42話「スーパームーン」
「ああ、うん。いやいや! 気にしなくても大丈夫だって、本当に! え? お詫びに? 全然大丈夫だって藤坂の方こそ頑張ってくれ。うん、明後日を楽しみにしておくよ」
俺はため息を吐いてスマホをベッドに置いた。
あの後、藤坂の家から自宅に帰っていつも通りご飯とお風呂に入り自室に戻ってきたところで丁度藤坂から電話があった。
「マイちゃんはなんて言ってたんッスか~?」
「あぁ、明日は急用ができて一緒にトレーニングができないだってさ」
「それは残念ッスねぇ~」
ロールはテレビからこっちに視線を向けて首を横に振った。
丁度『勇者アルトルムの冒険』が終わったらしい。
「そうだなぁ。藤坂も凄く残念そうだったよ」
「マイちゃんめっちゃ張り切ってましたもんねぇ~。そりゃあがっかりしてるッスよ」
「ということで明日は暇になった。何かするか?」
テレビのリモコンを操作して、適当な番組を見る。
この時間は大体どこのテレビも夜のニュース番組をやっていた。だから積極的に見たいわけじゃないけれど、無音なのも少し寂しい。
「そうッスねぇ~」
腕を組み悩み始めるロールを横目に俺はテレビ画面に視線を移す。
テレビ画面には美人なニュースキャスターとイケてる司会者がトピックを話していた。
「今年の夏はやっぱりスーパームーン! なんと、今年の月は数百年ぶりのサイズだということです! 楽しみですね~!」
「あっ! この町のことがもっと知りたいッス!」
ニュースの音声に被さるようにロールが提案した。
町のことがもっと知りたいか……。
確かにロールは五年前の事件を知らないくらい町について何も知らない。なら、改めてこの町をロールに紹介することも必要か。
「じゃあ明日は町を探検でもするか?」
「探検ッスか!」
ロールの目が輝く。
こういうワクワクしそうな言葉に彼女は弱い。俺は首を縦に振った。
「ああ、ついでにメアリー・スーも探したいしな」
「メアリー・スーちゃんッスか……」
「どうかしたのか?」
メアリー・スー。夢を叶える力があるという少女。
五大獣と呼ばれている超強力な想造獣の一角……らしい。
その少女が今のところ俺たちが唯一知っている手がかり。どうにかして彼女ともう一度会ってロールについて問い糾さないと。
けれど、ロール当人の顔色は優れない。
「いえ。あの時はマイちゃんを助けるために精一杯だったッスけれど……あの子はあの子で何か思い詰めているような様子だったじゃないッスか」
「ああ、確かに」
「あの子がしようとしたことは許せないッスけれど……でも、もしあの子がどうにもならないくらい悩んでいるなら」
「なら?」
「力になってあげたいッス!」
「……」
予想できていたその言葉を聞いて、俺は笑った。
このお人好しならそう言うだろうな。
あんな幼気な少女がそこまでして伝えたいことがあるのかもしれないし。俺だってできるなら、どうにかしてあげたい。
「そうだなぁ、メアリー・スーを見つけたら今度は最初から敵として接するのはやめようか」
「流石センパイッス!」
「さてと、じゃあ明日は探検とメアリー・スー探しだな」
「おーっス!」
ロールの元気な返事が夜の自宅に響いた。




