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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
春の話
57/226

そうなってればハッピーエンド 2

    2


 相変わらず博人のサッカー脳は素晴らしい。

 練習を傍から見ていて、アイデアとか動き方がすごいと思った。ボールを持った時の視野の広さがすごいし、危険だなと思ったところに顔を出す。ボランチとして本当に適性のある選手だと思った。

「よう未広!」

 ボーっと練習を眺めていた僕に気が付いた博人は、大きくこっちに向かって手を振った。

「おい博人ボール!」

「っとまずい。ミニゲーム終わるまで待っててくれ!」

 ひょいッとボールをかっさらった博人は、前線へボールを供給してゴールを演出してみせた。


「どうしたんだよ、練習見に来るなんて」

「取材」

「うちの?」

「そう」

 今度サッカー部の特集を組もうかと思っていたから、それの前取材も兼ねているのは嘘じゃない。というか十分いいものを見させてもらっていた。

「さっきのは俺だけじゃなくて岡野がいい飛び出ししたからだぞ」

「それでもすごいパスだった」

「ありがとな」

 やっぱり褒められると嬉しいらしく、博人はお礼を言ってくれた。

「あとは博人の想い人調査の続き」

「想い人?」

「恋バナ」

「昼休みに言ってたやつか」

「調べてほしいって人がいるから」

 相手が誰かを明かさなければ直接聞いてもいいか、と開き直った僕は、敢えて調査という言葉を隠さなかった。胸襟を開いたからか、博人は語りだした。

「俺はインターハイやプロに行ける実力じゃないけど、チームのボランチのレギュラーとして最後までやり切りたい。サッカーも大学で続けると思うし、ボールを蹴り続けたい。それをわかってくれる子ならオッケーだ」

「参考になった、ありがとう」

「おうよ。もしかして栄恵からの特命か?」

「いやそれは違う」

「やっぱりなあ」

 やっぱり少し残念そうである。

「栄恵のこと好きなの?」

「いやそれは違う」

「だよねえ」

 決して僕が栄恵のこと好きじゃないって言い方じゃないからね。

「まあ、その子にはそんな感じでボヤッと伝えてくれ」

「了解」

 とりあえず脈ないことはない、とでも印旛さんには伝えておくことにしよう。サッカー好きの印旛さんならきっと大丈夫。心の中でエールを送っていると、

「あ、そうだ。代わりに俺からも聴いていいか?」

「何?」

 引き換えと言ってはなんだけど。と博人は付け加えて、まじめな顔をして言った。


「未広、何か隠し事してないか?」

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