮してくるかですね。」
「おう一柳、切り替えが早くて助かる。」
起こした時は眠そうであった一柳は、
スマホの動画を見終わった時には目がぱっちりとしていた。
隣にいるカイトはまだ少し眠そうではあるが、致し方ない。
もうやることは決まってしまったのだから。
「ところでこいつはカゲマルだ。友達が欲しい女子生徒。」
「よろしくね〜!!」
「さっそくだが、俺たちもロゼを探しに行くぞ。
相手の能力とか、どういう手を使ってくるかは、
先に向かってったやつらが体を張って教えてくれるだろうからな。」
「なるほど、先陣を切らせた彼らに犠牲になってもらうのですね……!」
「ああ、そういうことだ……くっくっくっ……。」
俺と一柳は悪い顔で笑みをうかべていた。
うん、俺でもわかる。俺って結構クズだよな。
「えーっと、僕もいかなきゃなのかな……。」
「ああ、もちろんだともルームメイトのカイトや。
なぁに、安心してくれ。俺たちが捕まえたら3人で山分けする。
山分けできない分は食堂で打ち上げ代として使えば問題ないだろぅ?」
「あ、いや、お金とかじゃなくて……。
もし怪我とかしたら、どうしようと思って……。」
「軽率に怪我しそうなぐらい危なければ、
すぐに撤退し、安全面を重視して行動してほしい。
怪我なんてしたくもないし、痛いのは俺も嫌だからな。」
「それに〜、命がなきゃお金なんて使えないからね〜。
ところで私の分け前はない? 一緒に協力するから欲しいな!」
カゲマルは俺の肩に自分の顎を乗せて言った。
金に目が眩んでいるように見えるが、そうでないことを祈ろう。
カイトの不安そうな表情が和らいできたところで、
俺は全員に提案を持ちかける。
「この学園はかなり広い。集団で見つけるより、
単独行動で捜索し、発見次第報告の形をとりたい。」
「確かに、その方が効率がいいですね。」
「私も賛成〜!」
「ま、まぁ、探すだけなら……。」
俺はポケットからスマホを取り出して起動。
アプリが表示されている画面から指で横にスワイプし、
スマホの電話画面を開いて仲間たちに見せる。
「このスマホは電話ができるようになっている。
これで連絡を取って奴の場所と、そいつの特徴を教えて欲しい。」
「えっ、電話できたんですね……。」
「了解ですレイトさん、レイトさんの電話番号は……。」
「ああ、ちょっと待ってくれ。今から俺がスマホを振る。
そしたらみんなもスマホを振って俺の連絡先を受けとってくれ。」
……と、俺は全員のスマホの連絡先を入手し、
みんなには俺の連絡先が行き渡った。一応、全員の画面も確認した。
便利な時代になったものだよな。振るだけで連絡先を交換だなんて……。
ん? いや、なんだか普通な気がするが……? まぁいいか……。
俺は席を立ち上がり、食堂の出口を指差す。
「よっし、全員、いくぞ!!」
「「「「おー!!」」」
そんなわけで、俺たちはロゼを探しに学園を探しに行った。
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「AHAHAHAHAHAHAHA! 全 速 前 進 ダッ!」
「ああ、いましたね。」
「普通にいるもんだな。……なんだこりゃ。」
学園のグラウンド。入学式の壇上にいた少女は、
砂埃と笑いを上げながら、全力疾走をしていたのであった。
「おらおらおらぁ!!! 遅いぞ貴様ら!!!
そんなことで真の主人公の名は語ることはできんぞ!!!」
「走りながらあれだけの大声を出せる肺活量、強敵ですね……。」
「もしあのまま捕まえなかったら、
奴は10時間走ることになるんだろうか。」
「それにしても、追いつけなさそうですね……。」
ロゼを追いかける生徒との距離の差は、もはや奴の思い通り。
そのスピードを例えるとするならば、超進化したゴキ○リである。
速さだけでなく、立ちふさがる生徒や障害物を避ける機動力もある。
異次元の速さを見せつけられた俺は、少々苦笑いを浮かべてしまった。
「……ま、まぁ、なんだ。あれはたぶん囮だろう。
わざわざ砂埃を上げて大声で走るだなんて目立ちすぎる。」
「なんだったら、それで私たちみつけましたからね〜……。」
「……よし、こっから捜索を開始するぞ。
俺は校舎の中を捜索するつもりだが、みんなはどうする?」
「え、僕はそうだな……、
体育館とかプールとか、運動系の施設に行こうかな。」
「私はレイトさんを同じく校舎の中へ探しに行きます。
流石に一人では全てを見るのには時間がかかりますからね。」
「じゃぁ私は図書館とか〜、文科系を調べようと思います〜。」
「わかった、ではまた後で合流しよう。」
「うん、またね。」
「はい〜、また会いましょう〜」
「よし、俺たちも探しにいくぞ。」
「ええ、レイトさん。」
カイトとカゲマルと分かれ、
俺たちは校舎の中へと捜索を始めた。
昨日のうちに校舎の中は探索していたため、
何階になにがあるか、というのは頭の中で把握していた。
それに、捜索するにしても先に校舎にはすでに人がいるため、
先にロゼを見つけ出した生徒がいれば、
さっきのアレのように騒ぎで見つけやすくなるはずだ。
「レイトさん、そういえばクエストの動画で、
ロゼは自由なことをしたいと言っていましたよね。」
「ああそうだな……って、なんで一緒についてきてるんだ!?」
「ふぇっ?……あっ、私、つい癖でレイトさんのところに来てました。」
「たった1日で癖をつけるのか一柳……。
それにしても、自由なことをしたい、か……。
そうなると、ゲームとかが置いてあるところに向かえば……、あ?」
「? どうかしましたかレイトさん。」
ふと窓から屋上を見上げると、なにやら人がたくさんいるようだ。
それを確認した瞬間、屋上にいる生徒が一斉に倒れた。
「なっ、急ぐぞ一柳!」
「はい!」
俺たちは急いで階段を駆け上がり、
そのままの勢いで屋上の扉を開けて外へ出る。
「……これは、一体……。」
屋上の扉の前には、多くの生徒が倒れていた。
何が起こってこうなっているのか、そう思いながら生徒を見るうちに、
屋上の奥にいた、布団を敷いてスヤスヤ眠っているロゼに視線がいった。