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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
春の話
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美しいに菜の花の菜で 1

     1


「あー、また春日井くんと一緒のクラスになれなかったー」

 隣でボードを一緒に見上げている女子は、僕の隣で大きく嘆いた。下駄箱の前に掲示されているクラス分けの表には、僕とその女子の名前は同じクラスになかった。

「うーん、来年に期待だね」

「留年するつもりかな」

「何言ってるの、大学での話だよ。東京文化大学でしょ春日井くん」

「よくご存じで」

「私も東文志望なんだ」

 東文。僕の志望校の東京文化大学のことだ。東京にある大学で、神奈川にもキャンパスがあるらしい。あんまり偏差値も高くなくて、僕程度の学力でも挑戦可能な大学だ。ちなみに僕の姉さんの進学した高校で、姉さんも僕が東文に行くことを望んでいるみたいだ。

「私は春日井くんと一緒にいられればそれでいいの。ノー恋心、イエス友だち」

 まるで告白じゃないか、と少し照れる。でも、こうやって彼女なりにけじめをつけてくれているのはありがたい。思わせぶりな態度を取られるよりかはずっといい。

「それにダメだよ。私が生徒会長と後輩に殺されちゃうから」

 言い得て妙。そんな感じで表情をころころと変えていくのは、北砂冴里きたすな さえり。1年生の時のクラスメイトで、料理部の部長だ。料理の腕はピカイチ。クラスメイトと部長のよしみでよく手料理をごちそうになっている。

 あーあ、と改めて残念そうな顔を見せている北砂さんの隣に、ショートカットの女子がちょこんと並んだ。見知った顔だった。

「おお未広、冴里、おはよう」

「おはよう栄恵」

「栄ちゃんおはよう」

「ボクはどこの組だ?」

「僕と同じクラス」

「光栄だ」

「私も同じクラスが良かったなー」

「大学でまだチャンスはある」

「だよね」

 嬉々として栄恵に抱きつく北砂さん。1年生の時に同じく2人はクラスメイトだったし、部長会で生徒会とかかわりもあるので、2人は結構仲がいいのだ。

「大学かあ」

 僕は誰にでもなく呟く。確かに同じ大学に行くのであれば、クラスが同じになるかもしれない。北砂さんがどこの学部を志望しているのかはわからないけど。しかしまあ、けれどもそもそも僕は。


 ——大学に行けるんだろうか。


 その疑問は口に出さず、改めてクラスメイトの名前を確認した。博人の名前もあって、どこか安心した。これで栄恵と博人とは3年連続のクラスメイトだ。少なくとも冬までは。

 そういえば、後輩は仲がいい人と同じクラスになれたのだろうか。そんなことを考えて、僕は浮かんできた疑問を桜が咲き舞う空に誤魔化した。

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