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地属性精霊術師は風属性精霊術師を可愛がりたくてしょうがない  作者: 黒笠
第3章

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23 ダイドラ帰還②

 何の変哲もない旅となった。順調に行程を消化していく。

 途中、ジエンエント城の南、バンクタ村に立ち寄る。ブラック一家のところで、婚約の報告をケイズはしたかったからだ。

「よく来たね」

 笑顔で出迎えてくれたブラックに、ケイズとリアは仲良く並んで婚約の報告をした。

「おめでとう。でも、2人がいない間、ダイドラは大変だったみたいだよ。大型の上級魔獣があらわれたらしい。駆除できた、って話もあるけど」

 ブラック自身も確度の高い情報ではないらしい。

 首を傾げている。

(そもそも、俺とリアの婚約、一応、義兄さんが広報してくれてたのに、知らないんだもんな)

 ダイドラでは既に知られているかもしれないことにケイズは思い至るのだった。

(っと、今は魔獣の話だ)

 ケイズはリアと顔を見合わせる。リアの顔がとても心配そうだ。自分も似たようなものだろう。

 2人は予定を切り上げて、ブラックの前を辞し、再びダイドラへと急ぐ。

 ダイドラへも何も大過なくたどり着くことが出来た。城門での身分確認も2人の冒険者証だけで足りる。既に夕刻だった。閉門ギリギリだからか、慌てて守衛が報告に走っていく。それでも、すぐに入れてもらえた。

「とりあえず帰ろ」

 街に入って久しぶりの往来の中、リアが振り向いて笑顔を見せる。

 なんとなくケイズもダイドラの町を久しぶりに目の辺りにしてほっとした。

「うん」

 ケイズは頷き、リアとともに自宅へと戻る。

(何か見られていた気がする)

 ケイズは思い返すのだった。

 直接、誰かから声をかけられることもなかったのだが。

(今はまだ、気にしてもしょうがない、か)

 さすがに長旅で疲れているのもあった。

 リアがポスン、とケイズの用意した寝台に腰掛ける。たちのぼる埃に2人で顔をしかめた。長らく留守にしていた家なのである。

 思えばリアを攫われて取り戻そうと旅に出てから1月近く経っているのではないか。

「大掃除、しなきゃ」

 気合を入れているリアである。

(お利口さんだから、本当に明日にでも掃除を始めるんだろうな)

 ケイズは笑みをこぼしてしまう。

 ダイドラに戻っては来たものの、もう夜半だから知り合いにも会いに行けない。誰かしらかが聞きつけてくるということもなかった。

 だが、ケイズとリアの婚約は義兄クロウにより大々的に広報をなされているのだ。当然、ダイドラにも伝わっているだろう。

(正直、何人か声をかけてきそうな人間に心当たりはあったんだが)

 ケイズは思いつつ、再び元の場所に落ちようとしている埃を見つめる。

「ケイズ、お家、しっかりしないとだよ」

 再度、リアが顔を近づけて告げる。家でも無防備に距離を詰めて来られるとケイズとしては困るのだった。

(あぁ、ギュッてしたい)

 なんとかケイズは理性を維持しようとするのだった。

「それはそれで、ちゃんとしないとだけどさ。フィオナとかジードにも会わないとだし。冒険者ギルドにも顔を出さないとな」

 リアに明日するべきことを思い出させつつ、ケイズはノレドのこともチラリと思い出していた。

(もう、ダイドラには戻れてると思うけど)

 ミズドロバの町を出て以来、会っていないのだった。

「そうだね、明日、ね」

 リアも嬉しそうに頷く。エリスやステラといった友達に会えるのが嬉しいのだろう。

 お互いの寝台周りだけを片付けて、2人はひとまず眠りについた。

 翌朝、家を出て、2人並んでダイドラの町を歩く。向かうは冒険者ギルドのダイドラ支部なのだが。

(やけに人目を感じる。見られてる)

 ケイズは落ち着かない。杖を2本、背中に負う自分が酷く目立つのはいつものことなのだが。

「なんか、落ち着かないね」

 リアも同じく視線を感じているらしく、ケイズの感じたのと同じことをそのまま口にする。

「なんだろうな。ちょっと、まだ、想像もつかない」 

 ケイズは理由の分からぬまま相槌を打つ。

 昨日、ダイドラ入りしたのは夕刻だった。あまり人目につかない時間なので今日ほどには気にならなかったのだが。

(でも、昨日も変だったな)

 家までは覗かれていなかったのとも、今となっては気味が悪い。リアとの新生活を邪魔されたなら自分が怒り狂うことを見透かされていたようだ。

 思いつつも、何事もなく冒険者ギルドのダイドラ支部にたどり着く。

「わっ、変わんないね。嬉しいね」

 リアがくるくると回りながら言う。

 何度も目にしてきた木製の扉。幅の広い建物を見上げてケイズも流石に、懐かしい気持ちになることが出来た。

 何人か出入りしていた冒険者たちが自分たち2人を見て、ビクッとする。『帰ってきた』・『クラン双角のケイズとリアだ』などとヒソヒソ離す声もしてきた。

「とりあえず、入ろっか」

 リアが珍しく苦笑いである。

「そうだな」

 ケイズは両開きの木製扉を押して開ける。

「嘘っ!やっと帰ってきた!良かった!」

 まず第一声、自分とリアを見るなり、フィオナが叫ぶ。

「ただいまっ!」

 素直にフィオナに飛びつくリアを見て、ケイズはダイドラに戻ってこれて良かった、と心の底から思うのであった。

 

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