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地属性精霊術師は風属性精霊術師を可愛がりたくてしょうがない  作者: 黒笠
第3章

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S IDE③ノレド 砂鯨討伐②

「こんなに早く使えるようになるなんて、やっぱりあんたに向いてたんだ」

 岩からケイズが下りて結論付けた。

 確かに自分に合っていたのかもしれない。

 全てが中途半端だった。馬鹿にされるのが嫌で、だから全てを究め尽くしてやろう、と思っていた時期もあったが。限界を感じて苛立っていたころ、エリスに出会ったのだ。

「だいぶ時間を使った。急ごう」

 やはり急いでいることを隠せないケイズにノレドは苦笑した。

 半日、歩き続ける。

 岩地から下りて、森を抜けると山の中に町が見えた。山肌に張り付くように建物が密集している。

「よし、あと少しだ」

 ケイズが振り返って言う。

「やっと、マトモなものが食えるな」

 思わずノレドは呟いていた。

 マーシャルたちと離れ、一旦ケイズといるようになり、抱くようになった最大の不満は食事だ。ケイズ本人からして、小麦粉を固めたものを口に放るだけである。味が全くしない。そもそも人が食べるべきものかも分からないような代物だ。美味しい物を食べたいという欲求がケイズからは欠落しているのだろう。

「うん?小麦、分けようか?」

 ノレドの気も知らず、ケイズが無邪気に言う。首をノレドが横に振ると、また、スタスタと歩き始めた。

「リアともずっとこうだったのか?」

 たまりかねて、ノレドは後ろからケイズに問いかける。

「うん?うん」

 あいまいにケイズが頷いた。おそらく何の話だかまるで分かっていないのだろう。

「飯の話だよ。よく、嫌われなかったな」

 ノレドはダイドラの街でのことを思い出して言う。エリスやステラと楽しそうにお菓子を食べていたリアを何度か目撃している。リアの味覚は普通のはずだ。

 ケイズが気まずそうに歩みを止めて振り向いた。

「前に、リアと一緒に旅をして、似たようなことして、フィオナに叱られたな。リア本人は平然としてたけど」

 少し思い出した、という顔でケイズが言う。言われてもノレドに垣間見えるのはリアのたくましさだけなのだが。

「でも、フィオナといて変わったみたいだ。女の子らしくなって、前よりも。最近は仕事でも街でも、野宿でもいろいろとリアのほうが面倒見てくれる。まるで、奥さんみたいに」

 ポッと、ケイズが言い頬を赤らめた。最後のが言いたかっただけではないかとノレドは指摘したくなってしまう。

 リアの苦労が目に浮かぶようだった。

 また、ケイズが歩き出す。3本の杖を背中に差して、茶色いローブを着込んでいる、いつもどおりの格好だ。

(いつもどおり?ん?俺、こいつと旅始めてから、着替えてるの見たことないぞ)

 ふと、ずっと同じローブをケイズが来ていることに気付き、ノレドはゾッとする。一応、ノレドは着替を所持しており、川などがあれば水洗いぐらいはしていた。

 ノレドは町に入ったら、ケイズに着替えを買わせて人間らしい食事を摂らせることを誓う。

 更にもう半日歩いて、ミズドロバに到着する。

 山の斜面に家々が並ぶ。長い歴史の中で、斜面をならして家を建ててきたのだろう。木造家屋が多かったダイドラと違い、こちらは白い煉瓦を利用した家屋が多い。

 白い壁の家や店舗などを夕陽が紅く染める。

 近年、特に外敵から攻められることの少なかった帝政シュバルトでは、国内交易のため、いちいち城壁を設けていない都市も多い。ミズドロバもそういった都市の1つだ。

 隠れて入国することは可能だが、密入国には判明したら厳しく対応する、という方針を帝政シュバルトは取っていた。

「冒険者ギルド支部へ行こう」

 目的地へ一目散に向かおうとするケイズをノレドは制止した。

 到着しても、まもなく窓口を閉めるというギリギリの時間となってしまうだろう。フィオナなど馴染みの受付ならともかく、初対面の相手にいきなり嫌われると後が面倒だ。

「何日か滞在することになる。こういうときはまず宿を取って、そこを拠点にするんだよ。大事なことは翌日の朝から始めるのが冒険者の定番」

 細かい機微を説明してもケイズにはわからないだろう、とノレドは判断した。

 ケイズに任せておくと町中の路上で野宿することになりかねない。

 とにかくノレドは人間らしい食事と睡眠をとりたいのである。

「ほら、行くぞ」

 ノレドは引っ張るようにケイズを連れて、手頃な宿屋を探した。

『イワトカゲ亭』という一階が料理屋、二階が宿屋となっている店舗を町の中心部で見つける。

 とりあえず5日分の宿賃を払い、宿屋の主人と話をつけた。さらに一階で食事を摂ることとする。

「こういうの、俺、初めてだ」

 ケイズが、煮込んだ肉を食べているノレドに告げる。何やら感心してくれているようだ。

 ノレドはただ煮込んだだけの肉があまりに美味しく思えて、感動すら覚えていた。料理とは偉大なものだとつくづく思う。

「ダイドラには、家、持ってたし。他の場所では野宿だった」

 ケイズがパンを咀嚼しながら言う。どれだけ小麦が好きなのだろうか。一応、野菜を煮込んだスープも飲んではいるのだが。

 まるで他の街にも持ち家があるかのような言い草だ。

「でも、ミズドロバにはないから。シュバルトの首都のヴィスタークにはあるんだけど、念の為」

 ノレドは肉を喰らいつつ思う。ケイズは一体、何軒の家を持っているのだろうか、と。

「でも、リアは売ってお金にしたほうが良いって言うんだ。ダイドラで暮らすの確実だし、整理しよって。生活費の足しにもなるし、貯金にもなるし。結婚したら物入りだしって」

 そこからはえんえんと、淡々とケイズによるリアとの惚気話が続いた。放っておけば一晩続きそうなところ、閉店時間を口実に、無理矢理ノレドは打ち切ってやった。

 翌日、ノレドはケイズを連れて、冒険者ギルドミズドロバ支部へと向かう。

 町の東部、比較的、山の低い位置に建てられた、家三軒分ほどの大きさの建物だ。

「小さいな」

 ケイズが呟く。今日はノレドの杖を宿に置いているので、いつもどおり杖を2本背負った姿だ。

「ダイドラが他のとこより大きいんだよ。大体、ほとんどここぐらいが普通だよ」

 ノレドは返し、木製の扉を開いた。

 にぎやかなダイドラ支部と異なり、中は閑散としていて、冒険者も窓口も少ない。依頼受注と結果報告、冒険者登録業務をまとめて行う窓口が1つと、素材換金を行う窓口が1つ、と2つだけだ。

「シュバルト自体、あまり冒険者業が盛んじゃないからな。道中もあまり行き合わなかっただろ」

 ノレドは受付窓口に向かいながら告げる。

「竜が多くて大変だろうと思っていたんだけど。その竜種とうまくやれていれば、実はあまり魔獣には煩わされない、か。連中が他所の国を攻めたがる理由がよく分かった」

 ボヤくように背後で呟くケイズ。

「ん?」

 ノレドは立ち止まって振り向いた。

「こっちの話」

 ケイズがいい、ノレドを抜いてそのままスタスタと窓口へと向かう。

「まず地竜の居場所。その近くにいる上級魔獣をあんたが倒す。それで行こう」

 淡々と告げるケイズ。

 特に異論はないが一方的に決められてしまった。やはりリアのことで急いでいるのかもしれない。

(まぁ、三連砲の修行にも付き合ってもらったしな。事情も分かってるし、俺が合わせるよ)

 ノレドは苦笑しつつ、心に決めるのであった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] ノレド結構すぐに三連砲使えるようになっててすごいゴブ! こいつは天才かもしれんゴブ……! [気になる点] ケイズが、味音痴で洗濯しないキャラなのが面白かったゴブ 彼の人間味が、そして奇人変…
[良い点] ケイズくんは勝算のないことはサラリと言わないでしょうし、ノレドさんにはじゅうぶん倒す力があるということなんでしょうね。 次話が楽しみです! [気になる点] もっと惚気話聞きたかった〜(´°…
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