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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
夏の話
70/226

欲望はあれども暑いものは暑いんです 2

     2


「せんぱーい、暑さにやられちゃった?」

 我に返ると、目の前に鮫ちゃんがいた。

「熱中症気味なら保健室行ってきてください」

 とりあえずお水です、とペットボトルの水を額に当ててくれる美菜ちゃんもいた。

「ありがとう。ボーっとしてた」

 美菜ちゃんからペットボトルを受け取って飲むと、水が身体に染み渡っていく。やっぱり水が一番おいしい。

「倒れてからじゃ遅いって言いますし、注意ですよ」

「ごめんって」

「まあでもクーラーついてないんだったら仕方ないと思うんだよね」

「ほんとです」

 後輩たちももれなくクーラー故障の影響を受けていた。クーラーが故障してからというもの、7月の中旬だというのに連日真夏日という仕打ちを受けている。料理部やら職員室やら涼み亭に逃げ込んではいるけれど、やっぱりホームタウンが暑いのはどうにかして欲しい。

 ちなみに僕は暑さもそうだけど別のことで呆けていたのだけれど。去年の冬のことを思い出していたからだ。多分鮫ちゃんはわかっている。

「ところで、来週号はどうしましょうか。まだテーマ決めてません」

 僕が我に返ったところで、と美菜ちゃんが言いだす。今日は火曜日。新聞部のお仕事である週明けの新聞掲示が終わって、次の週の企画立案をなんとなく決める日だ。

「うーん、試験も終わってお疲れ様回は昨日やったから、夏休みに向けてですかね」

 期末試験も終わって、そろそろ夏休みが迫っていた。

「夏と言えば恋バナです!」

「春にも言ってたよねそれ」

「彼氏彼女を誘うならここ、っていうスポットリストとか」

「この人聴いてない。非リア充に袋叩きに遭いたいの?」

「この際みんなリア充になっちゃえ!」

「鮫ちゃんのご予定は」

「好きな人はいますが」

「誰?」

「未広先輩!」

「そんな明け透けに」

「まあラブじゃなくてライクですけどね」

「そりゃどうも」

「未広先輩は……古傷を抉ってかつ長い話になりそうなのでやめときます」

「賢明な判断です」

「美菜先輩は決まってますよね」

「わたしもなにも」

「お二人はリア充みたいなものじゃないですか」

「何言ってんですか」

 僕と美菜ちゃんの言葉が重なると、鮫ちゃんは大仰にため息をついた。

「……この夏も無理ですねこの人たち」

 まったく、と鮫ちゃんはさらに声を大にする。

「まったく美菜先輩は! 早くしないと未広先輩卒業しちゃうんだから」

「あっという間ですよね」

「すごいあっさり……美菜先輩にはそういう欲望はないんですか」

「彼氏の話ですか。欲望はあれども暑いものは暑いんです」

 美菜ちゃんはもう文句を言うのもだるそうに、言外に早くクーラーを直せと言っていた。

「そうだよ未広先輩! クーラー!」

「未広先輩はクーラーじゃありません」

 僕になんとかできるんだったらなんとかしてるってば。

「それよりも企画」

「クーラー募金開催中!」

「全面広告で」

 後輩たちの我慢は限界らしい。

「とりあえず我慢。千佳子先生と榛ちゃん先生にはもう一回掛け合ってみるから」

「よろしくおねがいしますよ」

 美菜ちゃんはそう言ってサイダーを飲む。最近少し髪を伸ばしている美菜ちゃんのうなじには汗が浮かんでいて、少しドキッとした。

「先輩、美菜先輩に見とれてる」

「違うって」

 目ざとい鮫ちゃんに否定しておいて、実際はそうだというのは黙っておく。

「何ですか先輩」

「いや、かわいいなあと思って」

「……叩きますよ?」

 ペットボトルで叩いてから言わないで。

「まったく。あんまり変なこと言ってると、わたしだって彼氏見つけちゃうんですからね」

「美菜ちゃんが幸せになるならそれで」

 って痛い、2回思いっきり叩いたぞ。

「でもまだ今はまだ夏です。春まで時間ありますし、そっちがその気ならわたしものんびりと……」

「それじゃ遅いんだって!」

 鮫ちゃんがピシャリと云った。それ以上はいけない鮫ちゃん。ステイ。

「ほら、鮫ちゃんも言ってたじゃないか、パートナーを作るのは早い方がいいって。ほら、僕も受験生だし」

 何で僕がそんなことを言ってるんですか。何だこの状況。鮫ちゃんは手を合わせて『ごめんなさい』って言いながらニヤニヤしている。

「だったら未広先輩も早く彼女見つけた方がいいんじゃないですか」

 えいっ、と今度は3回たたかれた。

 そんなくだらない話をしつつ、ようやく企画会議再開。しっくりくるものがなくて、僕からひとつある案を提案することにした。

「部員紹介。鮫ちゃんの秘密、って」

「お?」

 鮫ちゃんが食いついてきた。これは少し温めていたネタだった。

「鮫ちゃんだけですか」

「僕たちも。ただ紹介してもつまらないから、皆でみんなを紹介する。僕が鮫ちゃんを紹介して、鮫ちゃんが美菜ちゃんを紹介して、美菜ちゃんが僕を紹介する」

「なるほど、リレー方式にすれば面白そう!」

 鮫ちゃんが一層食いついてきた。よし、後は美菜ちゃんを。

「わかりました。やりましょう」

 美菜ちゃんの言葉に、僕と鮫ちゃんは顔を見合わせる。

「何ですか2人して」

「美菜先輩が一発オッケー出した」

「びっくりした」

「何言ってんですか」

「明日何が起きるんだろう」

「とりあえず傘は持ってきておこうかな」

「……わたしを何だと思ってるんですか」

 戦々恐々としている僕たちを美菜ちゃんは不機嫌そうに睨んだ。


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