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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
夏の話
76/226

プロポーズはワードとタイミング 1

     1


『留学生あらわる』

 そんな新聞記事を書いたら、掲示板に人だかりができていた。

「引っ張りだこだね、エミール」

「誰のせいですか誰の」

「自分は責任ないみたいに言わない」

 美菜ちゃんがまるで人ごとのように呟いていた。とりあえずエミール先輩の紹介記事でも書きましょうか、といったのはどこの誰だか。

「というか、隣の席だからって新聞部に誘い込んだのずるいと思うよ」

「料理はからっきし、向こう岸。なんだって」

「特訓し甲斐があるってもんだけどなあ」

 隣にいる料理部部長の北砂さんは残念そうにつぶやいている。

 転校生の宿命とはいえ、金髪美少女はやはり目を引く。あらゆる方向から興味を持たれていて、休む暇がないみたいだ。今どこにいるかさえもわからない。

「先輩、たぶん後ですごく怒られると思いますよ」

「だから何で僕だけ」

「エミールとご飯食べようと思ったらどこにもいない!」

 鮫ちゃんがやってきた。

「学校のどこかにいるとは思うけど探す気にならない」

「珍しく新聞効果てきめんですね」

「珍しくは余計だと思うよ」

 確かにこれだけ新聞部の新聞が脚光を浴びるのも珍しいことだった。多分創部してから初めてのことかもしれない。

「明後日から夏休みだっていうのに、騒がしいなあ」

「佐竹先生だってエミール探してたじゃないですか」

「ちょいと仕事を頼みたくてな」

 通りがかりの佐竹先生もこの盛況ぶりに驚いている。先生たちの間でもちょっとした話題らしい。榛ちゃん先生が質問攻めにあっているらしく、新聞部で愚痴っていた。早く千佳子先生帰ってきてあげて。

「あ、ミヒロいた!」

 そんな中、どこから抜け出してきたのか、当の本人がやってきた。一斉に視線がこちらに集中する。エミールは笑顔で僕の腕を掴んだ。

「ミヒロ、行こう」

「行くってどこに」

「みんながおススメの『スズミテイ』にだ」

「どうして腕を組むの」

「ん? 特に意味はないよ」

 グッと腕を引き寄せて僕を涼み亭に連れて行こうとしているエミール。そうされると胸とかが当たってだね。というかみんな口々に『ずるい』とか言っているけど不可抗力だからね。

「鮫ちゃん、号外で『新聞部部長 留学生との逢瀬の瞬間』とか出しましょうか」

「面白そう。写真撮っとく!」

「やめて」

 こないだのお返しですよと言わんばかりに満面の笑顔を浮かべている美菜ちゃんに、面白いものを見つけたという鮫ちゃんに見送られながら、僕はエミールと一緒に涼み亭に行くことになった。

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