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過去と向き会う

「朝間家ってどんなところなんだい?」

俺はエスメトに問う。


朝間家はこの神薙国≪かんなぎのくに≫の王家で、先の大戦を乗り越えた能力者の一族であること。今は3人しか生き残っていない。そして彼女のおじアイレーンと関わりがあったということ。協力を得るのは難しい。


彼女もそれだけしか知らないとのことだった。

俺は別の考えをめぐらせながらも、2人について行くことにした。



俺達は森を抜けて、宮殿へと向かう。森の中は悪魔に憑依された人々の巣窟だった。舞の案内とエスメトの力のおかげで難なく森を抜けることはできた。森を抜けると、荒廃した街が広がっていた。教会は半壊したまま放置され、廃墟の中で人々は隠れながら暮らしていた。

「お兄ちゃん、こっち」

突然少年がズボンの裾を引っ張った。そのまま少年はまっすぐ走っていってしまった。

「あの子、確か集落で、、、、」

俺は舞と離れた後、現われた少年だと確信した。


俺達は少年の後を追う。

決して近づいてはいけない気配を感じた。

「ひやあああああああああああああああああああああああああ」

そこには、顔に血を垂らした少女がいた。

恐れおののく、俺とエスメトとは真逆に舞は落ち着いていた。

「ここは先の大戦の慰霊碑。ここでも森でも多くの方が亡くなった。アタイは何も覚えていないけれど、アタイの仲間も何人も死んだ。その時は生き延びても、代償を払わされて死んだものもいる。本当に悪魔の巣窟に森もここもなってしまった。アタイのせいで」

舞は涙をこらえながら語る。集落でのあの態度も罪悪感ゆえなのだと俺は察した。舞は全て自らのせいだと思い込んでいる。いや、思わされているのかもしれない。でもそれはそれで都合がいい。

「あなたと同じような方がここで眠っています。異界から来た方なのでしょ、あなた?」

「いつ気づいていたんです?」

俺は異世界転移者っていつ言ったのか?そんな疑問より実は俺の現状の目的に気づかれているのか不安で声が震えてしまっていた。

「きっとこの方がこうなってしまったから、あなたがここに召喚されて。きっとみんな運命付けられている」

そんな俺を無視して、舞は話を続ける。俺はハッとした彼女が指さすのは白鳥剛タケルの名だったからだ。


僕が8歳のときの話だ。突然人が目の前降ってきたんだ。それをトラックが轢いた。遺体は血まみれ、バラバラでまさしく無惨というよう状態だった。その事件で最もおかしかったのは2つあるその場にいた童女、遺体の推定時刻が1か月前だということ。童女はその場で力尽きたようで消えていった。おそらく空から死体が降ってきたというのは異世界から返されたということだろうか。

その遺体の主こそ白鳥剛、俺の当時の担任だ。優しい先生だった。あの時の俺にとって明るく接してくれる神様のような人だった。ある時白鳥先生は突然行方不明になった。後任の先生も決まらないまま1ヶ月すぎた。遺体になって帰って来た。

そこまでは鮮明に覚えているがその直後の記憶がない。どうして思い出せないんだよ。そこで大きく俺の人生が変わったはずなのに。憤りと不安に苛まれながら俺は頭を抱え、座りこんでしまった。こんなのあの時の、あんなクソみたいなときに戻ってんじゃねーか。

トンッ

舞が俺の肩を軽く叩いた。とても優しい手つきだった。

「あなたにはきっと彼の加護がありますわ。」

そう言うと屋敷に向かうことを促す。

「ここにいることは安全ではないということは私も同意ですわね。」

自我を失った憑依者に囲まれるのはごめんだ。

住人に白い目を向けられている気がするし。


城に着くと厳重な警備があった。門は固く閉ざされ、屏も高い。

エスメトの手紙を見せ、警備に城主を呼んでもらった。

「二度と来ないでください!ワタシは貴方を巻き込みたくなかったから手紙を書いたのに!舞までも協力してぇ」

城主はかなり怒っている様子だ。しかし俺の顔をじっと見て表情が変わった。

「あなた異界のものですね。なら、余計に入れられません」

「お母さん、彼が世界を壊しに来たなら、この人は世界を救う人かもよ」

さっきの少年だ。まさかの横槍に俺は驚きを隠せなかった。まさか今まで道を示してくれたのが領主の息子だったなんて。

「もしかして、彼がアイレーンの子ですか?」

「そうですが、それが何か?」

「ポエ家の力を継いでいるなら、連れて帰らないと」

エスメトは当然のことを言うしかし、

「彼の能力は果てしない、あらゆるものを知ってる、あらゆる場所に突然現れる。」

「彼は"トクベツ"なの。呪われた僕に生まれた呪われた子。」

少年はほくそ笑んだままなにも語らない。

「彼は僕の過去。決して逃げることができない過去。」




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