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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
冬の話
37/226

わたしたち遊んでるんじゃないんですが 2

     2


 なんか眠れなくてリビングに降りてきてみると、キッチンの明かりがついていた。消し忘れたかな、それとも牧穂さんかな、と近づいてみると、姉のパジャマを着た美菜ちゃんがいてドキッとした。

「うーん、んー、みひろせんぱーい、あさですよー、おみずくださいおみず」

 この後輩、完全に寝ぼけている。朝が弱いって聞いたことはあるけれどここまでとは。美菜ちゃんの両親は起こすの大変だろうなあ。

「ああ、しゃっきりしました……って未広先輩?」

 結局湯豆腐を食べて真実を聴いた後に泊まっていきます、と牧穂さんと同じ部屋で寝ていた後輩は、だんだんと頭が冴えてきたんだろう、顔を赤くしてあたふたする。

「ま、まだ朝じゃないじゃないですか。何ですか、こんな夜に暗いところで二人っきりって、何するつもりですか。心の準備できてないんですよわたし」

「この寝ぼけた後輩にはデコピンでもくらわさなきゃダメか」

 食らわした後に言うのもなんだけど。

「痛い! ひどい先輩!」

「なかなか起きない人が悪いんです」

「怒りました! 今度涼み亭のあんみつですよ!」

「何で僕が怒られて奢らなきゃいけないの」

 とりあえずもう一杯水を飲ませて落ち着かせて、2人して夜中にこたつに潜り込む。

「未広先輩は何してたんですかこんな夜中に」

「眠れなかっただけだよ。水飲みに来たら美菜ちゃんがボーっと立ってたから」

「人を幽霊みたいに」

「死んでないでしょ」

「未広先輩に黙って死んでたまるかっていうんですよ」

 美菜ちゃんはそうボヤいて、慌てて下を向いて口をつぐんだ。

「あの、別に令奈先輩を悪く言いたかったわけじゃなくて……」

「わかってるよ、大丈夫」

 そう言ってあげると、美菜ちゃんは小さくお礼を言ってこたつ布団の中に顔をうずめた。意図していったわけじゃないのはわかってるから。

「未広先輩は、その」

 しばらく静寂が続いて、やがて美菜ちゃんが小さい声で聴いてきた。

「まだ好きなんですか、先輩のこと」

 こたつのあったかさのせいか知らないけど顔を赤くさせた美菜ちゃんは、僕をまっすぐに見据えた。これは真面目な質問です、と言いたげな瞳で、僕は困ってしまった。ここでそうだって答えたらどうなるかっていう想像が足りない。いや、想像は出来ているけど選択肢のどれを選んでも困ったことになる気がする。しばらく悩んだ後、僕は逆に問いかけた。

「僕がそうって言ったら美菜ちゃんはどうするの」

「わたしは」

 美菜ちゃんは短く言って、言い淀む。

「わたしは……」

 って、寝たぞ。

「おーい美菜ちゃん」

 テーブルに顔をもたれて本格的に寝てしまった。こたつで寝ると絶対風邪ひくって。うーん、仕方ない。僕はこたつの電源を切って、両親の寝室から毛布を持ってきて美菜ちゃんにかけてあげた。

 そして、部屋に帰ろうとした僕の背中に微かな声がかかったのは、もしかしたら気のせいだったのかもしれない。


「……乙女心くらい、わかってくださいってんですよ」


「昨日、後輩の美菜ちゃんがうちに泊まりに来たんですよ」

 翌日、牧穂さんはクラスの女子に笑顔でそう報告していた。

 傍から聞けば、女子のお泊り会に聴こえるけど、実際には独り暮らしの男子ということになっている家に外泊したわけで。会話を交わしているクラスの女子はそれを知る由もなく、今度わたしも行ってもいい? なんて、世間話に花を咲かせているのだった。

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