さようなら、また会えたらいいな
「待って。」
「世界を分ける必要なんてきっともうないよ。アタイはそう思う。」
「きっと最初の歪み、歯車のズレはそこから。」
「でも、きっとそうすればまた!」
「こうして、神に最も近い空輪の者達と神から最も遠い地輪の者達が手を取り合ってここにいる。それだけで分ける必要がない理由だと俺は思います。」
「そうだね。でも、ボク《アタシ》と死者と生きる世界は違わなければならない。それが理だから。アタシ《ボク》たちの比では無い繁殖力を持つ人々の世界は寿命がなければ簡単に崩れてしまう。でも今の君たちならきっと大丈夫だよ、死をも乗りこえていけるそうボク《アタシ》は思うよ。それに、きっとあらゆる神々はこの旧世界に還る。統率する神王がいなくなるからね。力がなくなってもいいのかい?」
「大丈夫。僕たちは頼り過ぎていたんだと思う。だからこそ、僕たちは迷った。だからこそ、辛く終わらない代償を払うことになった。人の道を踏み外した。他人の力で誰かを救っている気になっていた。」
再び大きな揺れが起こる。世界の分離が始まったんだ。
「私はどうすれば。咲、長美。そこに居たんだね。こんなことしなくても、ずっと君たちは私を待っていてくれたんだね。それだけで十分だった。咲ごめんね。私はなにもわかって居なかった。あなたはもっと生を謳歌出来たのに。」
「大丈夫。もっと辛い悲しみがその先にはあったから。殺してくれて、楽にしてくれてありがとう。」
眩しい2つの光る人影と共に空へ再びアイレーンは舞い上がっていく。
「舞、あの時助けられなかったを、止められなかっただからこそ君を苦しめてしまった。ずっと謝りたかったんだ。」
「剛!あなたと出会ったこと、ああなったこと全部いまは後悔してないわ。力がなくてもアタイはアタイなんだって。あなたのことお父さんみたいだって思ってた。本当のパパよりも。誰よりもアタシを受け入れてくれた。あの時、ついていきたいって言ったのは、知りたかったからじゃない、あなたたちに惹かれたから。」
「舞、村の責務などなくても舞は生きてくれる。それを伝える間もなかった。本当は誰よりも村を思っていたのを気づいていたのに。」
「お父さんもアタイのことずっと影から見守ってくれてたんだね。お父さんのようにはできなかった。でも大丈夫アタシの居場所を見つけられた。そうよ、真姫も、長柄も、速人も、エスメトもいる。それだけで十分。アタシには生きる場所がちゃんとあった。」
「あなたのこと騙してたのは私もだったの。私は私が学校の女王になるためにあなたを利用した。でもあなたのことずっと忘れられなかった。」
「栄、僕も君のこと忘れないよ。先生にもよろしく伝えてほしいな。」
「もちろん。生まれ変わったら、速人じゃないあなたと出会いたい。」
「時間切れだな。」
速人が光に包まれていく。
「速人くんそんな。やっぱり行っちゃうんだね。」
悲しいでも、僕には留められない。送り出したい、そう思った。僕の願いはきっと速人に押し付けるものじゃない。
「さようなら、また速人と会えたらいいな。また会えたら、僕と友達になってくれる?」
「もちろんだよ。」
ごめん。やっぱり押し付けちゃった。それでもこれがずっと気づけなかった本心の叶え方だと思う。ちゃんと話せばそれでよかったんだ。そんな簡単にずっと気づけなかった。
目に雫が流れる。
「もう俺のために苦しまないでくれ、涙を流さないでくれ。」
俺の涙を拭き、速人くんは消えていく。
「きっともう、君は迷わない、願いと代償に振りまわされることもないよ。わっちが保証する。」
真姫が後ろから僕を優しく包み込む。
「そうだね。」
新たに繋がった世界で、長柄、エスメト、舞、真姫3人は再び歩き出す。
穢れなき空輪、色欲にまみれた風輪、戦いの絶えない火輪、貪り続ける水輪、あらゆる穢れを持つ地輪その全てが一つになった。
「神がいなくとも、僕たちは進んでいける。自らの手で願いを叶えられる。」
いつかの遠い未来
「桂先輩!」
俺は後ろから突然抱き付かれた。
「やめろよ、お前。」
俺はずっと執着してくる早乙女という怖いやつだ。これでも生徒会会計らしい。
「まーたいちゃつき上がって。」
こいつは大原俺の彼女だ。
「ここでいちゃつかないでもらえます?」
大塚真面目な人だ。生徒会で副会長をしている。
「相変わらず元気だなお前たち」
長岡先生、生徒会を担当している先生だ。
「早乙女くんまたセクハラかい?感心しないなぁ。」
早乙女のクラスメイトの宇治だ。母性の塊なのか、からかってるのかよくわからない人だ。
「ほんとにねー」
生徒会書記鳥羽だ。何のかんの言って早乙女に構っている。
個性的なメンバーに囲まれて凄く疲れる。でも凄く楽しい。明るく輝いた世界に俺はいる。ここは決して暗闇に包まれた世界じゃない。
「なんでまた引合せちゃったんだろうボク《アタシ》。アタシ《ボク》自ら理を破るなんて。」




