プロローグ
「くくく、この俺を倒していい気になるなよ勇者よ…。俺は魔王軍四天王の中でも最弱。せいぜい足掻くがいい……!」
意識が薄れていく中、何とか捨てゼリフ言えたことに俺は満足していた。
「お前が、最弱だと……?」
俺の言葉に目の前の血だらけの男が驚いた表情をしてみせた。そうだ、俺はその表情が見たかったのだ!
「せいぜい足掻きな、勇者様よォ!」
そう言って俺は、勇者の剣の力によって光の粒子へと分解されてしまった。
痛みは無かった。むしろ暖かい光に包まれて心地よいとまで思ってしまった。
魔王軍四天王第二席。暴食のグラト
勇者には悪い事をしてしまった。別に俺は最弱ではない。……だって一番最初に倒された四天王の役割みたいなものじゃない? 最弱名乗るのってさ。それになんか言ってみたかったし。
実際のところは四天王の中では二番目の実力。ある状況下では一番強い自信はあるが……。
七つの大罪【暴食】を司る悪魔が俺の正体。別に暴食だからってデブではない。身長は170センチぐらい、体重は58キロの痩せ型。見た目は普通の人間と変わらないが、背中に黒い羽と頭に角が生えているのが特徴。
まぁいまから消えるんですけど……。
来世では人間にでもなってみたいな。来世があるかわからんけども……。
そう言って悪魔は跡形もなく光になった。