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地属性精霊術師は風属性精霊術師を可愛がりたくてしょうがない  作者: 黒笠
第3章

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SIDE⑤ノレド〜風蝶討伐⑤

 木々の向こうに深い青色の綺羅びやかな羽根が見えた。ちょうど村のある方向だ。

 森の中にある開けた場所。空を舞う巨大な蝶と対峙して、片腕を上げて泥の弾丸を射出している1団もいる。ケイズの泥人形たちだ。

「でけぇな」

 大きさもさることながら、想像していたよりもウィンディーモルフィンが遥かに機敏であることに、ノレドは驚く。

「風を使って、見た目の割に軽い身体を自在に動かすって、あの図鑑に書いてあった」

 ケイズがノレドの驚きを察して説明してくれた。

「普通に蝶だと思っていると痛い目に遭う」

 じぃっとケイズが上空を見つめている。

(あの巨大さに上級魔獣だぞ?普通の蝶とは思わないって)

 ノレドは思いつつ、ケイズを急かそうとした。早くウィンディーモルフィンを倒して、ミュング村の人々を安心させてやりたい。まだ、三連砲を放つのには距離があり過ぎる。

 しかし、ケイズが動こうともしない。なおもウィンディーモルフィンを凝視している。

「なるほど」

 ケイズが何事かに納得して頷いた。

「どうしたんだよ」

 焦りつつもノレドは尋ねる。存外、こういうときに限って、しれっと重要なことを口走るのがケイズだ。

「上昇気流を利用して、かなり上空にいたんだな。蝶だと思ってたから、そういう印象が無かった。身体の作りもただの虫とは違うんだろうな」

 感心したようにケイズが言う。さして重要ではなかった。この男は魔獣を相手に何を言っているのだろうか。

「ほら、馬鹿なことを言ってないで行くぞ」

 ノレドはケイズの背中を押して走り出す。すぐに引き離されてしまったが。

「思っていたより風を上手く使う。気を付けないといけない。厄介な鱗粉は俺が塵旋風で吹き飛ばす」

 背中を見せたままケイズが言い、杖を手に取った。悍ましい程の魔力が全身から噴き出している。

 ちょうど、ウィンディーモルフィンも風の刃を無数に生み出し、ケイズの泥人形を一掃したところだった。

「あの野郎」

 ケイズが怒りを露わにする。足を止めて地面に杖を突き立てた。

(俺がやられても、こんなには怒らなそうなんだよな)

 ちらりとノレドは思ってしまう。

 砂嵐が生じてウィンディーモルフィンへと襲いかかる。

 ウィンディーモルフィンもさるもの。大きな羽根を羽ばたかせて、ケイズの塵旋風と張り合っている。なお、ウィンディーモルフィンがいなければ、ミュング村がケイズの砂嵐に埋もれるところだった。

(これは、俺一人なら、やられていたかもな)

 ノレドは背中に嫌な汗をかいていた。

 鱗粉からはケイズの仮面で守ってもらい、今も動きを砂嵐で封じてもらっている。

「やっぱり、俺には相棒が必要、か」

 ノレドは呟きつつ、村の方へと位置をずらす。今の位置関係では三連砲を放つと村も巻き沿いだ。

 エリスを見て、強くなりたくなった。肩を並べて戦えるぐらいにはなりたいと。前提からして、独りで戦おうというつもりもないのだが。

「俺の相棒はリアだけだ」

 そういうことには耳ざといケイズが聞き咎めて、すかさず呟いた。

「いま、この場の話だよ」

 ノレドは言い、走って村を巻き沿いにしない位置へとついた。ケイズとウィンディーモルフィンが張り合っている、ちょうど側面の位置だ。

 グズグズしていると、ケイズがウィンディーモルフィンごと村を砂に埋めかねない。

 急いでノレドは魔力を練り上げる。

 ウィンディーモルフィンの触角が碧色の輝きを放つ。先ほどケイズの泥人形に放ったウインドカッターの魔術だ。

「ちっ」

 ケイズが石の腕を生み出し、握り拳にして風の刃に叩きつけた。

 無数のウインドカッターと石の拳とが相殺する。

「とっとと、してほしい。向こうの攻撃も俺に通るから」

 村を巻き込みたくないノレドの配慮も知らず、苛立った口調でケイズが言う。本当は自ら仕留めたくてしょうがないのかもしれない。

「分かってるよ」

 ノレドは地・炎・雷の三属性の三連砲を中空に練り上げた。

 ケイズが地面に突き立てていた杖を手に取って掲げた。

 幅広だった塵旋風が渦を巻き、ウィンディーモルフィンの巨体を縛り上げるように、その動きを束縛する。

「さすが」

 ノレドは思わず声を上げた。絶妙なケイズの援護である。

 さらに三連砲を正に放とうというところで、攻撃を邪魔することなく消えた。

「いけっ!」

 3色の、魔力を練り上げた球が一体となって、ウィンディーモルフィンの巨体へと叩き込まれていく。

 轟音とともに爆発が生じる。跡形もなく、ウィンディーモルフィンの巨体が砕け散った。我ながら恐ろしい破壊力である。

「うん」

 ケイズが満足気に頷く。

「ばっちりだ」

 ケイズがばっちりと言って、実際にばっちりだった試しがない。

 思ってノレドは気づく。

「なぁ、木っ端微塵にしたら、素材も何も、倒した証拠も残らないよな」

 ノレドは爆風で生じた広場を見て告げる。ウィンディーモルフィンを恐れて家に籠もっていた村人たちが一斉に姿を見せた。証人になっては貰えないだろうか。

 今回はもう一匹、さらに倒すということも出来ないのだから。

「これじゃ、冒険者っていうより、破壊者だ」

 ノレドは指摘してやった。

「失敬な」

 ケイズが憮然とした顔をした。いつの間にか仮面を外している。

 ノレドも倣った。

「まぁ、でも、依頼の方は大丈夫」

 ケイズがパシッと宙を舞う何かを掴んだ。

「倒した証拠にこれがある」

 本来、倒してから丁寧に採集する、ウィンディーモルフィンの羽根、その欠片である。見るからに行き当たりばったりの対応に、ノレドは再び頭が痛くなってしまうのであった。

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