合法的に涼み亭に行けて嬉しい限りです 3
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「家庭訪問、初めてなんですよね」
千佳子先生の代わりに僕たちについてきている榛ちゃん先生は、どこかソワソワしているようだった。
「今どき高校生の家庭訪問ってないですから、ちょっと楽しみ」
社会科見学じゃないんだから、と僕はその隣を歩く。ちなみに榛ちゃん先生は僕たちが吸血鬼のことを話すと『あら、なんか可愛い』という感じであっさり受け入れつつ興味を示した。つかみどころのない先生である。
「あら、私なんてしょっちゅう家まで来られてたよ。いつも『賀川はどこ行ったー!』って大立ち回りで」
どんな高校生活を送っていたんだ詩音さんは。聴きたくもないけど、教師陣は散々苦労したのだろうということは思いうかがえる。
「ちょっと気になります」
「今度ゆっくり涼み亭で教えてあげます」
ちょっとという割には興味津々な顔の榛ちゃん先生に、詩音さんは嬉しそうな顔で武勇伝を語ることを約束していた。何だかんだで気が合いそう。
後ろを歩く博人と印旛ちゃんを見てみると、ふたり手を組んで仲良く話をしながら歩いていた。あつあつだ。
「博人、もう君たちラブラブなんだね」
「いやこれは、印旛ちゃんが」
「あー、下の名前で呼んでくださいってお願いしましたよね」
少し尻に敷かれ気味だなあ、と笑っていたら、印旛さんの家に着いた。
ごく普通の二階建ての一軒家だった。
「特に変わったことはなくて、ローンもまだ残ってます」
豪邸とかではなくて、あくまで一般的な感じだった。僕は意を決してインターフォンのボタンを押す。
「はーい」
インターフォンの向こうから聴こえてきたのは、女性の声。どこか聴いたことのある安心感のある声だった。首をかしげていると、博人が言った。
「今日お邪魔します、柏崎と申します」
一応彼氏の紹介という体なので、博人が応対する。
「待ってました。少々お待ちくださーい」
ドアの向こうから鍵を開けて出てきたのは、知っている顔だった。そして、まだ紹介もしていないはずの僕たちの名前を呼んで歓迎した。
「こんにちは博人くん、未広くん」
「……あやめさん?」
「俺もいるぜー」
「義治さん」
「ただいま、お父さん、お母さん」
「えっ」
出てきた人たちが意外過ぎて、状況が呑みこめていない僕と博人はポカーンとしていた。
「えーと、印旛さんのご両親で」
「ええ、わたしたち実は子持ちなのでした」
榛ちゃん先生が訊くと、あやめさんはあっさりと白状して、僕たちはご近所に響き渡るくらいの驚きの声を上げたのであった。





