別れと出会い
「これが、おじ様が残した日記ですのね。」
アイレーン家の当主でありながら、遠い異国の地から帰ってくることのなかった人。あれから10年経った。その異国は戦争の末、荒廃していると聞く。ポエ様は死体の一片も帰ってこなかった。しかし、つい前日小包が届いた。
そこには、手紙が添えられていた。
私は朝間長美あなたのおじのポエの伴侶だったものです。あなたには真実を知って欲しくて、彼の手帳をお送りいたしました。まず彼との馴れ初めから話させていただきますね。彼が事の発端となった教会に彼が来た時、私はまだまだ幼かった。忙しい父とおかしくなった母に代わって親のような存在でした。妹の咲と共によく教会に遊びに行きました。今思えばそれが事の始まりだったのかもしれない。教会では不思議なことがたくさん起きました。咲は気づいていない様子でしたが、幼女の笑い声が聞こえたり、全く知らない場所や少年が脳裏に浮かんだりと。私が成長するにつれ、お互いを意識するようになった。嫉妬深い咲には悟られないように。その裏で私の身に起きる現象はどんどん悪化し、身体はボロボロになっていった。夢遊病に、ポルターガイスト、身体能力の異常なまでの向上。
そんな時、教会で見た少年によく似た男性が現れた。運命だとも思った。咲と一緒に旅に出ると言ったのも悔しかった。気付いた時には、みんなボロボロだった。みんな私と子供を置いていった。ポエは死ぬと分かっていて、私と契りを交わしたのだと思う。信じてもらえないかも知れないが、先の大戦は人ではなく、神の戦いだった。神は人に憑依することで力を与え、その対価として命を喰らう。心が不安定になれば、意識さえも掌握されてしまう。もしあなたが、ポエと同じ力を持っているなら、決してその力を使わないで。その力大きければ大きいほど、代償は大きい。そして、この地に決して来てはだめ。あの悪魔はまだ消えてない。
「ワタクシにも、受け継がれているこの力。そんな代物だったとは、、、、でもワタクシには、おじ様に何があったのか、次期当主として知る義務がありますわ!」
そう決意したエスメトは馬車を呼ぶ。
「、、、、、、日記の通りに行けば、到着できますわよね、、、、、
ターミーの森を抜けて神薙国へ!」
「お嬢様何をおっしゃっているのですか!ターミーの森は悪魔の巣窟、それに神薙国は先の大戦から復興が進んでいないという話ですし。お嬢様が行かれる必要のない所です。、、、まさかポエ様を探しに行かれるつもりですか??」
執事はエスメトを止めようと必死な様子だ。それもそうだ当主が一人行方不明になった地に、行かせたがらないのは仕方のないことだ。
「、、、、父上と母上が帰る前に出してちょうだい。」
そうエスメトが言うと馬車が動き出す。
「お嬢様、私めがご両親には誤魔化しておきますが、一ヶ月が限界です。」
執事は覚悟を悟ったのか、それ以上何も言わなかった
「また迷惑かけるわね、じいや」
エスメトの言葉は、馬車の音に掻き消された
旅を初めて、一週間経っただろうか
「お嬢様おかしいです。ターミーの森が広がってる。」
そういうと、馬車を停める。
「どういうこと?」
エスメトが問い掛ける。
「ターミーの森はもっと先のはずなんです。」
「ここは手前の森じゃないの?」
「いえ、ターミーの森は植生が特殊で、間違えるはずがない。とにかくお嬢様ここから馬車は通れないので、私はこれ以上お供できかねます。」
エスメトが降りると運転手は真っ青な顔をして足早に帰って行った。
ふにゅっ
「え?何か踏みまして?」
「ぐはっ」
そこには成人男性が横たわっていた。どうやら溝うちを踏んでしまったようで、ふんぞり返っている。
「いやあああああああああああああああああああああああああああ」
「ああああああああああああああああああああああああああああああ」
お互いに状況がわかったようで悲鳴をあげた。
こうしてエスメト(16)と異世界転移者 星宮 速人(18)の旅が始まった。