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崩壊

領主に知り得る限りの現状を話した。その後、俺は領主を連れ、かつての領主の家へと戻る。エスメトはかなり疲弊している様子だ。

「村の民たちよ、鎮まりなさい。」

集落の人々はざわつく。突然現れた放浪者に懐疑的な眼差しを向ける。

「私めは、かつての領主 田道 舞、その人です!」

突然のことに住人たちも驚きを隠せない。それもそうだ。かつて自分たちが追い出した領主が目の前に立っているのだから。小さな子供を領主にし、最後には処刑しようとした。住人たちにも少なからず罪悪感もあったはずだ。

「おかしくなったという方はどこ?おそらく憑依を受けています。」

「なんでお前なんかの指示に従わなきゃいけないんだよ!」

一人の住人が牙を向く。

「オレたちはてめぇらの異形どもの力なんぞ借りなくても、生きていけるんだよぉ」

さらに別の住人も声を上げる。放浪者は俯いてしまった。

それもそうだ住人たちは、あの頑丈な門を自力で作り上げ、この危険な森で生き残ってきたのだ。しかし、内部から崩れ初めてしまった。住人たちは外敵から身を守る術はあっても、内部に発生した憑依者をどうにかする術は持っていない。

「異形の力に対抗できるのは、技術ではなく異形の力です。俺は身をもってそれをこの村で経験しました。」

俺は横槍を入れた。俺の足を癒してくれたのは、医療じゃなく魔女の力だ。

「少しだけ見せてやる。」

住人たちはその言葉に少しだけ心を開いてくれた。


そこには、5人ほどベットの上に縛られていた。全員が正気を失い、悶えていた。

「あの時と同じ。やはり魔の手が広がっていた。」

「どういうことですか?」

俺は疑問を投げかける。放浪者の言葉に頭が混乱する。

「一週間と言ったでしょう?あれはこの村が一週間後こうなると予測していたから。まぁ、魔女の癒しにもそれくらいの時間がかかるというのもあるのだけど。」

「全て読んでたってか?てめぇが仕組んだんじゃねぇのか!」

さっきの住人だ。

「これは単純な予測に過ぎません。外から村を観測していましたから。それに私めにそのような力はもうありません。」

「どういうことだ?」

「先の大戦でこの地の神、私めの一族と契約していた神々は死に絶えました。その後からは私めの知識と分析に過ぎません。」

住人たちはどよめいた。異形の力を理由に処刑を企てた幼子が、力を失っていたのだから。

「嘘つけ、そんなことあるはずない!」

突然の告白に不信感を持った住人が声を上げる。無実の罪で幼子を苦しめた事実から目を背けたいのか、声が震えている。

「では、なぜ悪魔が来るようになったのです?なぜあの牢獄のような門が必要になったと?」

住人たちは押し黙る。


「根本的な問題を解決するためには、戦力と奴らの本拠地に辿りつくための知恵がいる」

「それは私も同意ですわね。」

「頼る人なんているわけ無いでしょ。」

俺は悲観的になる。

「朝間家」

二人が口を揃えていう。

「手紙を見る限り、協力を得ることは難しいと思いますが、やってみる価値はあると思いますわ。彼女ならその両方を持っている。申し分ないですわね。」

3人で朝間家の邸宅へ向かうこととなった。


「真姫今までありがとう。ずっとここに居たんだね。」


「あなた真姫さんが死ぬことも分かってて、放置して、俺を救わせたんですよね?」

俺は放浪者に耳打ちした。


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