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普通の高校生とヴァンパイアの四季  作者: 湯西川川治
冬の話
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やむを得ない事情 2

      2


「私は、湯西川牧穂が生きた人間を吸血鬼にすることを容認しました。そして、その真実を隠して、湯西川牧穂の記憶を消しました」

 詩音さんが告げたのは、重い事実だった。

「吸血鬼には記憶操作が使えるっていうのは、牧ちゃんから聞いてると思います。だから私もそれに倣って、牧ちゃんの記憶を消した。彼女に苦しんでほしくない。それだけの話で」

 詩音さんは淡々と事実を告げる。けれど、言葉の端々には悲しみと苦しみが詰まっているようだった。

「ごめんね牧ちゃん」

「いや、いいんですよ。私のことを想ってくれたのだったら」

 でも、と牧穂さんは断ったうえで、詩音さんを見据えた。

「真実を教えてください。令奈ちゃんを助けるため、っていうだけじゃなくて、そうしないと、私は未広さんを護れない」

 はっきりさせたうえで、僕を護る。その意思が強く表れていた。このままの宙ぶらりんの状態だと、牧穂さんは前に進めない。きっとそうかもしれない、というのはここ数日感じていたことだった。千佳子先生との一件を解決したとはいえ、思い出せないことを思い出すのは得策ではないと言ってしまったとはいえ、その真実に向き合わなきゃその先には進めないんだろうなと。

「幕張さんにも未広さんにも、さっき私は頷きました。もしかしたらパニックになってしまうかもしれませんが、その時は2人が何とかしてくれるって信じてますから」

 前の時も抑えるの精いっぱいだったんだよなあ、とかは口に出さずして、僕と幕張さんは見合ってお互いに頷いた。

「わかりました」

 詩音さんも頷いた。

「とりあえずここで話すのは得策ではないし、パニックになったら止める人はいっぱいいるけどお店に迷惑かけるわけにもいかないし、吸血鬼界で話します」

 少し牧ちゃんお借りしますね、と詩音さんは口添えした。

「あとは、第二の条件について話してしまいましょう。それは未広君と令奈ちゃん、2人に背負ってもらいます」

「背負う?」

「体よく言えば、いくつかの課題に取り組んでもらうことになります」

「課題って」

「それは……令奈ちゃんが甘味を食べ終わってからにしましょう」

 ちらりと僕の背後に目を向けて詩音さんは笑った。振り返ると、令奈と栄恵がお店の入り口に立っていた。

「あらあらいらっしゃいませー」

「2人とも」

「未広ちゃん、みんな、ほんとにごめんなさい」

 令奈が泣きそうな顔をして頭を下げる。

「詳しい話はうちで全部聞かせてもらった。甘いものでも食べて今後の話をしよう」

 栄恵はさっさと席に座り、お汁粉を注文した。令奈よりも先に栄恵に甘味を補給しないといけないみたいだった。

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