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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
春の話
56/226

そうなってればハッピーエンド 1

     1


「博人の想い人調査?」

 甘食をかじりながら、栄恵は僕の問いに訊き返した。

「博人を好きな人からのお願い」

「ほう、とうとう博人にも彼女が」

「まだカップル成立かはわからないよ」

「だが、彼女はいないし決まりだろう」

「どうかなあ、あのサッカー少年は」

 僕が調査をしてうまくいったとしても、印旛さんの告白を受け入れてくれる自信がない。俺はサッカーに集中したいんだ、とか言いかねない。

「にしても、親友の調査なんてよくも受けたな」

「美菜ちゃんにも言われた。でも別に裏切り者とかじゃないから」

「にしても、コソコソするのはあまり好ましくない」

「栄恵は調査しなくとも僕が好きなのをわかる」

「だったらそろそろ受け入れてくれてもいいのだが」

「ノーコメント」

 栄恵は僕をにらみつつ、パックのイチゴ牛乳を一気飲みする。

「ボクは未広が好きだって何百回言ってると思ってるんだ」

「比喩じゃなくて本当に何百回も聴いてると思うよ」

 栄恵は昔からずっと告白し続けてくれているんだけど、僕は令奈が好きだったし、今はフリーだろうと言われても、なかなかおいそれと受け入れることもできない。

「大人になっても彼女が出来ても言い続けるから」

「それはそれでありがたいのかもしれないけれど」

 別に栄恵のことが嫌いなわけじゃない。むしろ好きだ。けれど、恋人にするのは違うというか。と考えて、少し北砂さんの気持ちが分かった気もした。

「ともかく、僕は博人と印旛さんの恋を成就させるために」

「俺がどうしたって?」

「おっと?」

 購買から帰ってきた博人が顔を出してきて、思わず声を出してしまった。

「どした」

「いや……」

「未広のコイバナをしていたところだ」

「お、面白そうだな」

 食いついてきた。

「栄恵」

「駄弁りから情報を引き出していく。これ鉄則だ」

 話を逸らしてくれてありがとうという前に、栄恵はサムズアップを見せた。

「それで誰についてだ」

「ボクが未広のことを好きということについてだ」

「なんだ、いつもの話じゃないか」

 博人からしてもその認識である。3年間一緒にいたし、博人も多分何百回も栄恵の告白を聴いていると思う。

「いっそ俺に乗り換えてくれてもいいんだぞ」

「サッカーとボクどっちを選ぶ」

「サッカー」

「ならダメだ」

「残念無念」

 お手上げの様子を見せる博人。女子への愛よりサッカーが勝つ始末、印旛さんがそう聴くかわからないけれど、少なくとも『私とサッカーどっちが好きなの?』と聴くような女子とはうまくいかなさそうだ。

「博人は想い人いないのか?」

 少しジャブを打ってみる。

「うーん、ボールが友だち」

 帰ってきたのは常套句だった。

「まったく。例えばマネージャーとかさ」

 もう少し踏み込んでみる。

「マネージャーか」

「ほら、うちの鮫ちゃんの友達で女の子のマネージャーがいるじゃない」

「ああ、印旛ちゃんね。あの子まぶしいんだよなあ。サッカー好きだし。うちに女子サッカー部があれば入りたかった、って言ってるくらいだし」

 おっ、好感触。

「でも、彼氏いるだろうあれだったら」

 いや勝手に決めつけないでよ博人。

「もしいなかったら狙う?」

「狙わない。俺は多分サッカーに集中するし、下手すれば受験勉強そっちのけでサッカーすると思うし、付き合う女の子に悪いからな」

 そう語る博人は少し自嘲気味だった。多分本人は女子と付き合う気がないんだろうなあ、と思いつつ、そっか、と相槌を返す。

「あ、悪い、ちょっと電話だ」

 サッカー中継で聴いたことのあるような着信音が鳴って、博人は両手を合わせて僕たちの前から消えていった。

 残された僕と栄恵は、

「どう思う?」

「押せばなんとかなると思う」

 少なくとも完全に『負け』というわけでもなさそうだった。

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