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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
夏の話
73/226

鳩が豆大福食ったような顔して 2

     2


「どうしてこんなに今日は人がいるんですか。何か売れるような記事でも書きましたっけ、未広先輩——」

 人波をかき分けてやってきた新聞部の部室にやってきた美菜ちゃんは、美菜ちゃんは、目の前の金髪の女性の存在感に圧倒されたのか、あるいは見惚れているのかわからないけれど、固まっていた。

「こ、この金髪美少女は」

「転校生」

「あ、あいむふぁいんせんきゅー?」

「I Fine To Thank You」

「せ、先輩! ネイティブですよネイティブ!」

 美菜ちゃんは興奮しているのか、握り締めた手をぶんぶんと振っている。

「えーと、仮にも彼女、美菜ちゃんの先輩だから礼儀を」

 聞いちゃいない。

「ミヒロ、ダイジョウブ」

 目を輝かせている美菜ちゃんの頭を撫でるエミール。さんづけだセンベイみたいに堅いから、と呼び捨てにさせてもらっている。

「せ、せんぱい! 誰ですかこの金髪美少女は! どっから連れてきたんですか! ねえ先輩!」

 美菜ちゃんは相変わらずテンション高く僕の身体を揺さぶる。こんな美菜ちゃん初めて見た。

「今日から来た留学生のエミール。新聞部に入るんだって」

 僕が新聞部に所属していることを話すと、随分と興味を持ったようで付いてくるといわれたので今に至る。お父さんがジャーナリストらしく、話した時点で入部前提だった気もする。

「マジですか! わー、嬉しいです嬉しいです、よろしくお願いします……えーと、こういうとき英語では……」

「ワタシ、日本語大丈夫だよ」

「あ、マジですか。じゃあ、よろしくお願いします、エミール先輩」

 いつもの調子に戻りつつ挨拶をする美菜ちゃん。

「みなさーん! とりあえず新聞部の迷惑になっちゃうから散った散った!」

 本来それをやるはずの千佳子先生は夏風邪で寝込んでいるため、なぜか北砂さんがみんなに呼び掛けてくれていた。

「ありがとう、北砂さん」

「お安い御用!」

「御用? ミヒロつかまるのか」

「御用ってそういう意味じゃなくて」

 御用の誤用。

「日本語って難しいよね。あ、私は北砂冴里。サリーって呼んでね」

 別に外国人相手だからじゃなくて、北砂さんのあだ名が本人たっての希望でサリーなのだ。

「休み時間の度に囲まれて疲れたでしょう」

「さすがに」

 授業の合間はクラスメイトに、昼休みは学年を超えてエミールを見物に来ていた人もいて、今日は一日人に揉まれていたから、さすがに疲れもようは隠せていない。

「それじゃあ紅茶でも淹れましょう。あ、サリー先輩も」

 美菜ちゃんは期限良さそうに紅茶を淹れに行く。

「みんないい人だから安心してね、エミール」

「餅のろん」

「もちろん、かな」

 時々日本語の言い回しがおかしくなるのは仕様なのかしら、と思いつつ、美菜ちゃんの紅茶を待った。


 あとからやってきた鮫ちゃんも美菜ちゃんと同じような経緯をたどりつつ、ようやく落ち着いて自己紹介ができるようになった。

「七山美菜です。改めてよろしくです」

「鮫川衣香です。仲間が増えてうれしいよ!」

 緊張丸出しな後輩に、本当に言葉通りうれしそうな後輩。

「ミナちゃんにサメちゃん。よろしくです」

 早速あだ名で呼ばれた2人は照れまくっていた。

「こっちには春まで居られるんだっけ」

「うん、上手くいけばスプリングまで」

「上手くいけば?」

「ん、こっちの話」


 夏風邪で休んでいる顧問の代わりに、副顧問に入部届を渡すことにした。

「この学校のことと、日本のこと。いろいろ知ってもらえるいい機会ということでいいと思います」

 新聞部副顧問の榛ちゃん先生はにっこりと笑って承認のハンコを押してくれた。顧問には後ほどLINEで伝えておくことにしよう。


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