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なんだい? 寄宿舎で何を期待してるんだ?


「……ここが、寄宿舎。」


 スマホのMAPをたよりに寄宿舎に着いた。

寄宿舎がある学園の北側は小さな山があるため、

散策している際に山が遮蔽になって見えなかったのだが……。


「やっぱり……デカいな。」


なんだこの高級ホテル。

教室棟や他の施設と比べて一番大きい。

まぁ、なんとなーく想定していたことだけれども。

MAPに表示されていた建物の大きさから分かってたけども……。

俺の周りの生徒も、建物の大きさに驚いている人がたくさんいる。

中には、すでに泣きそうになっている生徒もいる。

一日たっても覚めない夢だ。泣くのは無理もない。

ここで立ってても足が疲れるだけだ。俺は寄宿舎の中に入る。

中は高級ホテルのような作りになっていた。

廊下には赤い絨毯が敷かれており、壁際には花瓶が飾られている。

天井からはシャンデリアがあり、電気ではなく蝋燭で光を灯していた。

……正直、場違い感が強い。俺、ここで毎日泊まることになるのか?

いや、住むことになるのだろうか。それにしても豪華である……。


「ようこそ、アロディルデ学園寄宿舎へ。

 お疲れ様です。スマホの情報をもとに、お部屋へお進みください。」


受付嬢らしき女性が出迎えてくれた。

俺は軽く頭を下げ、すこし後ろに下がりスマホを見ると、

寄宿舎から通知メッセージが来ていた。

『あなたの部屋はQ312号室

 部屋に入る際はドアのパネルにスマホをかざしてください。』

Q312号室か……。ってどこだ?

寄宿舎のMAPを見ても受付と周辺の地図しかないため、よく分からない。

そうだ、受付嬢に聞けば部屋の場所が分かるかもしれない。


「あの、すみません、Q312号室はどこでしょう……か。」


「レイトさん、私のことはいいのですか?」


「い、一柳……。」


なぜだ、俺はこいつより先に寄宿舎に来たはず……。

まさか俺の背後を付いてきてたのか……?

それにしたって気配がなさすぎる。いつのまに……。


「あー、レイト様、Q312号室なら、

 エレベーターのQボタンを押し、ダイヤルを3に合わせてください。

 それと、一柳様はさきほどからレイト様のお傍にいましたよ?」


受付嬢はニコニコしながら丁寧に教えてくれた。

本当についてきていたのか……、そしてなぜニコニコしているんだ?

彼女か何かかと思っているのであれば、

声を大にして『そうだ』と言って一柳の口を塞いでどこかへ行きたい……。


「レイトさん、Q312号室なんですか?」


「あ、ああ、そうだが……なんだ?

 まさかとは思うが俺の部屋についてくる気じゃないだろうな……?」


「いえ、まさか相部屋だとは思いもしませんでした。」


「あのすみません受付の人、男女混合部屋ってマジですか?」


俺は助けを求めるかのように受付嬢に話しかけた。

すると彼女は真顔で「マジです。」と答えてきた。

そうか、そういうシステムなら仕方がない。


「一柳、とりあえず部屋に行くぞ。話はそれからだ。」


「そうですか。それではいきましょう。」


まぁ、さっきは周りに人がいたから問題であったが、

俺と一柳が同じ部屋であるというのなら問題はない。

これで安全に、存分に彼女について知ることができる。

スリーカップとか意地でも聞くことになるだろう、

だが彼女が教えたがっているのなら本当に仕方がない。

彼女は、あくまでも俺に自分自身を知って欲しいだけなんだからな。

俺たちはエレベーターに乗り、エレベーターの操作盤を見る。

A〜Zのボタンに、針の代わりにダイヤルが付いた時計があった。

受付嬢に言われた通り、Qボタンを押し、ダイヤルを3に合わせる。

するとエレベーターが動き出し、上へと上がっていく。


「そういえば、レイトさんは好きな食べ物はありますか?」


「好きな食べ物ね……そうだな、

 俺はカレーライスが好きだ。そう言う一柳はどうだ? 」


「私はレイトさんが好きです。」


「そうか。俺、食べ物だったか。」


俺は半笑いをしながら、内で少し恐怖を感じた。

好きな物から連想して俺になるならまだマシだぁ。

なんで食べ物から俺を連想したのか意味が分からなすぎる。

そう思っているうちにエレベーターが到着し、ドアが開く。

部屋までの廊下は受付と違い、よくあるホテルの内装になっている。

普通でよかった。ここも豪華だと常に目が痛くなるからな……。

廊下の先はカーブが掛かっているため見えないが、たいぶ長そうだ。

俺たちはエレベーターから降り、

廊下に並んだドアの横にある部屋番号を見ながら歩く。

Q309、Q310……Q312、ここだ。


「たしか、スマホをかざせば開けれるんだったな……。」


俺はそう言いながらスマホをかざすと、

スマホが震え、ドアの鍵が開いた音がする。

俺は扉を開いて部屋の中を見る。

どうやらここも、よくあるホテルのような部屋のようだ。

ベットが二つにちょっとしたソファー、テレビもあり、テーブルもある。

トイレ、風呂場、洗面所もある。至って普通の部屋……と思ったが、

よくみれば窓がない。……緊急事態の脱出口、ないんですけど。


「ここが私たちの部屋なのですね。

 なるほど、いいですね。なかなかいい感じです。」


一柳は部屋の中をぐるぐると見回り始めた。

……私たちの部屋……ね。なんで同じ部屋になってるんだ?

偶然がすぎるかもしれないが、運命ってやつなのかもしれない。

なんせここは異世界、そういうことが起こっても不思議ではない。


「レイトさん、私たちはここで寝泊まりをすることになるんですよね?」


一柳は笑顔で俺を見つめてくる。

その目はキラキラと輝いている。まるで綺麗なものを見た子供のように。


「あ、ああ、そういうことになるんだろうな……。」


「そうですか。楽しみですね。」


「そ、そうだな……ところで、お前はなんでそんなに嬉しそうなんだ?」


「それはもちろん、レイトさんと同じ部屋だからですよ。」


一柳の顔が急接近してきて俺は思わず仰け反った。

しかし彼女はそのまま俺の顔を覗き込んでくる。

近い……近い……。なんだかドキドキしてきた……。


「……と、ところでだ。

 どうしてそこまで俺に、興味があるんだ……?」


「パーティとして、逸材ですから。

 それに、見た目も性格も私好みですし。」


「……へ、へぇー、あ、ありがとう……。」


俺は目を逸らしながら答える。

いかん、顔が熱い……。心臓の鼓動が早くなってきた。


「レイトさんは、私に興味はないんですか?」


「興味はあるよ、現状の、この状況に関してとか……。」


「私なら、レイトさんの役に立つと思います。

 明日から、一緒に私たち二人でメンバーを探しに行きましょう。」


「あ、ああ、わかった……。」


俺はそう答えて、一柳から距離をとる。

これ以上近くにいたら俺の心が持たない。

ただでさえ異性に耐性がないのにこの距離はキツイ……。


「それでは、私はお風呂に入ってきます。

 先に寝ていてください。それとも、レイトさんも__」


「それはやめとく」


俺は制服のままベットに飛び込み、

そのまま一柳を背に横になりながら眠りについた。



修正。ダブルベット→二つのベット

ダブルベットはベット二つ分の広さがあるベットのことです。

決してダブルにベットがあることではありません。

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