そうなってればハッピーエンド 2
2
相変わらず博人のサッカー脳は素晴らしい。
練習を傍から見ていて、アイデアとか動き方がすごいと思った。ボールを持った時の視野の広さがすごいし、危険だなと思ったところに顔を出す。ボランチとして本当に適性のある選手だと思った。
「よう未広!」
ボーっと練習を眺めていた僕に気が付いた博人は、大きくこっちに向かって手を振った。
「おい博人ボール!」
「っとまずい。ミニゲーム終わるまで待っててくれ!」
ひょいッとボールをかっさらった博人は、前線へボールを供給してゴールを演出してみせた。
「どうしたんだよ、練習見に来るなんて」
「取材」
「うちの?」
「そう」
今度サッカー部の特集を組もうかと思っていたから、それの前取材も兼ねているのは嘘じゃない。というか十分いいものを見させてもらっていた。
「さっきのは俺だけじゃなくて岡野がいい飛び出ししたからだぞ」
「それでもすごいパスだった」
「ありがとな」
やっぱり褒められると嬉しいらしく、博人はお礼を言ってくれた。
「あとは博人の想い人調査の続き」
「想い人?」
「恋バナ」
「昼休みに言ってたやつか」
「調べてほしいって人がいるから」
相手が誰かを明かさなければ直接聞いてもいいか、と開き直った僕は、敢えて調査という言葉を隠さなかった。胸襟を開いたからか、博人は語りだした。
「俺はインターハイやプロに行ける実力じゃないけど、チームのボランチのレギュラーとして最後までやり切りたい。サッカーも大学で続けると思うし、ボールを蹴り続けたい。それをわかってくれる子ならオッケーだ」
「参考になった、ありがとう」
「おうよ。もしかして栄恵からの特命か?」
「いやそれは違う」
「やっぱりなあ」
やっぱり少し残念そうである。
「栄恵のこと好きなの?」
「いやそれは違う」
「だよねえ」
決して僕が栄恵のこと好きじゃないって言い方じゃないからね。
「まあ、その子にはそんな感じでボヤッと伝えてくれ」
「了解」
とりあえず脈ないことはない、とでも印旛さんには伝えておくことにしよう。サッカー好きの印旛さんならきっと大丈夫。心の中でエールを送っていると、
「あ、そうだ。代わりに俺からも聴いていいか?」
「何?」
引き換えと言ってはなんだけど。と博人は付け加えて、まじめな顔をして言った。
「未広、何か隠し事してないか?」





