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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
夏の話
81/226

それだけしか違わないんだから、そんなに怖いものでもないよ 2

     2


「詩音さんがかけている伊達メガネ……じゃなかった、特殊メガネは吸血鬼もどきを判別する機能を持っています」

「それ以外は普通に伊達メガネだから的を射ているんですけど、君たちもどきが分かっちゃう優れものなのです」

 まるで自分の発明、みたいな感じで詩音さんは誇らしげだけど、おそらく発明したのは城見さんだろう。

「本当だったら吸血鬼を判別できるものが出来ればいいんですけど、どうしてもそれが出来ないんです」

「あちこち調べてみてはいるんですけど、全然ダメなの」

 城見さんも詩音さんも苦心しているようだった。

「そこで、勾玉の件も含めて、君たちの協力を得たいと思いまして」

「でも、ウタネでもどうにもならないものをワタシたちが何とか出来るのかな」

「何とかしろって言ってるわけじゃなくて、少し知恵を貸してくれって言うだけだよ」

 詩音さんはそういうけれど、どうせだったら人間に戻ることができるかもしれないチャンスがあるならば、完結させるのに協力したいとは思う。

「勾玉と特殊メガネに共通して足りないのは、未知の素材。それがこの珠倉山付近にあるっていうのがぼくたちの推論です」

「タマクラヤマ」

「僕たちの学校の裏山のこと」

「パワースポットなのかな、この山は」

「うーん、そんな霊的な何かを感じたことは……あるかも」

「珠倉山に?」

 城見さんが興味深そうに身体を上げた。

「昔後輩と2人で山に登ったんですけど、その時に遭難しちゃって。そんな山じゃないはずなのに、一時周りが全然わからなくなっちゃって。おかしな感じがしたんです」

「それは未広くんが吸血鬼とは無縁の頃?」

「はい。吸血鬼のきの字も知らなかった頃です」

 新聞部には美菜ちゃんしか部員がいなくて、恋愛絡みの相談を請け負ったときに珠倉山に登って遭難した。

「うーん、もしかしたらだけど、人間を遠ざける何かがあったのかもしれないね」

 そこに足を踏み入れたからおかしなことになってしまった。

「ぼくも一度奥地まで足を踏み入れたことがあるんだけど、遭難まではいかなかったけど足元がふわふわして仕方がなかったんだ。詩音さんは全然そんなことないのに」

「だからクイズ大会の会場にも選んだくらいですし」

「そう言えばあの時はよくも変な質問を」

「蒸し返さない」

 去年の冬のこととはいえ、恥ずかしい答えをさせられたのは課題のためとはいえ忘れてはいない。

「あれは本当にあの答えじゃなきゃ令奈さんが危なかったんですから」

 まあ落ち着いて、と城見さんが僕をいさめる。

「ともあれ一つは君たちに珠倉山の調査をしてほしいってことです。吸血鬼とのハーフになっているわけだし、おそらく奥へ行っても問題ないでしょう」

「一つってことはもう一つあるわけですね」

「ご名答。もう一つはちょっと献血にご協力いただければと」

「血を吸うのかい?」

「ぼくは吸血鬼じゃないから大丈夫だよ」

「そっちの吸血鬼は」

「半吸血鬼の血を吸ったって仕方ないから無問題」

 2人が安全を保障してくれたので、僕たちは研究調査に協力することにした。

「よろしくね、未広くん、エミール」

 城見さんに差し出された手を握り返す。

「ぼくの研究を信じてください。君たちを絶対に救って見せる」

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