欲望はあれども暑いものは暑いんです 3
3
というわけで各自考えてきた原稿が出揃ったので発表会だ。まずは鮫ちゃんの紹介記事。記者は僕だ。
『鮫川衣香さん。通称『鮫ちゃん』です。今年入部してきた1年生で、甘いものには目がありません。早くも兼部している弓道部のエースとして活躍していて、インターハイ出場も確実と言われています。皆さん、応援ください』
「……こんなに褒めちぎってどうするつもりなんですか」
「褒めることしかないんだって」
まぶしいくらいに誇らしい後輩なのは間違いないし。
続いて、美菜ちゃんの紹介記事。記者は鮫ちゃんだ。
『七山美菜さん。新聞部の2年生。副部長で、私の先輩です。どこかツンデレで全くもって素直じゃない先輩ですけど、そこが可愛いところ! なのでお見知りおきを』
「わたしのどこがツンデレなんですか」
「自覚ないんだって、未広先輩」
「困ったもんだね」
「何なんですか!」
最後に、僕の紹介記事。記者は美菜ちゃんだ。
『春日井未広さん。わたしの1個上の先輩で、どこかやる気のなさそうな新聞部の部長さんです』
のっけから毒こもってるなあ。普段の所業をここぞとばかりに晴らそうという気が表れていた。
『でも、皆から信頼を寄せられる頼もしい先輩です。肝心な時にはしっかりと皆をまとめて引っ張ってくれる先輩が、わたしは大好きです』
——大好きです。
この5文字に心がざわついた。日本語と言うものは難しい。一つの言葉を取っても何通りもの解釈があり、どう受け取るかも十人十色だ。でも、どこか嬉しかった。
「ありがとね」
感謝の言葉を漏らそうと思ったら、その主が部室にいなかった。
「美菜先輩なら急なバイトが入ったって抜け出していきました。愛されてますね、先輩」
ニヤニヤする鮫ちゃんに、悔しくも僕は何も言葉を返せなかった。
「さっさと告っちゃえ」
「……善処します」
ちなみに顧問と副顧問の存在ををすっかり忘れていて、千佳子先生にゲラを持っていった時に自分たちだけずるい、とうらやましがられたので、2人の分は夏休み明けにやってもらうことにした。





