とちゅうのとちゅう
翌日、ひなせは飛鳥と耀子の連名で呼び出された。
珍しい事もある物だと思いつつもやっと2人が仲良くしてくれたのかな?などと的外れな事を考えながら、指定のジャージに着替えて待ち合わせ場所である耀子の部屋へとやってきた。
「おまたせー。ごめんね少し遅れちゃった」
「ん、そんなに待ってないから大丈夫……」
「だめよ、ひなちゃん!時間は厳守、ちゃんと守らないとダメ!」
「え、あ、ご、ごめんなさい……」
「あんたも、ひなちゃんを甘やかしすぎちゃダメ」
「……あぁ」
耀子がひなせを叱る。いつもは飛鳥・耀子ともに少し遅れたくらいでこんな事にはならないのに。いつもと違う様子の耀子。最初こそいつも通りだったのに、耀子に反論する事もなく受け入れる飛鳥。
「飛鳥、耀子ちゃん、ほんとごめんなさい。本当にごめんなさい」
「……」
「……」
いつもなら飛鳥と耀子の間で言い合いが始まり、ひなせが終わらせていた。そんないつもの楽しい毎日。けれど、今日は飛鳥が何も言わない……
「……」
「……」
無言でひなせを見つめる2人。
「えと……怒ってる?」
無言で肩をふるわせる2人。
「ね、ねぇ、なにか言ってほしいな?」
「だ、ダメだ……」
「えぇ、ダメね……」
「え……」
2人にダメと言われた。
遅れたのがそんなにダメだったのだろうか?そんなに2人に怒られる事をしてしまったのだろうか?ひなせの顔が青ざめる。
「「可愛すぎる」」
声を合わせる飛鳥と耀子。
「え?え?」
意味がわからないひなせ。
「ごめんねぇ、ごめんねぇ、厳しい事言ってごめんねぇ」
「そうだ、ひなせを虐めやがって、こんなん耐えられるかっ!」
「え?え?え?」
「あたしだって耐えられないわよ!何当たり前の事言ってのよこのバカ!」
「だよな耐えられる訳ないよな、こんな可愛いひな姉を怒るなんて出来るかってんだ。それはそれとしてバカって言うなバカ」
「え?え?え?えーーー?」
全く意味がわからないひなせ。2人になすがままにされている。
結局この小動物のようなひなせを、溺愛して溺愛して溺愛している2人が、厳しく接する事など出来るはずがなかったのである。
しばらくの間、頭の上にハテナマークを浮かべたまま2人になすすべもなく抱きつかれているひなせであった。