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地属性精霊術師は風属性精霊術師を可愛がりたくてしょうがない  作者: 黒笠
第2章

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53 コントラッド平原の戦い②

 途中、バンクタ村に寄った。クラン双角の仲間であり人生の手本、パウエル・ブラックに会うためだ。

「久し振りだね。また、もっと仲良くなれたみたいだね」

 以前と同じく柔和な笑みを浮かべてブラックが言う。ブラック宅の居間に通してもらっている。リアと並んで長椅子に腰掛けていた。

「はい、ブラックさんのおかげで、あれから」

 フローラの淹れてくれたお茶を啜りつつ、ケイズは来訪の目的であるホクレン軍の襲来について説明した。傍らにはリアがピトリである。

「そうか、ホクレンの軍が」

 困ったような顔をブラックがした。判断に困る、といった表情だ。

「避難したほうがいいかもしれませんよ。ここも戦場になるかも」

 ケイズはブラック一家が心配で寄ったのだった。今もマーニーの可愛い笑い声が聞こえる。

「ホクレン軍なら大丈夫かな。彼ら、無闇に一般人を攻撃しないから。この間も事前に来たよ。警告しにね。邪魔にならない場所へ逃げてくれれば、決して攻撃しないってね」

 意外なホクレン軍の手回し、配慮にケイズは軽く驚いた。

 リアもこくこくと頷いている。

「昔からそうだよ。ホクレンの軍隊は意味のないこと、しないもん。略奪とかも制圧した後、抵抗が煩わしいからダメって。軍律、厳しい部分は本当に厳しいから」

 ホクレン出身者が言うのだから間違い無いのだろう。

「今回も、この辺りで戦うつもりなら、とっくの昔に警告が来ていると思うよ。まぁ、軍を見たら村の皆で避難するよ」

 ブラックが言い、ケイズとリアとを楽しそうに見比べる。

「すいません。余計な気を回して、押しかけちゃって」

 気恥ずかしくなって、ケイズは頭を下げた。

「いや、戦いがあるって、前もって分かってれば、助かることもあるから。ありがとう」

 出来た大人は言い方1つとっても嫌味のないものだ。ケイズはしみじみ頭を下げた。

「それに2人の仲良しをまた見られて、眼福だよ」

 ケイズはリアを見てから頭を掻いた。ブラックに言われると照れ臭いのだ。

 2人でフローラやマーニーにも挨拶し、ひとしきり世間話をして、一泊した。本当はこの段階でホクレン軍の意図に気付くべきだったのだ、と後で悔いることになるのだが。

 そして翌朝、ジエンエント城へ向かう。

 バンクタ村での滞在も含めて、ダイドラから丸一日でジエンエント城に至る。

 今回は誰何すらされず、顔を見ただけで中へ通された。これもこれでどうか、とケイズは思うのだが。

「ケイズ殿、よくぞお越しくださいました」

 駆け寄ってきたガイルドとウィリアムソンが言う。2人とも軍装、銀色のプレートメイル姿だ。ガイルドに至っては異様に立派な槍を手に持っている。

「今回はリア殿まで!いや、嬉しい限りです」

 ガイルドがリアを見て言う。

 見られることすら嫌がって、リアがケイズの背後に隠れる。

「また、地針するぞ」

 ケイズは一応、警告する。以前、本当に宙吊りにしたこともあった。軍人ではガイルドだけである。女好きなのだ。いやらしい目でリアの太ももを注視していた。

「いえっ、リア殿はさすがに少女過ぎます。守備範囲外です。脚は綺麗ですし、いずれは相当な」

 あわてた様子で、失礼な墓穴を掘ったので、ケイズはガイルドを地針で宙吊りにした。

「あーりがとーございまーす」

 何が有り難いのかさっぱり分からないので、ケイズはガイルドを無視してウィリアムソンの方を向く。

 安心した顔でリアがまた隣に立った。

「バンリュウ軍はまた、シュバルト国内から、こちらに向けて攻め込んでくるつもりのようです」

 何食わぬ顔でウィリアムソンが言う。ガイルドとは違った意味で油断のならない男だ。おそらく、いろいろと目論んでいるのはガイルドではなくウィリアムソンの方だろう。悪い男ではないから対処に困る。

「また、守城戦が良いかと思いますが。とりあえず将校を集めてあります。本営に参りましょう。出来ればリア様もご一緒に」

 考えが透けて見えていて、ウィリアムソンがリアに対して、「様」呼びするのも要警戒だ。

(この2人がやってることと思惑はサナスから知らされているが)

 ウィリアムソンに連れられて、本営へと向かう中、ケイズは考えていた。

 今のところ、ウィリアムソンも話そうという気はないようだ。十分に離れてからガイルドを下ろしてやる。ものすごい勢いで駆けてきた。

 4人で本営に至る。ウィリアムソンの言葉どおり既に主要な将校が集まっていた。

「また、バンリュウが、同じことをしてくるかな。甚だ疑問だ。もう俺の存在はバレてるんだから」

 軍議の席、一同を見回してケイズは問うた。隣では律義なリアが必死で地図を眺め、メモを取っている。

「バンリュウ軍も4万に減っています。前回と同じ形に持ち込めれば、同じ手段で、数を減らせている分、確実に勝てるのではないですか?」

 ウェインという若い将校が言う。砂色の髪をしていて、小柄で筋肉質な若者だ。前回の戦いでも軍議で口を開いていた。真面目で有能、堅実なのだろう。言いたいことはケイズにもよく分かった。

「あの泥濘には、もう嵌まらないと思う。板とか丸太とか準備しておいて、道を作れば、あれ、簡単に破られるから。前回は不意打ちだからうまくいったけど。当然、対処してくるだろうと思う」

 ケイズは意識して、出来るだけ丁寧に説明した。リアが何やら隣で感心している。以前に軍人さんの前では偉いと褒められた覚えがあった。

「でも、使うのでしょう?」

 ウェインが更に言い募る。なぜだか自信を感じさせる表情だ。使うなら、前回よりもうまく合わせてみせる、ということだろうか。

 ケイズは苦笑した。

「相手の構えを見て、どうするか決めるので良いと思う。見るからにナメてたら、食らわせるのはアリかもしれない。でも、無駄打ちはしたくない。俺だって魔力が切れることはあるんだから」

 ケイズの言葉に他の年嵩の将校たちが頷いた。形はどうあれ、バンリュウが同じ手を喰らう愚を犯さないであろうという共通の認識はあるようだ。

「では、他の手段で?」

 ウィリアムソンが代わって尋ねてくる。

 ケイズはただ頷いた。ただ、一発で鮮やかに、というのはもう難しい。

 皆で知恵を出し合い、守城戦での想定を重ねる。

(しかし、こんないろいろ考えてもバンリュウ相手にできるのか?)

 ふっとケイズの頭をよぎる。影を恐れているだけだ。

 引っかかるものが胸のうちにはあるが、こちらが城にこもってしまえば、相手は攻め寄せるしかない。守城戦に持ち込めるのは確実で、戦の主導権と地の利は自分たちの方にある、とケイズは見ていた。

 だが、その考えは夕方には崩されることとなる。

「ケイズ殿っ!」

 リアと2人で城壁を回っていると、ウィリアムソンがひどく焦った様子で駆けてきた。

「やられましたっ、バンリュウが今いるのはコントラッド平原の南側です」

 息も切れ切れに、ウィリアムソンが告げる。

「何?」

 盲点だった、とケイズは驚きを隠せない。

 リアが不安そうな顔で自分を見上げる。コントラッド平原がどこだか知らないようだ。

「くそっ、もう一度、将校を全員集めろ。軍議をやり直す」

 まず、ウィリアムソンに指示することをケイズは優先した。

 ウィリアムソンの背中が消えるのを待ってリアの方へと向き直る。

「ケイズ、どういうこと?コントラッド平原ってどこ?」

 地理に詳しくないリアが戸惑って尋ねてくる。

「こないだのソーントン平野の東にあって、南北に伸びる平原だよ。南側となれば、ジエンエント城からもかなり離れる、つまり」

 ケイズは言葉を切った。リアが地勢を思い浮かべるまでしばし待つ。こくんとリアが恐る恐る頷いた。

「つまり、バンリュウの狙いはダイドラで、攻められる位置にいる」

 ケイズの言葉にリアがはっきり青ざめた。

 

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりに地針で宙吊りにしましたね。 最近は公認カップルになった事とケイズ君の強さが知れ渡って宙吊りにされる方がいなかったので面白かったです(^o^) [一言] なるほど、ケイズ君が強すぎ…
[良い点] バンリュウ、ついにきましたか! それにしても甘々から一転スパイシーへ。 場の転換が上手で今日も楽しませてもらいました。 また、楽しみにしています(^_^)
[良い点] これは(ノ_<)城を攻めにくるかと思えばまさかのダイドラですか……。バンリュウさん、ケイズ君たちがいない隙を狙ったんですかね。どうなってしまうのか、目が離せません。 [一言] 墓穴を掘って…
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