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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
夏の話
69/226

欲望はあれども暑いものは暑いんです 1

     1


「……しばらくは起き上がらないでね」

 目が覚めて、僕の頭上にかけられた声はいつもの早代さんのそれだった。穏やかでやんわりとしている。まるであの時のことが幻想であったかのようだった。

「早代さん、僕は」

「残念ながら。夢じゃない」

 けれど、早代さんは残酷な言葉を告げた。思わず起き上がろうとするけれど、体が動かない。

「何だかんだ結構血を吸ったから、動かないでね」

 というか、動けない。

「あと1年。血を吸う量で寿命をコントロールできるっていうのは、牧穂から聞いているわね」

 早代さんは知っていることを前提に話を進める。吸血鬼の特徴として頻繁に聴いていることであるから、もちろん知ってはいる。

「未広くんの次の誕生日を迎えたところであなたは吸血鬼になる」

「どうして、僕を」

 信頼していた相手から裏切られたというからなのだろうか、僕の言葉は震えていて、言葉になっていただろうか。

「私が令奈の母親だから。理由はそれだけ」

 その名前を聴いてふと、僕は令奈のもとに行けるのか、と。そんなことを思ってしまった。

「もう少し寝ていた方がいいわ。起きたら最中をあげるから」

 早代さんは起き上がれない僕にそう言い残して、僕の目の前から姿を消して、お茶を淹れに行ったらしい。


 ——僕は18歳の誕生日を迎えたところで、吸血鬼になる。


 あの冬に、そう決められたのだった。


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