昔ばなし
「お主いいものを持っておるな」
老婆はギラギラした目で見てくる。
「近づくな。お、俺は全部知ってるんだぞ!」
コワくてコワくて震えた。恐怖を紛らすために出た言葉は、弱々しかった。
「はて、何を知っておるのかの?とにかくわっちに見せてみぃ。」
老婆は止まらない。
「お前がここの家主を殺したことも、俺やエスメトを殺そうとしてることも!」
俺は言ってたぞ。とばかりに威勢を張る。しかしその目には涙が。
「そなたの本音をやっと聞き出せた。わっちはそなたを殺す気はないよ。本当は自分が生き残ることしか頭にないのであろう。」
老婆は全てを見透かすような目で俺を見る
「そ、そんな事無い!俺は栄のため、、、、」
その言葉は途中で途切れた。
「はぅッ!」
再び強烈な痛みが左足を襲う。
「少し待っておれ、すぐに楽にしてやるからの」
そう言うと、薬を飲ませて来た。抵抗もやむなく、飲まされた。30分ほど経ってようやく痛みが楽になってきた。
「あなたは何者なんですか?薬の知識を持ち、これだけの大きな屋敷を管理して。」
俺は老婆に疑問を投げかけた。
「わっちは何者でもないよ。ただ幼き領主様に救われ、領主様の召使いとして、時には母親として尽くしてきただけさ。少し昔話をしてやろう。」
ある日、山奥に住む魔女の親子がいました。娘はとても美しく、住人からも評判であった。彼らは住人の病気を癒し、町の医者として住民と良好な関係を保っていました。しかし、不思議な力を持つもの何人もが町に来た。そしてその者たちの間大きな戦争が起きた。もちろん多くの住民が捲き込まれ命を落とした。その結果、住人たちは不思議な力を恐れ、排斥しようとした。魔女の親は火炙りにされ、家にも火を放たれた。魔女の娘は、住民を酷く憎み何人もの住人を呪い殺した。魔女の娘は、その代償に美貌を失ってしまった。肌のツヤは失われ、髪を白くなり、次第に抜け落ちていった。そこに領主が現れた。領主は幼いながら、父の跡を継ぎ、その手腕を発揮し、領主として着実に地位高めていっていた。領主は、そんな私に手を差し伸べた。その力を貸してほしいと。魔女の娘は、領主の元で、力を発揮し、地位を高めて行った。しかし、住民の"力"への憎しみは領主へと向かった。幼き領主は処刑が決まった。魔女の娘を恩を返すため、住民を欺き森へ領主を逃した。魔女の娘は、呪い殺されることを怖れた住民のおかげで難を逃れ、村の外れに住むことを許された。魔女の娘は今もなお小さな主の帰りを待ちわび続けているのであった。
「この監獄じみた集落に伝わる昔ばなしじゃよ。」
俺は驚きを隠せなかった。集落でそんなことがあったなんて。
「1週間じゃ、その間にそなたを歩けるように、わっちがする。だが、根本的な解決をしなければ、すぐに痛みと共に、走行不能になる。」