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地属性精霊術師は風属性精霊術師を可愛がりたくてしょうがない  作者: 黒笠
第3章

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37 対決〜バンリュウ③

 再びバンリュウの動きが止まった。

「戻ってきた人と馬、あっけなく捕まえたよ」

 ケイズは戦いに口を挟んだ。

「馬鹿な、なぜ戻ってきた」

 バンリュウがリアの風小玉を躱すべく、大きく飛び退きながら呟いた。

 赤熱した大剣の刀身が見える。とっくの昔から全力で戦っていたのだ。それでも自分たちが圧倒していた。

「馬鹿はお前だっ!見捨てられるわけがないだろうっ!」

 土の腕から鎧で覆われた顔だけが出ている黒騎士が叫ぶ。さぞ切迫した表情を浮かべているだろう、という語調である。

 ここだけを見れば、自分たちのほうが悪者のようだ。

「倒すんじゃなくて、説得だもんね」

 リアが隣に着地した。散々に猛攻を加えておいて、分別くさいことを言うのが、なんとも可愛らしい。悪者の訳が無い。とにかく可愛いのである。ケイズは自らの不明を恥じた。

(よし、さて、どう話そう)

 ケイズとしては、どうバンリュウを説き伏せるのか。既に思考がそちらへ映っている。

 そもそもバンリュウ自体が怖い相手だった。だが、リアといれば大丈夫だ。

「さっきも言ったけど、俺とリア、クロウ将軍から、あんたを連れ戻すように言われてる。あんた、自分から脱走したのにさ。あんたのこと、クロウ将軍、すごい評価してくれてるんだよ、きっと」

 ケイズは力を込めて言う。

(だって、普通、処断するってなるよ)

 未来の義兄を思い出してケイズは思う。それぐらいの決断力はあったように見えた。

「クロウ将軍は風来坊だった俺を引き立ててくれた。恩義もある。最強を目指すという夢も笑わないでくれた。だが、俺の目標は最強だ。ケイズ・マッグ・ロール、お前は軍人としての総合的な能力ならばクロウ将軍よりも上だ。最強に近い。お前に勝てるかどうかは、俺にとって、人生をかけた夢への現在地を測ることなのだ」

 バンリュウも力を込めて返してきた。要するに、とても高い評価を自分に下してくれているらしい。

(光栄だけど、迷惑だ)

 ケイズとしては、まったく嬉しくない。

 ましてクロウ将軍の恐ろしさを思い返すにつけて、自分のほうが上の理由がないとも想う。

「確かにケイズは凄いけど、それは合ってるよ。でも本当に迷惑だから、もう帰って」

 リアも言い、ピトリと身を寄せてきた。

 ケイズとしては降って湧いた幸せである。

「黒騎士、何かまた叫びだすつもりなら、話の邪魔だから、さすがに殺す」

 ケイズは、黒騎士の口を開こうと言う気配を察して、低い声で告げる。

「俺が言いたいのは、大人しくクロウ将軍のところに戻ってくれるんなら、あんたも黒騎士も生かしておくし。戻ってくれないんなら、黒騎士だけ殺すってこと」

 淡々とケイズは突きつける。本当に人質云々に意味があるかは微妙だ。

(でも、少しはモノを考えてくれると有り難い)

 きっかけを提示したつもりなのである。

 バンリュウの顔から表情が消えた。

「人質か、だが」

 唇を噛んでバンリュウが言葉を濁す。思ったよりも黒騎士を大切にしたいらしい。

(だったら、もう、結論は出てる)

 ケイズは黒騎士を一瞥して思う。

 本当はバンリュウも分かっているのだ。

 メイズロウ周辺をすべてケイズは掌握している。戦については勝ち目など最早全く無い。

「悪いけど、実はもう、一応、形上、あんたの属している軍の総大将ヒエドランは捕虜にした。戦はもう終わってる。本当に、悪いけど。つまり、俺達にとってはもう、あんたとの戦いですら戦の片手間に過ぎなかった。クロウ将軍の頼みがなかったら、戦ってやる必要もなかった。そんなんで、どっちが強いか決めようなんて、馬鹿馬鹿しくない?」

 ケイズは冷たく言葉を並べて、最後には問いかける。

 ガイルドとウィリアムソンが敵の本営を強襲した。2人の眼前で、ヒエドランだけは馬ごと首から上だけを出して、生き埋めにしている。

(ざまぁみろってんだ)

 ケイズとしては、屈辱を与えられるだけ、与えてやりたいのであった。

「あっ、じゃぁ、もう、戦い、終わったんだ。バンリュウ将軍と戦っても、遊んでるのと変わらないね」

 リアも悪意なく、バンリュウにとって残酷な事実を告げる。

 ガックリとバンリュウが肩を落とした。初めて見せる姿だ。

(無理もないけどな、バンリュウにとっては、この戦い、部下も身分も放りだして、一世一代の賭けのつもりだったんだから)

 ケイズは気の毒にすら思う。

 前の上司からは心配されている上、片手間だったと告げられたのだから。

「バンリュウ、あんたさ、軍人として強くなりたいの?それとも武人として?両方とか欲張り過ぎだし、ぶれてるってことだと思う、人として」

 ケイズは指輪を輝かせたまま告げる。

 少なくとも自分は一切ぶれていない。いつだってリアと一緒になる、幸せになりたいとしか考えていないのだ。ケイズはよって、さりげなくリアの細腰に手を回す。

(あまり、言い過ぎて逆上されても困る)

 ケイズは思いつつ、バンリュウの反応をうかがうのであった。

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