アウタム国編3
時は遡る。
ここは昔のアウタム国王都。王都のすぐ隣には貧しい村があった。その村は風が吹いたら倒れてしまいそうな家。奴隷の様に農業畜産をやらされる人々。せっかく作った作物も肉も大半が王都に持っていかれる。人々には生気がなく、犯罪は日常茶飯事だった。そんな村でコルタとベイシーは生まれ落ちた。
ベ「お兄ちゃん。お腹すいたよぉ。」
コ「ごめんな。今日はこれしかないんだ。お兄ちゃんのやるから我慢してくれ。」
ベ「そんな事したらお兄ちゃんが死んじゃうよ。」
コ「大丈夫。また働いてくるから。」
ベ「そうやっておとうさんもおかあさんも居なくなったじゃん!お兄ちゃんまでいなくならないで!」
コルタはベイシーを抱きしめた。
コ「大丈夫だ。お兄ちゃんは絶対にいなくならない。」
ベ「約束だよ!」
コ「ああ。約束だ!」
次の日の夜
ベ「お兄ちゃん今日も遅いな…そうだ!食べ物取ってきたらお兄ちゃん喜んでくれるよね?」
ベイシーはたくさん荷馬車が停泊している場所に向かった。そこでは兵士や村人が慌ただしく働いている。子供のベイシーはバレない様に荷馬車の荷台へ潜り込んだ。
ベ(食べ物だ!たくさんあるから少しくらいいいよね?)
「出発するぞ!」
食べ物をこっそり袋に入れている時荷馬車が動き出した。
ベ「え?」
コ「ベイシーただいま…あれ?ベイシー!ベイシー!?」
家に帰ったコルタはベイシーがいない事に気づいた。
(誰かに攫われたのか?…いや、そんな事してもいいメリットはないし物を入れる用の袋がない。もしかして!)
コルタは荷馬車の所まで走った。
(どこだ?どこだ!?)
必死にベイシーを探す。すると、王都の方へ走っていく荷馬車の隙間にあたふたしているベイシーがチラッと見えた。大人に見つからないように闇夜に紛れて村を出た。幸い馬車の速度は遅く、なんとかベイシーの乗っていた馬車に追いついた。その馬車は後続にも馬車がいた為、コルタは後続の騎手が気をとられるように、自分と反対方向に石を投げた。
「なんだ?」
騎手が気をとられている間にベイシーの荷台へ乗り込んだ。
ベ「おにうぐっ!」
コルタはベイシーの口をふさいで静かにと合図を送った。ベイシーは首を縦に振った。
コ「静かに聞いて。今から外に出てても見つかるだけだからこのままで行く。なんとか隠れてやり過ごすんだ。いい?」
小声でベイシーに語りかけた。ベイシーは頷いた。やがて馬車は王都へと入った。門での検問はなくすんなりと中に入り込んだ。荷物を降ろす場所に着き、騎手たちが兵士に書類を渡す為に荷馬車から離れた。そーっとコルタは周囲を見渡して安全を確認した後に荷台から降りた。
ベ「わー!綺麗!」
ベイシーは王都の街並みに目を輝かせていた。村は夜の明かりはほとんどない。王都は夜にもかかわらず明るく、そして綺麗な街並みだった。コルタも一瞬目を奪われた。王都は大きな壁で見えない為、初めての光景に胸躍らせてしまったのだ。コルタは我に返りベイシーの手を引っ張ってその場を後にした。なるべく暗い道を進んだ。その内大きな壁が見えた。
コ(馬車の進んだ方からしてこっちが来た門のはず。)
探しているうちにコルタ達が入ってきた門にたどり着いた。まだ馬車が行き来しており、門が開いていた。
コ「良かった。ベイシー、次に村に行く馬車が来たら飛び移るぞ!」
ベ「分かった。」
その時がやって来た。
コ「行くぞ!」
ベイシーの手を引っ張って飛び出した…が、兵士に後ろから引き留められた。
ス「お坊ちゃま。お嬢様。こんな夜遅くにどこに行くんですか?」
その兵士はスーンズだった。
コ「いや…その王都の外を見てみたくてな。」
ス「そうですか。ですが夜分遅いですので明日の明るい時間に行かれた方がよろしいかと存じます。」
コ「そうだな。そうするとしよう。」
振り向いて立ち去ろうとする。
ス「失礼だとは思いますが、どこの家柄の方でしょうか?」
コ「え、えーっと、うっ!」
コルタが何か言おうとした時スーンズがコルタのお腹を蹴り、コルタは壁に激突した。
ベ「お兄ちゃん!」
ス「こんなみすぼらしい恰好をした貴族。いや、この王都中どこを探してもいませんよ。少しからかっただけだ。」
コ「ゆ、お許しを!もう2度とここへ来ません!」
ス「お前らも知っているだろう?プノヒ村の連中は奴隷以下の扱い!ゴミ同然!何をしても許される!ま、汚いから誰も近づこうとしないがな。」
コ「ですからお手を煩わせるわけにはいきません!出ていきますのでお見逃し下さい!」
ス「いや。私直々に浄化してやろう。幸せに思え。」
ベ「やめて!」
コルタの前に立ちふさがる。だが、スーンズは表情一つ変えずに片手斧を取り出し構えた。
ベ「いやー!」
?「お待ちなさい!」
そこで声をかけてきたのは子供のマロネだった。
マ「お父様お母様。わたくしの為に生誕祭を催して頂きありがとうございます。」
父「それは可愛い娘の為だからな!」
母「そうよ!1年に一回の特別な日ですからね!」
マロネ達が歩いていると壁に子供が飛んできた。コルタだった。
マ「お父様!お母様!兵士に子供が虐められています!助けなくては!」
父「ん?あの恰好。奴隷以下の存在だな。助ける必要はない。」
マ「なぜ助ける必要がないんですか?」
母「それはね。身分が違うからよ。」
マ「身分って何ですか?身分であの子たちはひどい目に遭っているんですか?」
父「その通りだ。大人になったら分かる事だ。」
マ「…なら大人になんてなりたくないですわ!」
マロネはスーンズに向かって言い放った。
「お待ちなさい!」
両親は何をしているんだという顔でマロネを呆然と見ていた。
ス「ん?これはお嬢様。すみません。お見苦しい所をお見せしてしまい。すぐに終わらせますので!」
マ「待ちなさいと言ってるの!」
ス「どういう事でしょうか?」
マ「その子たちを解放しなさい!」
ス「しかし、この者たちはプノヒの身でありながら王都に侵入したのです。過去に侵入を許し、貴族様方を誘拐する事件も起きており、国の取り決めで処罰の対象です。」
マ「だとしてもその子たちはまだ子供よ?酌量の余地ありよ!」
ス「お嬢様。どこの方かは知りませんが、仕事ですので。」
マ「わたくしはタースラ家マロネ・タースラよ!」
ス「あの名家の!?」
マ「ええ。タースラ家として命ずるわ。その子たちを解放しなさい。」
ス「それは従いかねます。いくら名家といえど、これがこの国の取り決めなのです。」
父「マロネ分かったろ?さあ行くぞ!」
マロネを連れて行こうとする。
マ「こんなのおかしいですわ!かのヘラクレス・ナスパイムだったらこんな事許さない!」
母「申し訳ないわね。兵士さん。あの英雄譚が好きで影響されてますの。」
ス「いえ。お構いなく。私にもそういう時期はありましたから。」
(私のやっていることは正しい。なぜなら国が決めていることだからな。私が正義だ!)
再び武器を構え直した時だった。
「そうよ!タースラ家の言う通りよ!子供なんだから許してあげなさいよ!」
とそこら辺にいた観衆たちから声が上がった。
ス「い、いや…私は国の取り決めで…。」
「それがなんだ!?人の心はないのか!?」
ス「…。」
(なぜこの私が責められているんだ?お前らだって奴隷使ってるくせに何が人の心はないのか?だ!くそ!)
スーンズが佇んでいると、マロネが両親の手を振りほどいてコルタ達の所へ来た。
マ「あなた達。わたくしの誕生祭に招待していた子よね?」
コルタとベイシーは顔を見合わせた。
コ「そうです。」
マ「ならあなた達はわたくしのお客人ね。兵士さん。あなたもこの子たちを無下に出来ないわよ?」
ス「さ、左様ですか。」
マ「さあ行くわよ!」
マロネ達はスーンズの元から去った。スーンズの心は怒りで満たされていた。
ス(この私に恥をかかせてくれたな。あのガキ。覚えたぞ。マロネ・タースラ。)
父「なんで連れてきたんだ?こんなみすぼらしい子供を連れていたら私達の名前に傷がつくだろう!」
マ「あら。それなら綺麗にすればよろしいのでは?それに名前が傷つくのですかね?」
観衆たちはなんて器がでかい貴族なんだと称賛していた。
父「ごほん。分かった。今日だけだぞ。」
マ「ありがとうございますお父様。」
コ「ありがとうございます!」
ベ「…ます。」
母「そうと決まれば早々にメイドたちに綺麗にしてもらわなくちゃね。」
マ「はい!」
マ「そういえば名前を聞いてなかったわね。わたくしはマロネよ。今日で10歳になるわ。」
コ「コルタです。僕も10歳です。でこっちが妹のベイシーです。妹は5歳です。人見知りであまり喋れないですが、よろしくお願いします。」
ベ「…ます。」
マ「そう。コルタとベイシーね。よろしく!さあここが家よ!」
大きな屋敷に着いた。
ベ「す、すごい!」
コ「ほんとに!」
一行は屋敷の中に入った。マロネは執事とメイドにコルタとベイシーの身支度を整えてと指示をした。コルタとベイシーはお風呂に入ったり、ドレスアップされた。
コ「変じゃないかな?」
マ「2人共見違えたぞ!特にベイシー!可愛いなぁ!」
ベイシーを抱きかかえた。
ベ「えへへ。」
少し照れ臭そうに笑った。そこにヨークがやって来た。
ヨ「マロネ様今日はお誕生日おめでとうございます。」
深々とマロネに頭を下げる。
マ「ありがとう。紹介するわ。新しい友人のコルタとベイシーよ。そしてこっちがヨーク。わたくしの護衛…見習いと言った所かしら。」
ヨ「よろしくお願いします。コルタ様。ベイシー様。」
コ「これはご丁寧に!よろしくお願いします!」
ベ「…します。」
ヨ「会場はこちらです。」
マロネ達は会場へと向かった。
父「さあお待たせしました!わが愛娘マロネです!」
階段からマロネが登場した。招待されているお客さんたちから拍手喝采が起きた。マロネの父は客人に静かにするようになだめた。そしてマロネが口を開く。
マ「皆様わたくしの誕生祭に来ていただきありがとうございます!わたくしは今日で10歳になりまた1つ大人に近づきました。貴族として、人として恥ずべき行為をしないよう成長していく所存です。皆様。わたくしを見守っていて下さい。そして、力をお貸しください。皆様に祝福があらんことを!」
再度拍手喝采が起きた。
父「皆様それでは祝杯をあげましょう!乾杯!」
「かんぱーい!」
客人達はちりじりになり、テーブルに並べられた食事を取り各々話し込んでいた。その客人達に挨拶をして回るマロネ。それを遠目で見るコルタ、ベイシー、ヨーク。
ベ「お姉さん綺麗。」
コ「そうだな。別の世界みたいだな。」
ヨ「さあお二方あそこのテーブルの食事は自由に取り放題です。どうぞご自由に!」
ベ「え!?いいの!?」
ヨ「もちろんでございます。」
ベ「やったー!」
ベイシーは喜んで飛び出していった。
コ「こらベイシー!すみません!」
ヨ「お構いなく。」
お互いに一礼して、コルタはベイシーの後を追った。
マ「2人共楽しんでるかしら?」
コルタとベイシーの元にマロネがやって来た。
コ「はい!助けて頂いたばかりでなく…言葉で表現しきれません!とにかく感謝しています!」
ベ「私も!こんなにおいしい料理も綺麗なところも可愛いお洋服も全部ありがとうございます!」
マ「いっその事わたくしの従者にしたいところだけどお許しは出ないわ。申し訳ないわね。」
コ「いえいえ!ここまでしてもらって感謝しかありませんよ!」
マ「良かったら2人の事教えてくれないかしら?」
ベ「えっとね…」
マロネはコルタ達の境遇に驚きを隠さずおどおどした。
マ「す、すまない。わたくしの思ってた何倍もの境遇に驚きを隠せなかった。書物を学び、貴族としての立ち居振舞いを学んで全てを知ったと錯覚していた。今のわたくしには力がない。だが約束しよう。わたくしが大人になったその時は今の王政を変えてみせよう。」
べ「お姉さんかっこいい!」
ヨ「茨の道でございますよ?」
マ「ああ。それでもやる。無理だと思うか?」
ヨ「分かりません。ですが、私はマロネ様をお守りする役目があります。どの道を進もうとも私はマロネ様に着いていきます。」
マ「そうか。頼んだぞ!」
マロネの生誕祭は終わり、各々解散していった。コルタとベイシーは客人として部屋に案内された。
マ「別々の部屋を使ってもいいんだがな。2人一緒がいいならここを好きに使ってくれ。」
コ&べ「ありがとうございます!」
こうしてその日は終わった。次の日になり、父親が用意した馬車でコルタとベイシーはプノヒへ帰る手はずとなった。
コ「本当になんとお礼を言ったらいいか…。」
父「愛娘の頼みだからな。」
母「これも何かの縁ね。難しい事なのかもしれないけど、力ずよく生きて頂戴。」
コ&べ「はい!」
マ「本当は別の国に送り届けたいのですが、大人の都合というやつですわ。」
コ「充分すぎるくらいいろんな事をして頂きました!それではみなさん!ありがとうございました!お元気で!」
べ「さようなら!」
マロネ達は別れを告げた。コルタとベイシーは無事に村へと着いた。
べ「夢みたいだったね。」
コ「ああ。一生分の贅沢と思い出が出来たな。」
マ「一生分ではない。この先も味わうのだ。」
コ「そうだね…ってええ!?どうしてこちらにおられるんですか!?」
べ「お姉ちゃん!?」
マ「こっそりとな。ヨークもおるぞ。」
ヨ「マロネ様お1人にする訳にはいきませんので。」
コ「危険すぎます!村の大人たちに見つかったらただじゃ済みませんよ!?」
マ「話を聞いてわたくしも2人の生活を体験してみたくなってな。」
コ「馬車も帰ってしまいましたよ?…とにかくこちらへ!」
大人に見つからないように人通りの少なく、かつ狭い道を通ってコルタとベイシーの家に着いた。
マ「聞いていた通り、王都と違い劣悪な環境だな。」
コ「はい。それよりお2人の格好は目立ちすぎます!着替えてください!」
マ「分かった。そうしよう。ヨーク。剣も置いていけ。」
ヨ「しかしこれはマロネ様を守るには必要なものでして。」
マ「ここではわたくしが許可を出さぬ限り攻撃をするな。わたくしはこの村の事を知る為に来たのだ。そなたが手を出してしまえば色々とまずい事になる。分かったな?」
ヨ「…かしこまりました。」
マロネとヨークはコルタが拾って集めていた服に着替えた。
マ「よし!これでこの村になじんだな!早速コルタのしていた仕事にわたくし達も同行するわ!」
コ「そんな事させられません!とんでもない重労働に、兵士からは暴力を振るわれる可能性があります!」
マ「それでもわたくしには必要な事なの!」
コ「…分かりました。」
ベイシーを家に残し、3人は仕事場へ行った。今回は畑を耕すという仕事だ。だが、地面はとても固くなかなか耕すことが出来ない。それを休みなしで朝から夜までさせられる。さぼれば兵士から体罰を受ける。マロネは必死に鍬を振り下ろした。
マ「はぁ…はぁ…。こんなにしんどいなんて話で聞くのと実際にやるのでは大違いね。」
マロネの手には肉刺が出来てそれがつぶれて血がにじんでいた。それでも鍬を振り続けた。
コ「マロネ様になんてことを…」
マ「コルタ。わたくしが好きでやってるんですの。身分なんて関係ないですわ!」
兵士「そこ!口じゃなくて手を動かせ!」
兵士がやって来てマロネを棒きれで叩いた。ヨークの持っている鍬に力が入る。
マ「申し訳ございません!」
目線でヨークに手を出すなと訴えかけ、ヨークは力を弱めた。倒れる寸前まで働ききった。報酬としてもらえたのはパン1個と気持ちばかりのお金だった。それを握り絞め帰りにベイシーの食事を買って帰った。
マ「あれだけ必死に働いてこれだけですの!?」
マロネとヨークはショックを受けていた。
コ「そうですよ。というかもう夜ですよ!?帰らないとご両親が心配なされてますよ!」
マ「そうね。でももう少しここの生活を体験したい。」
べ「お姉ちゃんまだここにいてくれるの?」
コ「こらベイシー!」
マ「そう通りよ!」
べ「やったー!」
マロネとベイシーは浮かれていたが、コルタとヨークは大きなため息をついた。お互い見つめ合い心の中で大変だなと会話をした。マロネは言葉通りしばらく村にとどまりいろんな事を体験した。汗まみれ泥まみれで働き、寒い中寝具もない場所で寝る。何よりみんなの友情という言葉より家族の様な絆が芽生えたのだった。満足したマロネはヨークと共に元の服に着替えて、王都へと帰った。両親はマロネが村へ行ったことは知っており、諜報を村人に混ぜて動向を探らせていたのだった。ただ、危険な事をした事には変わりない為怒られたことは言うまでもない。しかし、マロネとヨークはこっそり隙を見つけてはコルタとベイシーに会いに行っていた。
時は過ぎマロネ、ヨーク、コルタは16歳となり成人を迎えた。ベイシーも11歳だ。マロネは成人となったことで発言や行動に力を持つようになった。マロネは王に謁見することにした。
マ「王様わたくしに謁見して頂き感謝いたします。」
マロネは王の前で膝をつき頭を下げた。
王「よい。顔を上げよ。して、言いたいことがあると言っていたな?申してみよ。」
マ「はい。どうか奴隷や貧しい者達にもう少し寛大な扱いをして頂きたいと思っております。」
王「なぜだ?」
マ「プノヒ村の事はご存知でしょうか?」
王「もちろん知っておる。」
マ「実はわたくしはその村に行って暮らしたことがあります!」
王「何!?」
ざわつく城内。
マ「そこではおよそ想像を絶する劣悪な環境を目の当たりにしました。朝から夜まで休みなしで血が滲んでも、ケガをしようとも生きるために働かなくてはなりません。それだけ必死に働いてもらえるのは少ない食料と気持ちばかりのお金だけです。寝具もなく硬い床で寝ています。衛生面でも不衛生で、時には病気が蔓延しています。これが人の生活する環境でしょうか?」
側近「無礼だぞ!」
王「よい。人の生活する環境かと聞いたな。それはノーだ。人の生活は豊かでなくてはならない!」
マ「王様!では!」
王「勘違いしておるかもしれんが私が差す人というのは貴族より上の者の事だ。下の事の者など気にしておらん。」
マ「そうですか。それでは1つ王様に問いてもよろしいでしょうか?」
王「言ってみよ。」
マ「王や貴族は本当にこれでいいのでしょうか?」
王「何が言いたい?」
マ「かつての勇者・英雄ヘラクレス・ナスパイムは魔族を倒すためにいろんな人を救って来ました。それと同時に、功績をあげた者、統率した者、そうした方々が我々貴族や王の祖先です。それが今ではその地位にふんぞり返り、身分で人を見下している。我々はもう一度原点に帰り、もう少し寛大な心を持って身分が低い者の待遇を変えてもいいのではないでしょうか?」
側近「言葉が過ぎるぞ!ひっ捕らえろ!」
兵士たちがマロネを捕らえた。王はため息をついた。
王「やめい!」
兵士は手を離した。
王「少し時間をくれ。検討しておく。帰ってよいぞ。」
マ「ありがとうございます!」
マロネは王の元から去って行った。
側近「なぜですか!?」
王「…わしもあの英雄譚は好きだったのだ。わずか16歳でわしの心を動かしおった。」
その後、王の命令により奴隷やプノヒ村に対しての待遇が少し良くなった。そればかりでなく、王都にマロネの名が広がった。王を説得した若き女性貴族として。更にマロネに賛同する貴族も現れたのだった。
コ「おかげさまで少し良くなったよ。」
マロネはプノヒ村に来ていた。
マ「わたくしに賛同してくれる貴族も増えてきてるわ。もっと良くなるはずよ。」
べ「どうやったら私達マロネ様に恩を返せるんだろう?」
マ「そうね…いつまでもわたくしの友人でいて頂戴!」
べ「もちろんです!」
貧しい者や奴隷に手を差し伸べようとする動きがある中で反対の意見を持つ者もいた。その中でも一際マロネに対して恨みを持つ者がいた。スーンズだった。スーンズはピグドムと言う高貴族に付き、兵士から兵士長に上がっていた。そして翌年、運命の日が訪れる。
ス「王様!」
スーンズは玉座の間に勢い良く入って行った。
王「なんだ騒々しい。」
ス「プノヒ村の村人が反乱を起こしました!」
王「なんだと!?何かの間違いじゃないのか?」
ス「村にいた兵士がやられてしまいました。それにとどまらず、王都の方に進行中とのことです!そしてその首謀者はタースラ家マロネ様だと!」
魔道具を出して王に見せた。その魔道具は映像を残して置ける魔道具だ。
王「…待遇を良くしてやったお返しが仇とはな。やはり考えが人のそれではないのか。反逆罪で全員やってしまえ!」
ス「承知いたしました!」
スーンズは玉座の間を出てニヤリと笑みを浮かべた。
少し時間は戻り村では
村人1「大変だ!兵士が村の奴らを斬って回ってるぞ!あ!」
後ろから斬られて村人が倒れる。
村人2「一体何をするんですか!?」
村人たちが集まってきた。有無も言わず村人をまた斬った。
村人3「もうやめろ!」
1人の村人が剣を持ち出してきた。兵士はそれでも村人を斬った。
村人3「このままだったらやられちまう!みんな武器を取れ!」
村人達は兵士を斬った。
村人4「一体何だって言うんだ!?王都に聞きに行くぞ!」
こうして村人達は集結して王都へ向かったのだった。
マロネ達はそんな事は知らずウィンル国視察を終えて帰ってきた所だった。屋敷に帰ると中はとても静かだった。いつもなら執事やメイドが出迎えてくるはずなのだが誰も出てこなかった。
マ「何が起きてますの?」
ヨ「私の後ろに付いて来て下さい!」
2人は屋敷の奥へと進んだ。奥には執事やメイドが血を流して倒れていた。
マ「何があったの!?」
みなすでに息絶えていた。
マ「お父様お母さま!」
父親の方は息絶えていたが、母親の方はかろうじて息があった。
母「あ…良かった。あな…事なのね。」
マ「何があったのですか!?」
母「国家…反逆罪だと……。」
マ「わたくし達が一体何をしたって言うのですか!?」
母「プノヒ村の…とにかく……あなたは生きて…ヨーク。頼んだわよ…。」
ヨ「はい!お任せください!この命にかえても必ず!」
マ「お母様!」
マロネの頬に手を当てる。
母「あなたを…誇りに思うわ……」
そう言い残し、手が力なく落ちた。
マ「お母様!!!う…。」
マロネは大粒の涙を目に浮かべた。が、その涙をぬぐった。
マ「悲しみに暮れるのは後よ!お母様はプノヒ村って言ってたわね。付いて来てヨーク!」
ヨ「はい!」
プノヒ村に着くと2人は驚いた。村人たちがそこら中に倒れており、村は大きな炎を上げて燃えていた。
マ「コルタとベイシーは!?」
ヨ「危険です!炎が強すぎる!」
マ「いいから行くわよ!」
村の中へ入っていく。しばらくするとコルタとベイシーを発見した。2人は地面に倒れていた。2人の意識はまだあり、太ももを斬られて立ち上がれない状態にされていた。そこにはスーンズもいた。
コ&べ「マロネ様!ヨーク様!」
ス「来られましたか。マロネ様。」
コ「お逃げ下さい!」
べ「そうです!逃げてください!」
マロネは首を横に振った。
マ「どこの誰か分からいですけど今すぐやめなさい!」
ス「覚えておられないですか?7年前にこのガキどもに制裁を加えようとした者ですが…。」
マ「思い出したわ!」
ス「それは良かった。あの時私は辱めを受けました。そのことがどうしても許せなかった。あの時決めたのです。あなた方を苦しめて殺してしまおうと!」
マ「あなたの勝手な理由でこんなにも多くの人を…ふざけないで!」
ス「ふざけてなどいませんよ。むしろあなたのおかげで大義名分を装いその借りを返すことが出来るのです。」
マ「わたくしのおかげ?」
ス「ええ。元々貴族の中にはこの村が汚く王都の品位を損ねると考えられる方々がおられました。そこにあなたがこの村を良くしたことで、その貴族たちの怒りを余計に買った。更にあなたがこの村を良くしたせいで武器を買う余裕が出来たのです。後は貴族様方の力も借り、大義名分であなたの家、そしてこの村を滅ぼすことが出来るのですよ!」
マ「そ、そんな…いや、まだよ!ヨーク!コルタとベイシーを助けて!」
ヨ「もちろんです!」
ヨークは剣を抜きスーンズに斬りかかった。スーンズも武器を取り出して受け止めた。
ス「子供にしては出来るな。そこら辺の兵士よりよっぽどな。」
ヨ「くっ!」
ス「頭脳派だからやれるとでも思ったのか?なめるな!」
ヨークを吹き飛ばした。ヨークは受け身をとった。
ス「お前に恨みはない。楽に逝かせてやる!『重纏』」
片手斧に紫の魔力が纏う。
ス『重力点』
ヨークの周りだけ重力が強くなる。
ヨ「う、動けない!」
ス「終わりだ!」
斧をヨークに振り下ろす。当たる直前にスーンズの顔に小石が当たった。振るのを辞めて小石を投げてきた方を見る。
マ「それ以上はやめなさい!」
ス「反逆者の言う事は聞く必要はありませんがいいでしょう。あなたからやって差し上げますよ!」
スーンズはマロネの胸ぐらを掴んだ。必死に抵抗しようとするがスーンズは効いていなかった。
ス「見ていなさい。あなたの主人反逆者がゆっくりと苦しみながら焼けるざまをね!」
そう言いながら炎の方へ近づいて行った。
ヨ「マロネ様!」
(助けなくては!だが、体が動かん!)
“いいかヨーク。我々ゴオテクト家は自分が主人と決めた人を命がけで守るんだ!”
(父上…。)
コ「やめろ!先に俺からやれ!」
べ「マロネ様を放して!」
ス「美しい友情ですね~。あの世で会えるので心配しないで下さい。」
マ「恨みがあるのはわたくしだけのはずよ。だからこれは後生の頼みです。わたくし以外の3人はこれ以上何もしないで下さい。お願い申し上げます。」
ス「この状況で自分の命が惜しくないと…立派ですな!ですがダメです。証人は無くさないとねぇ!」
マロネを放り投げようとした時電気が走る。咄嗟にスーンズは首から上に斧を構えた。
ス「なんだ?」
気が付いたころにはスーンズの顔から血が出ていた。そして、マロネがスーンズの手から消えていた。
ス「こ、この私が血だと!?」
視線をコルタとベイシーの方に向ける。2人もいなかった。ヨークの方を見ると4人がいた。
ス「貴様がやったのか。」
ヨ「この3人は手出しさせない!『電瞬剣』」
剣と体に電気を纏わせてスーンズに突っ込んだ。それをスーンズは正面から受け止めた。
ス「残念だったなあ!最初の一撃で私を仕留めなかったお前のミスだ!『重力点』」
先ほどの重力より強い重力をかけた。ヨークは地面に叩きつけられる形となった。そこに思いっきり拳を叩きつけた。ヨークは大ダメージをくらい動けなくなった。
ヨ「くそ!マロネ様だけでもお逃げ下さい!」
ス「それは無理だ。分かっているだろう?だが従者の想い受け止めた。マロネ様は一番最後にしてやろう。3人が逝くのをじっくりと味わうがいい!」
マ「やめろー!」
スーンズは止めに入ろうとしてくるマロネのみぞおちに拳を入れた。マロネは痛みで膝をついた。その間にコルタ、ベイシーを炎の中に放り込んだ。
マ「いや!コルタ!ベイシー!」
ス「さあ次はあなたの従者です!」
ヨークを炎に放り込んだ。
マ「ヨー…ク!」
マロネは涙が溢れ出た。
ス「その顔です!ああ!心が洗われるようだ!」
マ「うう…。」
ス「最後はあなたですよ!さようなら!」
マロネも炎へ投げ込まれた。
マ「ごめんなさい。わたくしのせいであなた方を巻き込んでしまって…力の無いわたくしを許して…。」
?「ひでぇな。こんな若い奴らに…。」
マ(誰?いやどっちでもいい。ヨーク、コルタ、ベイシー。今そっちに行くわ…。)
目を覚ますと知らない天井が広がっていた。
ヨ「起きられましたか?」
マ「ヨーク!」
?「起きたか。大変だったな。」
そう言いながらカラスの獣人が入ってきた。
マ「ここは地獄なのね。当然だわ。わたくしの失態ですもの。コルタとベイシーは天国に行けたかしら?」
コ&べ「マロネ様!良かった!」
2人が飛びついてきた。
マ「あなた達も地獄に!?そんな…。それよりも会えたことに感謝しなくちゃね。」
?「針地獄に行くか。」
マ「はい。謹んでお受けいたしますわ!」
ハ「ぷっ!わははは!悪い悪い。俺を見て地獄を想像したのかもしれんがここは現世だ。俺はハカツデだ。たまたま外にいたらお前らが炎に投げ込まれるのを見て俺が救い出したんだ。」
マ「そ、それは失礼いたしました!命を助けて頂いた恩人になんてご無礼を!」
ハ「気にするな!だがお前らにはここで働いてもらうぜ?」
マ「分かりました!武力の面はダメですが、知識では活躍できるかと思います!」
ハ「先ずはゆっくり休みな。そっからだ。」
マ「はい!」
マロネ達は働きながらアウタム国の情勢を調べていた。そして無理を言って王都に帰ることにした。貧しい人を救うために。身分を偽る為に新しい身分証明を作った。ハス、チラ、ロビル、マラと名を変えて王都と村へと別れたのだった。そして、それを手伝うといったのがここで働いていたダラだった。
ハ「お前たちがいなくなるのは大きな痛手だが、仕方ねえ。恩は充分返してもらったからな。ま、いつ戻ってきてもいいぜ?お前らなら大歓迎だ!」
マ「ありがとうございます!では行って参ります!」
時は戻る
マ「さ、いつまでもここにいれないわ。逃げるわよ!」
ダ「そうですな。逃げねば!」
裏路地に人影が写り込む。
ヨ「やはりここにおられましたか。私が先導します!」
マ「ヨークも無事だったのね!良かったわ!」
ヨークが先頭を走り、コルタ、ベイシー、ダラ、マロネの順で移動を始めた。裏路地から裏路地へ移動した。追手が来る気配はなかった。
マ「どうにか脱出してアフマへ行きますわよ!」
ダ「危ない!」
その時、マロネを突き倒した。マロネは後ろに倒れ込み、ダラの胸元に斧が刺さった。
ダ「どうか…ご無事で…。」
ダラはその場に倒れた。
ス「どうやって生きてたか知らんが今度は確実に仕留めてやる。」
そこにはスーンズが立っていた。
マ&べ&コ「ダラ!」
ヨ「『電瞬剣』この腐れ外道が!!!」
電気を纏いスーンズに突撃する。
ス『崩重斧』
斧に巨大な魔力が纏った。その斧をヨークが来たのに合わせて振り下ろした。辺りに大きな音と衝撃波が起き、窓ガラスが割れた。昔と違い、ヨークの力の方が勝っておりじりじりとスーンズが押されていった。
ス「私が押されてるだと!?あの時より力をつけた私より!」
ヨ「私の方が強くなったって事ですね!このまま押し斬る!」
ス「ぐぅううう!!!反逆者があああ!!!」
ヨークはスーンズの斧を弾いた。そのまま剣をスーンズの首元に目掛けて振った。
兵士「止まれ!こいつらがどうなってもいいのか!?」
剣は首元で止まった。ヨークの後方から声がしたかと思うと、マロネ達が兵士達に捕まり首元に剣を突き付けられていた。
マ「ヨーク!わたくし達はどうせやられてしまうわ!私たちにかまわずその男をやってしまいなさい!」
べ「その通りです!」
コ「俺達の事は気にしないで!」
兵士「き!貴様ら!」
ヨークは少し笑みを浮かべて、スーンズに背中を見せマロネ達の方に走り出した。
兵士「と、止まれと言ってるだろ!や、やるぞ!?」
ヨ「やったら分かっているな?」
ヨークの威圧に兵士は震え出した。ヨークの体に電気纏う。
ヨ「1人でも多く逃げてください!」
瞬間兵士の元に移動して斬りかかろうとした。そのすぐ背後にはスーンズの斧がヨークに斬りかかろうとしていた。その時だった。兵士達に黒い塊が纏わりついた。
兵士「な!なんだこれは!み、身動きが取れん!」
一同何が起きたか分からず動きが止まった。黒い塊がどんどん広がり、スーンズにも纏わりついた。
ス「な、この私ですら体が動かせん!これは闇魔法か!?魔族の襲撃か!?」
黒い塊が全てを飲み込み大きな波となった。兵士とスーンズは黒い波に押し出されて裏路地から吹き飛ばされた。裏路地から出た黒い塊は消失した。そして、マロネ達も跡形もなく消えていた。
ス「何だったんだ今のは…あいつらも消えた。魔族に連れ去られたのか我々同様に飛ばされたのか。」
(どうする?あいつらをまだ追うか。それとも謎の魔族に対して策を講じるべきか…。)
「お前ら!王都を封鎖しろ!大罪人たちを逃すな!見つけ次第報告しろ!私は報告すべきことがある!」
兵士「はい!」
一方マロネ達は
ハ「久しぶりだな。お前ら。」
マ「ハカツデ様!ご無沙汰しております!」
ハ「ダラの事は残念だった。もう少しお前たちを早く見つけれればな。」
マ「本当にダラの事は残念です…ですが、わたくし達を救って頂いたこと深く感謝いたします。」
ハ「まあ正確には見つけたのも助けたのもこいつらだがな。」
そこにはウェザー達の姿があった。
To be continued
ウェザー・E・ライトはイメージこんな感じです!絵って難しい!




