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伽藍の龍  作者: KOUHEI
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カブール2

ジークは踊る女と金を無心している、二人の子供から離れて角を曲がったところで何気に立ち止まり、そっとも物陰から顔をのぞかせて確認した。


踊り子の踊りに魅せられて、立ち止まる男たちの懐は、安全な町中に居るという安心感で緩い。

男たちの目は小銭を袋から出しながらも、踊り子に釘付けである。


「フーン、あの女が道案内人。か」アークインの者が若輩者に、道案内もつけずに送り出したりしない。

ジークは懐にある袋をもてあそびながら、待ち合わせでもしている風を装った。


「しかしなぜ子供なんだ。で、道案内が女」ぼんやりとした目で周囲を見回し、待ち人が来るであろう方向をじっと見つめる。小さな町なのに人通りは多い。荷を積みなおす者にその積み荷を分けてもらえないかと交渉するものや、その交渉で値がいくらになるか様子を伺うものなど宿屋や料理屋の店先はちょっとした商売が繰り広げられている。


ジークはその商売のやり取りを見ている風体で、目は舞う女と子供らを見ていた。


山で見捨てた子供が活発に金をよこせと動き回っている。

「俺の時とはずいぶん態度が違うなあいつらは」ジークはちょっとだけ安堵感を覚えた。


人寄せして情報を集めるという手は、女が考えたのだろう。いく先々で路銀を稼ぎ、情報も得ることができる一石二鳥を子供に教えて居るようだ。


「守り人兼案内人」が居れば子供らは楽に旅を続けられる。


ジークのような能力の低い者は、薬草や香料に頼って死霊どもを寄せ付けないようにしなくてはならないが、旅慣れた守り人が居れば死霊の徘徊する場所には近寄らずに済むのだ。


女がタンバリンを掲げて打ち下ろすと、その音が舞の終わりの合図で、足早に子供らは貰ったお金を帽子に突っ込み、踊り子の両脇に並ぶと三人で挨拶をした

アディは荷物を引っ張って肩にかけ女を見上げる、シグルは女の塵除けのマントを女に差し出した。

りっぱな腰ぎんちゃくを二人はしている。


観客は肌を隠した踊り子にはを興味を失い、食事処や宿屋へ、と散っていった。


荷物を背負った踊り子と子供二人に、肩当と胴巻きの簡単な装備をした三人の屈強な男が近づいていた。

男らに嫌な感じを覚え、引き続きジークは物陰から男らと3人が立ち話を始めた。


どうやら男等はこの町の護衛の兵士らのようで、踊り子を兵舎に呼び寄せ酒の席に誘っているようだった。

女は断っていたが金を握らされると、不承不承と言った体で金を懐に入れた。、兵士らが去ると女と子供二人は荷物を背負い丘の中腹にある駐屯所に向かって歩き出した。


「なんだ宿も決めずに、また稼ぎに行くのか」

ジークは案内人の女があの男らの要求を、龍の力を使わずに切り抜けることが出来るか見て見たくなった。

「あいつらどう見ても、胡散臭い。しかも胡散臭いとわかっているのに、あの女は行くのか?」これはなかなか面白いと、女と幼児の後をジークは付けることにした。


うまくいけば女が龍の力を使う所を見られるかもと、思うと是が非でも女の後をつけたくなった。


龍族の者は力の使い方を頑なに隠す。

石切り場に行けば見られると思うが、その仕事に就くのは能力のある限られたものだけである。

ジークは己の力は何かのきっかけさえあれば、自在に使えるようになると言った教授の言葉を信じていた。

港町の一直線の上り坂を、上り詰め。女と子供は右に曲がり見えなくなった。

「虎どもとキツネの巣窟っての頂けないね」へらへらと左右の家並みを見物するふりをしながら

突き当りの焼きレンガの壁を見上げる。

右手の奥に壁の先には、丸太を組んだ大きな扉がある。その開いた隙間から女と幼児が入って行った。


扉付近には見張り番の小屋もなく、見張りもいないのを確認して人通りが無いのを見計らって丸太が組まれただけ荒い大扉の中へジークは入った。


入った右手には二階建ての粗末な建物が二棟並んでいる。二階建ての建物の並行して土と岩とを重ねて盛り上げた高い塀が左右に延びている。

土塀には手前の建物ができる前は住居として使用していた杭が突き刺さり、屋根替わり草が幾重にも重ねてあったが、今は穴が空き修理もせずに放置されたままだ。


何処にも人の気配がないことを確かめて、二階建ての建物の窓枠下の茂みに潜り込んだ。

この駐屯地はどこもかしこも背の高い草だらけである。

「くっさい」の、声と一緒にジークの上の窓板が開かれた、アデルである。

気配を消していたジークは一瞬見つかったかと焦ったが、そうではなかった。

キンキンと響く子供の声が、

「この部屋で寝るのか、ここより森の中で寝てたが良くないか」

「森の死霊の匂いと、この部屋の臭いのと、どっちがましかって言えば、どっちも嫌だ。」

「あいつらあの「はぐれ」をどこに連れて行ったんだろう。見た目は色っぽいねぇちゃんだから騙されてやがるな」

「本当のことを言うんじゃないぜ。俺たちは黙っていればいいんだよ、」

「明日の朝にはこんなところもおさらばさ。あー店で何か買って来ればよかったな。旅団子は飽きたよ」

アデルが窓際から離れると話し声も小さくなった。

草の中で座って、女の居場所はどこだろうと考えて居たら、左手の朽ちた建物の間から二人の兵士が出てきた。

頭を低くして草の中に身を隠し聞き耳を立てる。

「隊長殿、あの置き石は何ですか。」重い物を持たされて不服の男が小声で尋ねる。

「いにしえの結界だ」

「結界?そんなもの古代の人のまじないじゃないですか。ひゃひゃ」

「女が共も連れずに旅をするか。ありゃめっけもんだ、噂じゃはぐれ龍が居るってよ。あれだぜ」

「はぁ、龍族のことですか。ホントにいるんですかね。誰も見たことが無いし、古代に滅んだってのが通説ですよ」

「馬鹿、一番強い龍族が滅ぶか。俺たちが生き残れたのに龍族が生き残れないわけがなかろうに」

「うーーん、さいでがすかね」虎の能力がありながらキツネ族の隊長には、どっちつかずのことを発して逆らわない。

兵士は虎族ではあっても考えるという事は苦手だ。

利がありさえすればそれでいい。今はこの隊長の計画で面白いことが起こり、自分も含めて手柄が立てられる。



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