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ブレック”ファースト”


『 新入学生のみなさんへ。


 おはようございます。昨日は眠れましたでしょうか?

 クエスト開催は10:00を予定しておりますので、

 それまでに食事、覚悟の準備等々を済ませておいてください。

 

 クエストの内容、報酬に関しては、

 10:00になり次第スマホにてお知らせいたします。

 開始時刻までは学園内の散策、生徒の交流など、

 お好きな時間をお過ごしください。


 食堂・購買部・アロディルデコンビニを解放しております。

 朝食を食べたい方は是非、スマホ内MAPを頼りに起こしください。』


そんなスマホのモーニングコール。

俺たちは朝食を食べるため、MAPを頼りに食堂へ向かおうとしていた。

エレベーターを降り、寄宿舎を出て、目的地への道筋を辿る中、

カイトは周りをキョロキョロと見回し、不安そうな顔をしている。


「人、あまりいないですね……。」


「そりゃそうだろ、5時半に起きて6時に部屋を出てんだから。」


「そんな早い時間に出てたんですか僕ら!?」


「寄宿舎にはおそらく、全生徒が寝泊まりしているはずだ。

 そんな中、みんなが起きて一斉に食堂なり移動しようものなら、

 ここら一帯は人混みで溢れかえることになる。

 そうならないために、俺らは早起きしたんだよ。」


「さすがレイトさん、私が見込んだ通りの思考センスです。

 ですが……まだ私は少し眠いですね……。ふわぁぁ……。」


「僕も少し眠いかな……。」


なんて、二人は眠そうにしている。

まぁ、実はこっそり俺一人で学園に向かおうとしたんだが、

朝からビックリしちまったせいで起こしちまったんだよな……。


「ま、朝食を食べさえすれば眠気も覚めるさ。」


「……朝ごはん、なににしよう……?」


「メニューのバリエーションによりますね……。

 レイトさんの好きなカレーライスがあるといいのですが……。」


「ま、あるかどうかは行ってみてのお楽しみだな。」


そんな会話をしながら歩いていると、 食堂にたどり着く。

朝から開いているかどうか心配だったが、普通に営業しているようだ。

俺はすでに食堂を探索している故、実はメニューを知っている。

食券の販売場所も把握済み。カレーライスがあるのも確認済み。

想定外なのは、食券の販売メニューが変わっていることだけだ。


「わぁ……いろんなメニューがあるんですね。」


「カレー……、カレー……、ないですね……。」


「なんで一柳が落ち込んでんだよ……。」


「いえ、私もカレーが食べたかったのです……。」


「そうか……すまん。」


俺と好きなものを食べたいのかと思っていたが、

どうやら、そういうわけでもないらしい。

一柳は迷わず、発券機の『オムライス』のボタンを押していた。

オムライスの券を発券機からとり、食堂の受付に渡しにいく。

受付には食堂によくいそうなオバちゃんが控えており、

食券を渡そうとしている一柳に、笑顔で迎えている。


「……あれ? 一柳さんお金いれてました?」


「いや、そもそもこの発券機にお金を入れるところがない。

 メニューの下には値段の表記があるが……まさか後払いなのか?」


「一柳さん、もうお金持ってるんですか……!?」


「ええ、持ってますよ。」


受付から帰ってきた一柳は、

トレーにオムライスを乗せて帰ってきた。


「……オムライスできるの早くないか?

 っじゃなくて……持ってるって、いつ手に入れたんだよ。」


「今さっきですね。スマホにお金が入ってきました。

 レイトさんたちにもお金が入っていると思いますよ?」


お金が入ってきたって……どこから?

俺はお金が入っているかどうか、確認のためにスマホを開くと、


『入学特典 5000円が残高に追加されました。

 お金の残高はマイプロフィール【財布】よりご確認ください。

 ご利用は計画的に。』


そんなメッセージが表示されていた。

入学特典で無償でお金がもらえるのか……へぇ。

アプリにもきちんと5000円分追加されている。

しばらくは5000円で生きてくれ、ってわけか。


「ですので、お金の心配はありません。

 腹が減っては戦はできぬといいますし、

 とりあえず今は食べたいものを選んだほうが良いかと。」


「それもそうだな。んじゃ、俺はこのトンカツ定食をいただくとしよう。」


「えっと、じゃぁ、僕はハンバーグセットで!」


「ふふふ、では、私は近くの席に座ってますね。」


そう言って一柳は言葉通り近くの席に座り、

すぐにトレイに乗っていたオムライスを食べ始めた。

食べ始めの一口で、一柳の頬が若干赤く染まる。

そして、先ほどまでの眠気が嘘のようにパクパクと食べ始めた。


「……うまそう。」


「僕たちも朝ごはんを食べましょう!」


俺たちは食堂の受付に向かい、オバちゃんに食券を渡す。


「あいよ! ああ、トンカツはちょっと時間かかるけど、いいかい?」


「ええ、大丈夫ですよ。」


俺がそう言うとオバちゃんは微笑み、調理場に入っていった。

そしてすぐに帰ってきたと思えば、ハンバーグセットを持ってきていた。


「はいよ、ハンバーグセットね〜。」


「わぁ〜! 美味しそうです!」


「冷めないうちに食べるんだよ。

 ああ、トンカツはあともうちょっとでできるから待ってておくれ。」


そう言ってオバちゃんは再び調理場に入っていく。

やはり早い。オムライスといいハンバーグといい、

カップ麺とかレンジでチンするとかより遥かに早すぎる。

それか、もともとできていたものを熱々で保存しているのだろうか?


「あいよ、トンカツ定食ね! ちょっと熱いから気をつけるんだよ。」


「あ、ありがとうございます。」


俺はオバちゃんに軽く礼をし、

定食が乗ったトレイを持ち、一柳が座っている席に向かう。

一柳はすでに半分以上食べ終えていてなお、満足げな顔をしている。


「あ、れひとはんおはへりへふ。」


「……なんて?」


「レイトさんおかえりです、って言ってますね。」


一柳は口の中のオムライスを飲み込み、俺の方を見る。


「オムライス、超絶品です。

 おいしいです、すごくおいしいです。」


「うん。よかったね。」


「僕たちも食べましょう!」


「ああ、そうだな。」


俺たちは席に座り、朝食を食べ始める。

トンカツはサクサク、うまい。うん、うまい。

お箸が止まらない。止まる気配がない。うまい!?


「う、うまぁ……!」


と、俺はそのままトンカツ定食の旨さに酔いしれるのであった。


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