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とちゅうのさいご

「そう言う訳で特訓を始めます」


一通りひなせエキスを吸収した2人は、本来の目的を思い出したようである。


ジャージにハチマキ。手には竹刀といういかにも特訓!という格好した耀子は、そう言うとホワイトボードに計画書を貼りだしていく。


「どういう訳なんだろ?」


ひなせが頭の上いっぱいにハテナマークを飛ばす。

全く持って意味が解らない。


「まぁまぁひな姉、とりあえずはこのバカの言う通にしておいてよ。悪いようにはしないからさ……しないよな?それともう少し詳しく説明しろこのバカ」


一応耀子の発言を取りなしているかのようだが、その目は笑ってはいない。


「バカバカ言うな、このバカ。でもそうね、最初に簡単な説明をするわね」

「うん、お願いできるかな?」

「最初からそうしろっての。いきなりすぎんだよ」

「うっさい。ん、まぁ話は簡単なの、今度学園選抜って試験が全学生を対象に行われる事になったの」

「そうなんだ」

「で、そこで上位に入ると、今後色々と学内での便宜が図られるのよ。あ、これはこの3人以外には内緒にしてね」

「うんうん」

「でね、あたしは座学の方は良いんだけど運動がね、知ってるとは思うけどちょっとね。そこのバカは逆に運動は良いんだけど座学がね」

「……バカバカ言うなよ」

「で、3人で特訓してみんなで上位を目指そうって訳なの。で3人一緒に夢の宇宙産業への就職を目指そうって訳ね」

「なるほど、そう来たか」

「ん?なに?」

「何でもないよ」


ぼそっと独り言を言う飛鳥を耀子が睨む。ここでひなせに不審を抱かせたら全てが水の泡だ。ウザイ飛鳥に頭を下げて協力させてるのも無意味になってしまう。

こんな初っぱなでつまずく訳には行かない。

ひなせは普段、こういう不正じみたずるを許す事はないのだ。そしてそれがもしひなせを上位に送り込むという物であったなら、きっとうんとは言わなかっただろう。だからこそのこの計画である。


耀子には鎌形赤血球症という持病があった。この日本人には珍しい病は、むごい貧血を伴う。その為耀子は運動を行う事が殆ど出来ないでいる。ひなせ達が目指す宇宙産業に進むには絶対的な体力が足りない。

飛鳥は飛鳥で体力は有り余るほどある物の、この大学に入れたのが奇跡ではないかというレベルの頭脳である。実際入試の時点ではほぼ落第確実だったのだが、フィジカル面での優位が認められ入学が許されたくらいである。

だからこの2人が今後順調に進路を進める為にこの試験を最大限利用しなければならない。

という筋書きでひなせを説得したのである。


「そういう事かー……うーん、ホントはそう言うのいけないと思うんだけどなぁ、特に飛鳥はちゃんと勉強すれば問題ないと思うんだけど……」

「それは出来る人の発言だと思います……」

「そんな事ないと思うけどなぁ……」

「ともかく、あたし達2人を助けると思って一緒に特訓してくれない?」

「仕方がないなぁ……今回だけだよ?」

「うん!うん!今後はもっと勉強して運動面での不利を取り返すくらい頑張るから!」

「あー俺ももちっと勉強するわ」

「2人ともえらいえらい。いつもそれくらい仲が良いと良いのにね。じゃ、今回はさんにんでがんばっていきましょー」


なんとか計画を悟られずに済んだ事にほっとしながら、耀子ははしゃぐ。飛鳥はまだあまり乗り気ではないようだが。解らないでもない。飛鳥は耀子ほど自分の事を割り切っている訳ではない。しかしきっと理解はしているはずだ。この計画が必要であるという事を。

そしてやるとなったら、この中で一番真面目に取り組むひなせである。ここまで来ればもう問題はないも同然だ。

一歳年上のひなせだが、座学に関して言えば耀子の方が上である。であれば問題なく指導する事が出来る。

運動に関しては飛鳥のトレーニングで充分間に合う。頭が良くないと言っても耀子やひなせに較べての事であり、試験が危うかったのもこの大学が難関であるという事なのである。それにスポーツ科学に関して言えば耀子をもしのぐだけの知識があるのだ。

間に合う。実施まで3ヶ月。充分に間に合うはずだ。なんとしてもひなせを上位に送り込むのだ。

そうすれば……そうすれば、もうこっちの物。ひなせを「留学」に送り込めば。そうすれば……

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