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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
冬の話
42/226

未広ちゃんのことが大好き 1

     1


「えーと、何を献上すれば許してくれますか」

「それくらい自分で考えてください」

 新聞部の部室に来てから美菜ちゃんはずっとこんな調子で、目も合わせてくれなかった。

「美菜ちゃんを選んだんだから、何をそんなに怒って……」

「あ、何ですかその『選んでやったんだありがたく思え』的なやつは!」

 何を言っても地雷を踏みまくっていて、このお嬢様をどうにも収めるのは難儀だった。

 第2の課題最終問。僕は美菜ちゃんを選んで、課題は無事クリアとなった。

『お役所仕事で申し訳ないが、今しがた決裁が下りた』

 課題クリアの翌日、幕張さんからそう連絡が来て、令奈が僕を吸血鬼にすることはなくなった。。

『したがって、高津令奈及び湯西川牧穂は吸血鬼界への帰還を命ずる』

 そしてそれは、出会った2人の吸血鬼との別れを意味するものでもあった。正直寂しい。せっかく令奈にもう一度巡り合えたし、牧穂さんと一緒に生活を共にすることができたのに。

 牧穂さんについては、せめて2年生の終わりまでは一緒のクラスでいられませんか、という話もしたけれど、僕を護る使命がなくなった以上、こっちにいるべきではないとのことだった。それも『上の指示』らしい。とりあえず、クリスマスの終業式までは一緒にいられることになって、残りの日々をいつも通り過ごしている。

 令奈は残り少ないこっちでの日々を栄恵の家で過ごしていて、時折覚えたての記憶操作を使って街に繰り出している。バレないものだねえ、と。いやバレたら洒落にならないからやめなさいって。

 期末考査も終わって、あとは冬休みを待つだけ、なんていう時に、令奈からお出かけに誘われた。久々に僕と遊びに行きたいそうだ。僕は特に気にすることなくオッケーしたけれど、それを新聞部で報告したのがいけなかった。


 とにかく美菜ちゃんが不機嫌だった。


「わたしを選んでくれたのにどうしてデートに行くんですか」

「いや、令奈も吸血鬼界に帰っちゃうし、積もる話もあるから」

「積もる話って何ですか、愛の告白でもするんですか」

「いやそれは」

「あ、絶対今迷いました!」

 少し言葉に詰まった僕を見逃さず、美菜ちゃんはそれを指摘してまた怒る。

「牧穂さーん、見てないでどうにか言ってくださいよー」

「あー、このアップルティー美味しいですね」

 こんな不毛なやり取りをしている僕たちを牧穂さんはにこにこしながら見ていた。

「デートなら牧穂先輩も一緒です」

「なんでですか」

「えーと、お目付け役みたいなやつです」

「美菜さんご自分で行っては」

「わたしは良いんです」

「2人きりの方がいいから?」

 あ、牧穂さん自ら地雷に踏み込んでいった。

「あー! もう! 2人とも知りません! 未広先輩なんて誰とどこでも行ってらっしゃいっていうんですよ!」

 こんなにもしっちゃかめっちゃかな美菜ちゃんを初めて見た気がする。これはこれで眼福なんだろうけど、それを素直に口にしたら一生口聴いてくれなさそうだからやめておいた。


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