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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
夏の話
80/226

それだけしか違わないんだから、そんなに怖いものでもないよ 1

     1


 詩音さんが案内してくれたのは、地元南柄市にある『城見吸血鬼研究室』だった。しかも南柄高校の真裏にあったなんて全然知らなかった。

「吸血鬼研究室」

「その名の通りです。ここで吸血鬼の生態について研究してます」

「詩音さんが?」

「私は助手です」

 室長は城見愛斗しろみ あいとさんという人らしく、今は不在みたいだった。

 なんでも、吸血鬼や僕たちのような『もどき』が住んでいたりする街が多いらしい。前に幕張さんに見せてもらった機密資料には確かに吸血鬼はこの街にいるっていうのは知っていたけど、それを裏付けるようだった。

「愛斗くん、お茶でも買いに行ったのかしら」

 詩音さんは不在の室長席に座って頬杖をついた。いつの間にか白衣を着ていて研究員っぽい恰好をしていた。

「いいんですか、室長席って書いてありますけど」

「いいんです。わたし副室長だもん」

 詩音さんは机の上にあるペンを手のひらで弄んで、机に転がす。

「とりあえず2人とも座って、聴きたいこといくつかあるでしょ」

 いくつかどころじゃなくて色々と聞きたい。さあ、と促された4人掛けのソファーに2人で腰掛けると、詩音さんは僕の対面に移動した。

「いらっしゃいませ。ようこそ」

 そしてちょうど口を開こうとしていたところで、入り口のドアが開いてやんわりとした口調の声が聴こえてきた。声の主は室長らしかった。

「おかえり愛斗くん、最高級のお茶を買ってきたのかしら」

「いつもよりちょっと高めではあります。心して飲むように」

「じゃ、その心意気に応えてお茶淹れてきます」

 詩音さんは給湯室らしきところへと消えていき、入れ替わりで座った白衣の男性は、僕とエミールを交互に眺めて一言こぼした。

「君たちが吸血鬼もどきか」

 ふーん、と嘗め回すように興味津々に見てくる。

「愛斗くん、お客さんに迷惑かけないでー。見世物じゃないから」

「はーい。ごめんね2人とも、つい研究者の癖で」

 給湯室の方から聴こえてきた詩音さんの声に、これは失礼いたしましたといった感じで男性は僕たちに謝った。

 そして、さて、と襟を正した男性は僕たちに向き直って、自己紹介をした。

「僕は城見愛斗。詩音さんから紹介されたかな」

「はい。僕は春日井未広です。こっちがエミール」

「ヨロシク」

「君たちは吸血鬼になる一歩手前、つまりは吸血鬼もどきで間違いないかい?」

「はい」

「うん」

 僕とエミールは揃って肯定する。

「単刀直入に言えば、君たちを実験台にしたい」

 歯に衣着せぬ感じで城見さんはお願いした。実験台、ってすごく物騒な響きだった。何の、とは言われずとも予想ができる。

「ぼくたちはもどきを人間に戻すことのできる勾玉の研究を進めている。その実験なんだけど」

「勾玉、ですか。それを使うと、人間に戻れるって言うんですか?」

 思わず僕は身を乗り出した。ずっと見つからなかった方法がもしかしたあるかもしれないと聴いて、少し気が急いてしまったようだ。

「まあまあ落ち着いて。詩音さんのお茶が出来たら、詳しく話すよ」

 城見さんはやんわりとした笑顔を浮かべて、詩音さんを待った。

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